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メキシコ:米通商代表部、Camino Rojo金・銀鉱山の労働権侵害を巡りUSMCAに基づくパネル設置を要請
2024年12月12日付けで米通商代表部(USTR)は、加Orla Mining社がメキシコに保有するCamino Rojo金・銀鉱山にて労働権侵害の疑いがあったとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づきパネル設置を要請した。
USTRは2024年8月、Camino Rojo鉱山での労働権侵害の疑いについて、全米鉄鋼労働組合(USW)の仲介による申し立てを受け、RRMに基づきメキシコ政府に事実確認を要請していた。RRMは、労働者の結社の自由及び団体交渉権を侵害した疑いのある事業所が対象となり、問題が是正されない場合、事務所の製品に対しUSMCAによる特恵税率の停止といった制裁的貿易措置を課すことができる。
USTRの発表によれば、Camino Rojo鉱山の交渉団体として代表権を得ているメキシコ全国鉱夫・冶金・鉄鋼労働組合(SNTMMSSRM)の活動をOrla Mining社の現地法人が干渉し、労働者からの支持を損なうことで同組合を弱体化させ、メキシコ全国鉱山探査・採掘・選鉱労働組合(SNTEEBM)に移籍するよう圧力をかけていた疑いがあるという。また全米鉄鋼労働組合の声明や各種報道によれば、2024年夏には、Camino Rojo鉱山の労働者がSNTMMSSRMに加入していることを理由に暴行あるいは解雇・殺害予告といった脅迫を受けたことが報告されている。また最近では、武装した数人が地元労働組合の幹部自宅に押し入る事件も報告されていた。USWは声明にて、「メキシコでは、腐敗した企業が労働者の抵抗を鎮圧するために暴力や脅迫、さらには殺人を用いてきた歴史があり、カナダ企業がこのような手法を用いることは許されない」と主張している。
一方、USTRからの事実確認要請を受けメキシコ政府が調査を実施した結果、鉱山従業員による組合移籍の干渉は確認されたものの、企業による反組合運動や解雇の脅し等を行ったという証拠は確認されなかった旨が報告された。これを受けUSTRは、改善策に合意することはできなかったとし、現在も労働者の権利侵害が続いているとされることから今回パネル設置の要請に至った。