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2024年5月8日 バンクーバー 武市知子

加:2024年度連邦予算案の鉱業への影響

 2024年4月16日、連邦政府は2024年度予算案を発表した。カナダ鉱業協会(Mining Association of Canada:MAC)によると本予算案が鉱業界に与えうる影響に関する項目は以下のとおりである:

  • クリーン技術への製造投資税額控除(Clean Technology Manufacturing Investment Tax Credit)の拡大:対象となる重要鉱物の生産で主に使用される適格資産への投資コスト(生産額の50%以上)も税額控除に含められ、またポリメタリック(多金属)採掘と加工事業においてより明確なものとなるよう、一定の調整が行われる。
  • 影響評価(Impact Assessment)と許認可プロセスの完了に5年以内、また連邦審査の対象とならないプロジェクトの許認可に2年以内というタイムラインの目標を設定する。また原子力プロジェクト審査を3年と設定し、カナダ原子力安全委員会(Canadian Nuclear Safety Commission)及び影響評価庁(Impact Assessment Agency of Canada)は協力してプロセスの合理化と重複を削減する方法を検討する。
  • 先住民族が自分たちの伝統的領土内で行われる資源開発やエネルギー・プロジェクトに投資できるよう、連邦政府が融資の保証人となり先住民コミュニティに5bC$の融資保証を提供する。
  • 中等教育修了後の学生向けに提供されるカナダ雇用・社会開発省の学生職業紹介プログラム(Student Work Placement Program)に207.6mC$を提供し、より多くの職業体験の機会を創出する。
  • 連邦政府は2024年3月に鉱物探査税額控除(Mineral Exploration Tax Credit:METC)を2025年3月31日まで延長することを発表しており、本予算案にも組み込まれた。
  • 企業及び個人のキャピタルゲインに対する課税率が2分の1から3分の2に引き上げられ、多くの個人投資家にとってMETCの価値が大幅に引き下げられることになる(個人に対しては250kC$を超えるキャピタルゲインに対して課税される)。

 現地報道によると、先住民族に5bC$の融資保証が提供されたことに関し先住民族からは歓迎する声があがっている。現在のインディアン法(Indian Act)では先住民が自分たちの伝統的領土やその領土内の建造物を担保にすることを禁じられていることから、この融資保証制度はその解決を目的としているという。またこの融資保証は投資できるセクターに制限を設けていないため、化石燃料プロジェクトへの投資も可能である。
 また別の報道によると、キャピタルゲインに対する増税に関しては、鉱物探査への投資を遠ざけるリスクがあるとToronto証券取引所(TSX)の運営企業やディールメーカーは考えている。TSXベンチャー取引所に上場している鉱業関係や石油・ガス探査企業は、取引価格にプレミアムを付けてフロースルー株式の発行により資金を調達している。Prospectors and Developers Association of Canadaによると、ジュニア企業がTSXで調達する資金の65%はフロースルー株式だという。

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