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2022年4月11日 ジャカルタ 白鳥智裕

インドネシア:新たな炭素価格設定、グリーンな移行か、それともグリーンウォッシングか?

 2022年4月4日付け現地メディアによると、インドネシア政府は、2030年までに温室効果ガス排出量を29%、国際的な支援により最大41%削減することを約束している。
 この目標達成のために、政府は最近、2つの重要な炭素政策を発表した。炭素税のための規制調和に関する法律2021年第7号と、炭素の経済価値およびインドネシアの取引制度に関する大統領令2021年第98号である。当初、政府は2022年4月1日から、石炭発電所に対して炭素税と取引規制を施行する予定であったが、規制の施行は2022年7月まで延期された。炭素税はグリーン転換を加速させるために必要な重要な施策である。
 しかし、効果的な規制が行われなければ、カーボンプライシングは単に「グリーンウォッシング」、つまり企業が実際はうわべだけの取り組みにも関わらず、環境に優しいと一般大衆に誤解させる結果になる恐れがある。これが現実になりかねない仕組みが、以下のとおりある。
(1)炭素税は、例えば電気料金の値上げによって、大企業ではなく個人や中小企業に転嫁される可能性がある。また、化石燃料会社が価格を引き上げて、実質的に税金のコストを転嫁する可能性も高い。
(2)既存の化石燃料補助金だけでなく、規制で新たに設けられた「経済的インセンティブ」という形でも、補助金が企業に行き続ける。
 エネルギー鉱物資源省によると、炭素税が適用された場合、政府は国営電力企業PT PLNに追加の補助金と補償金を支払わなければならなくなる。これによって、化石燃料からのエネルギー調達をさらに促進する資金となるため、炭素税による石炭価格の上昇は(PT PLNのような)大企業には効果がない可能性が高く、規制が弱体化する。
(3)炭素価格設定のメカニズムとして、インドネシアの炭素税は、炭素排出量1tあたりわずか2US$で、世界でも最低水準にある。世界銀行の調査によると、パリ協定の気温達成に必要な炭素の価格帯は、炭素排出量1tあたり40US$から80US$であるべきとされている。

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