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ニュース・フラッシュ

鉱種:
コバルト ニッケル マンガン リチウム リン
2022年3月23日 北京 塚田裕之

中国:リチウム、中国の新エネルギー車需要増と豪州からの鉱石供給逼迫で今後3年は高値維持の可能性

中国新エネルギー自動車の販売台数(年間数値・万台)

中国新エネルギー自動車の販売台数(年間数値・万台)

出典:中国自動車工業協会・国信証券経済研究所

 2022年3月16日付け報道によると、昨今のリチウム価格高騰に関し、世界的なリチウム原料の供給逼迫は短期的には改善しづらく、リチウム塩およびリチウム鉱石の価格は高値を維持するとの予測がなされている。
 現在のリチウム価格の高騰は、短期的にリチウム塩の生産量は増加せずむしろ減少し、需給バランスのギャップがより広がった。一方で中国国内の新エネルギー車販売台数が前年より1.6倍伸びるなどその需要は旺盛で、正極材メーカーは稼働率の拡大や新規生産能力の拡張を行い、需要増加に対応しようとしている。よってリチウム業界全体として、需給共に増加の見通しである。
 鑫欏資訊のデータによると、2021年、中国国内の三元系前駆体(ニッケル、コバルト、マンガン水酸化物)の生産量は62.06万tで、対前年比82.3%増加、中国国内で既に建設完了した三元系前駆体の生産能力は対前年比46.7%増の113.4万tであった。一方、国外の三元系前駆体の生産量は74.75万tで、対前年比79.4%増加した。また、2021年の三元系材料(ニッケル、コバルトマンガン酸リチウム)生産量は、中国が対前年比89.5%増の39.81万t、国外が同79.3%増の72.97万tであった。2021年、中国国内のリン酸鉄リチウム生産量は同168.9%増の45.27万t、コバルト酸リチウム生産量は同24.3%増の9.17万t、マンガン酸リチウム生産量は同14.8%増の10.66万tであった。
 2022年1月、中国国内における正極材4種(コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)の生産量計は11.66万tで、対前年同月比73.8%増、対前月比2.4%増であった。そのうち、三元系正極材の生産量は4.19万t(対前年同月比49.7%増、対前月比2.1%増)、リン酸鉄リチウムの生産量は5.91万tで(対前年同月比158.9%増、対前月比3.3%増)であった。2021年7月以降、中国国内のニッケル含有量の高い原料の生産量は、これまで主流であったNMC532の正極材の割合を超えた。2022年1月、NMC811の正極材の市場占有率は37.9%に達し、三元系正極材中のニッケル含有量の増加傾向により、電池用水酸化リチウムの需要も増加の見込みである。中国国内の三元系正極材及びリン酸鉄リチウムの生産能力、企業の稼働率いずれも拡張傾向である。
 一方で、豪WA州におけるリチウム鉱石の生産能力の回復及び生産拡大は当初の想定を下回っていることから、現在の鉱石供給の逼迫感がより増している。また、海外鉱山の資本支出が不足しており、今後3~5年間、世界のリチウム鉱石供給は逼迫が継続し、この間リチウムは高値を維持する可能性が考えられる。

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