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2023年3月23日 リマ 初谷和則

ペルー:政府発表の鉱業投資見通しに含まれるプロジェクトの約半数が社会争議を抱える

 2023年3月14日付け調査報道サイトの報告によれば、先にエネルギー鉱山省(MINEM)が発表した鉱業投資見通し53,715mUS$に含まれる47件のプロジェクトのうち、22件が社会争議を抱えているほか、11件は社会争議が原因で操業開始が遅延している案件となっている。
 このうちToromocho銅鉱山拡張プロジェクト(Junin州)に関しては、Morococha区の地権者団体が2018年に4haの土地の接収決定の取り消しを求める訴訟を起こし、現在最高裁判所による判決が待たれる状況となっている。Minera Chinalco社は本プロジェクト開発を進めているが、地権者団体は居住区エリア近傍での発破等による影響を受けているほか、政府によって設置された対話協議会には一部の地域しか参加しておらず、協議会での合意形成も進んでいないと主張している。
 San Gabriel金プロジェクト(Moquegua州)は2022年に建設が開始されたが、周辺コミュニティとの争議を原因として操業開始は2024年から2025年に延期された。Buenaventura社は自治体やIchuña区の組合等の間で協議会を設け対話を継続する一方で、「San Gabrielプロジェクトの影響を被る農民コミュニティ連盟」は、42コミュニティのプロジェクト影響エリアとしての認定を要求しているほか、Moquegua州やArequipa州の水源であるAnsamani川への影響に対する危惧を表明している。
 Los Chancas銅プロジェクト(Apurimac州)においても、TiaparoやTapayrihua等の農民コミュニティがSouthern Copper社による約束不履行等を理由としてプロジェクトの開始に反対している。
 Las Bambas銅鉱山(Apurimac州)Chalcobambaピット開発プロジェクトに関しては当初、建設開始は2023年、操業開始は2024年と計画されていたが、度重なる道路封鎖や鉱山敷地への侵入等を受けて、現在本プロジェクトへの投資目途は立っていない。
 今回の鉱業投資見通しに初めて加えられたプロジェクト8件についても、その多くが既存鉱山の拡張案件であり、うち5件が社会争議を抱えている。例としてCuajone銅鉱山拡張プロジェクト(Moquegua州)では、Tumilaca、Pocata、Coscore、TalaコミュニティがSouthern Copper社による土地の不当な占拠を主張し2022年に一時的な鉱山操業停止が発生した。
 こうした中、複数の鉱業専門家らは、2022年末からの反政府デモが収束した訳ではないことなども踏まえると、政府による見通しは楽観的すぎるとの見方を示している。

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