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EU:重要原材料法案を公表
2023年3月16日付けのプレスリリースによると、欧州委員会は欧州重要原材料法(European Critical Raw Materials Act)案を公表した。法案では、(1)欧州域内生産能力の強化(採掘、処理、リサイクル)と重要原材料毎のベンチマークの設定、(2)輸入依存が継続するとの前提の下での調達先多様化、(3)市場監視機能の整備、(4)サーキュラリティ・持続可能性の向上の4本を柱としている。
法案では、重要原材料のうち、重要技術(ツイントランジション、宇宙防衛)に関連する鉱物や生産量の増加が比較的難しい鉱物を「戦略的重要原材料」と位置づけ、その安定供給確保に向けた措置を規定している。今回、ビスマス、ホウ素(ボロン)、コバルト、銅、ガリウム、ゲルマニウム、リチウム、マグネシウム、マンガン、グラファイト、ニッケル、白金族、磁石用レアアース(Nd、Pr、Tb、Dy、Gd、Sm、Ce)、ケイ素(シリコン)、チタン、タングステンの16種を「戦略的重要原材料」として位置づけており、4年毎に評価・更新する。また、戦略的重要原材料に加え、欧州経済にとって重要かつリスクの高い鉱物(経済的重要性と供給リスクを計算の上、両方で閾値を超えるもの)を「重要原材料」としてリスト化する。今回指定されたのは34種であり、2020年と比較して6種増(ヒ素、銅、長石、ヘリウム、マンガン、ニッケル)、2種減(インジウム、天然ゴム)となっている。
「戦略的重要原材料」については、EU全体としてのベンチマークを設定し、この達成に向け、(1)戦略的プロジェクトの特定・支援、(2)市場環境や企業のサプライチェーンのモニタリング、緊急時の備蓄等に係る措置、(3)リサイクル推進のための措置等を講じる。戦略的重要原材料の共通ベンチマークとして、2030年までに欧州内需要の10%の域内採掘、40%の域内加工、15%の域内リサイクルを目指す。また、各戦略的重要原材料の第三国依存度を2030年までに65%以下とする。達成状況が不十分な場合には、追加的対策を検討する。
- (1)戦略的プロジェクトの特定・支援:戦略的重要原材料の安定供給につながる域内外の戦略プロジェクトを特定し、許認可プロセスの迅速化やファイナンスアクセスの改善を措置。
- (2)市場環境や企業のサプライチェーンのモニタリング、緊急時の備蓄等:欧州委員会による重要原材料の供給リスクの監視と原材料サプライチェーンの脆弱性評価のためのストレステストの実施、供給リスクが生じた場合の危機管理メカニズムや共同調達、域内で戦略的重要原材料を使用して戦略技術を製造する大企業に対する2年毎のサプライチェーン監査の義務化(第三国依存関係のマッピング、サプライチェーンストレステスト)等を措置。
- (3)リサイクル:加盟国におけるリサイクル推進措置の加速、鉱山廃棄物からの鉱物リカバリに関する予備的経済評価の義務付け、将来的な磁石リサイクルの義務化検討等を措置。磁石リサイクルについては、特定製品(MRI、風力、EV、モーター、家電など)を対象に、①ラベリングと製品情報へのアクセス確保を求めるとともに(本法発効3年後)、②2030年12月31日以降、リサイクル材の最低含有量を義務化することができる(ネオジム、ジスプロシウム、プラセオジム、テルビウム、ホウ素、サマリウム、ニッケル、コバルト)。
同法案は採択・発効前に欧州議会・欧州理事会による審議が行われる。また、同法案と合わせて欧州委員会が欧州議会・欧州理事会等に宛てた「ツイントランジションを支える重要原材料の安全で持続可能な供給」と題したコミュニケーション文書についても公表された。
本文書は、EUにおける重要原材料バリューチェーンの開発、グローバル生産を支える互恵的な供給・連携の多様化の加速、バリューチェーン全体での持続可能性と循環性の促進といった項目からなり、“Critical Raw Materials Club”(CRMクラブ)についても説明がなされている。具体的には、「重要原材料の安全で手頃で持続可能な供給へのアクセスは、多くのパートナー間で共通の関心事であり、一部による市場支配に対抗し、持続可能性の課題に対処するためには、国際協力が不可欠である」とする。そして「EUは政府間フォーラムやMSP(Minerals Security Partnership:鉱物安全保障パートナーシップ)、第三国との戦略的パートナーシップなどを補完・発展させ、消費国と資源国が一堂に会して、重要原材料の安全で持続可能な供給を促進するためにCRMクラブを設立すべきである」とした。CRMクラブは、合意された一連の原則に基づき、同じ考えを持つ(like-minded)関係者に開かれたものとなるとしている。
欧州委員会はCRMクラブの設立に関心のある潜在的なパートナーとの議論を行っていくとして、「2023年3月10日に発表された対象を絞った重要鉱物協定のEU・米国の間の交渉は、より広範なCRMクラブに向けて取り組むための基礎を提供するものである」と説明している。


