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鉱種:
コバルト ニッケル マンガン リン
2022年3月14日 北京 塚田裕之

中国:ニッケル価格高騰の中、使用済みLIB回収・生産に注目

 2022年3月8日、LME(ロンドン金属取引所)のニッケル先物価格は高騰し、過去最高値を更新し続けている。ニッケルは電気自動車(EV)用電池の重要な原材料のひとつであり、主に三元系材料電池に用いる。EVが高エネルギー密度を求める流れの中で、ハイニッケル電池はより高性能で主流となる可能性があり、ニッケルの需要量が更に伸びる可能性がある。一方で、ニッケル資源は減少傾向にあり、紛争が資源の輸送に影響を及ぼしていることから、世界のニッケル供給が逼迫する可能性が懸念されている。
 ニッケルのみならず、EV電池用炭酸リチウムやリチウム塩類などの価格も急騰し、関連電池メーカーの製造コストを圧迫している。これまで、関連メーカーの好調な業績は低価格の金属原料等に依るものだったが、原料や中間製品の価格急騰により、企業の好調な業績を維持できるかが不透明となっている。このことから、各関連メーカーは、使用済み電池の回収に一層注目し、資源の循環利用を行うことでコストダウンを実現し、原材料価格の変動に対応しようとしている。
 寧徳時代新能源科技股份有限公司(CATL)、比亜迪股份有限公司(BYD)、国軒高科股份有限公司といった電池メーカー、および上海蔚来汽車(NIO)等の自動車メーカーは早くから電池回収事業を始めているほか、華友コバルト業股分有限公司、贛鋒リチウム業股份有限公司等のリチウムイオン電池(LIB)材料メーカーも積極的に布石を打っている。このうち、ハイニッケル材料メーカーの寧波容百新能源科技股份有限公司(Ningbo Ronbay New Energy)は、回収企業である格林美股份有限公司(GEM)と連携、初めてLIBの回収及び海外のニッケル資源に投資することになる。このほか、天奇自動化工程股份有限公司(Jiangsu Miracle Logistics System Engineering Co., Ltd.)はコバルト、マンガン、ニッケル等を回収するプロセスを保有し、その平均回収率は90%を超える。光華科技股份有限公司(Guangdong Guanghua Sci-Tech Co., Ltd、JHD)の特許技術は、使用済みのリン酸鉄リチウム電池から直接リン酸鉄リチウムの正極材料を製造可能である。旺能環境旺能環境(Wangneng Environment Co.,Ltd.)が買収した立鑫新材料有限公司は、リチウム電池回収・生産ラインを建設しており、2022年第1四半期に稼働予定である。
 2022年2月28日、工業情報化部の辛国斌副部長も、国務院新聞弁公室の記者会見において、2022年にLIBの回収・利用システムを整備し、効率的な解体や再生利用等の技術課題の研究開発を支援、拡大すると述べた。
 EV普及に伴い、LIB廃棄量も増え続けている。2020年、中国のLIB廃棄量は最大20万t(約25GWh)に上り、2025年以降、使用済みLIBは100万t/年規模となる予想である。世界でも、世界の新エネルギー関連の廃車(EV+プラグインハイブリッド車(PHEV))台数は2025年の54万台(42GWh)から2040年には4,636万台(3,455GWh)に増える予想である。
 広発証券アナリストの郭鵬氏は、現在、業界の金属回収・精製率にはさほど差がなく、回収ルートにより注目しているという。それぞれ自動車メーカーは修理、バッテリー交換企業は回転、自動車解体企業は解体のルートを持ち、非鉄企業がバッテリー企業と協力して電池回収・生産ラインを整備すれば、各々が主なプレーヤーになるとした。
 しかし、使用済みバッテリー価格もこうした動きに伴って高騰し、「奪い合い」が発生している。現在、使用済みバッテリー価格は新しいバッテリー価格を上回り、買い溜めする業者も少なくないという。

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