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2022年2月25日 ヨハネスブルグ 原田武

南ア:政府、水素戦略をまとめた水素社会ロードマップを公式発表

 2022年2月17日、南ア政府は、同国の水素及び関連技術の利活用に関する戦略及び方向性を取りまとめた水素社会ロードマップ(Hydrogen Society Roadmap; HSRM)を公表した。(87345_south_african_hydrogen_society_roadmapv1.pdf(cachefly.net)
 このロードマップは、南ア産業の様々なセクターにおいて水素関連技術を開発・発展させ、その過程で脱炭素と経済回復を結び付ける枠組みを確立させることを目的としている。
 南アは世界第一位の白金生産国であり、水素燃料電池の普及は将来の白金需要に大きく影響するとして、従前から同国においては水素関連技術の動向に関心が持たれてきた。2008年時点で既に科学・イノベーション省(DSI)が南ア水素公社(HySA)を設立し、水素社会経済の可能性を研究してきた経緯もある。今回のロードマップは、DSIとHySAが100を超える業界関係者の協力を得て、これまでの官民の取り組みを統合したものである。
 本ロードマップのビジョン(大目標)として「2050年までに包括的で持続可能かつ競争力のある水素経済」が掲げられており、そのベースには「2050年までの社会全体におけるネットゼロ・カーボン経済」というビジョンもある。
 本ロードマップにおいては、水素の利活用により期待される効果として、次の6つのアウトカムを整理している。
(1)輸送(重量車両、航空輸送、鉄道)の脱炭素化
(2)エネルギー集約型産業(鉄鋼、化学、鉱業、精錬、セメント)の脱炭素化
(3)南ア産水素の輸出マーケットの開拓
(4)水素関連製品や燃料電池部品の製造部門の推進、投資環境の整備
(5)電力部門のグリーン化と安定化
(6)水素生成、貯蔵と供給のスケールアップ、グレー水素からグリーン水素への転換
 また、中長期のマイルストーンとして、水素生産規模やその利活用状況及び雇用創出の数字が盛り込まれており、2040年までには、合計15GW以上の電解槽の設置、年間3万人の雇用創出が設定されている。
 先行して行われている取り組みも「触媒的な(Catalytic)プロジェクト」として、本ロードマップの中に取り込まれている。Hydrogen Valley、COALCO2-X、BoeGoebaai経済特区、Sustainable Aviation Fuels(SAF)プロジェクトといった南アにおける水素製造やその利活用を推進するプロジェクトが挙げられている。

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