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ニュース・フラッシュ

鉱種:
クロム ニッケル
2025年6月10日 バンクーバー 武市知子

加:ON州、採鉱やその他の開発プロジェクトを加速させる法案を可決、先住民族や環境保護団体は反対

 2025年6月5日付けの現地報道によると、ON州議会は採鉱やその他の開発プロジェクトを加速させるための包括的な権限を州政府に付与するBill 5 “Protect Ontario by Unleashing our Economy Act”を71票対44票で可決、法制化された。
 Bill 5の主な内容は以下の通り:
特別経済特区(Special Economic Zones)の創設
 ON州内のあらゆる場所を特別経済特区に指定する権限が州政府に付与され、その経済特区内では企業やプロジェクトは州法や規制の遵守が免除される。Ford ON州首相は州北部のRing of Fire地域の鉱床とHighway 401号線下のトンネルを候補地としてあげている。経済特区を設置する場所の制限はなく、州の内閣にプロジェクトを指定する全権が与えられていて決定基準は明文化されていない。
絶滅危惧種保護法の変更
 同州の絶滅危惧種保護法(Endangered Species Act)を新法である種保存法(Species Conservation Act)に変更する。これにより生息地の定義が変更されて動物の巣穴や巣の周辺地域のみに保護が適用され、また州政府に対し絶滅危惧種等を分類する州の独立科学委員会の決定を覆す権限が付与される。
採鉱プロジェクトの迅速化
 特別経済特区の設置に加え、鉱山建設及び操業開始の許認可スケジュールを現行の4年から2年に短縮させる迅速な承認システムを構築する。

 特別経済特区の創設に関し、ファースト・ネーションズは条約上の権利を蹂躙するとともに事前協議を怠ったとして激しく非難しており、鉱山や高速道路の封鎖も辞さない構えを見せている。またRing of Fire地域を含む同州北部の49部族を代表するNishnawbe Aski族の酋長も法案への反対を表明している。同州政府は法案の可決後にファースト・ネーションズと協議することを約束したものの、ファースト・ネーションズ側は侮辱行為だとして批難している。Ford同州首相は、Ring of Fire地域の鉱山開発を加速させるために同法案が必要であったとし、先住民コミュニティと協議して条約上の権利を尊重すると話している。
 野党である同州自由党は何千にも亘る修正案を提出することで法案審議の引き延ばしを図ったが、過半数を占める与党が法案の審議を制限して議会での採決に持ち込んだ。そのため、憲法で定められたファースト・ネーションズとの協議義務を再確認するとした、州政府による修正案は法案に加えられなかった。また与党は「先住民主導の経済区域」を認める可能性があるとしていたものの、その詳細は明らかにされていない。野党NDPは同法案が裁判に提訴されると予想しており、今後も戦い続けることを表明している。
 野党やCanadian Civil Liberties Associationは、州の環境法や労働法の適用が除外される可能性があることから同法が反民主主義的で行き過ぎだと指摘、また環境保護団体からも絶滅危惧種の保護に関して懸念が示されている。
 しかしながら迅速な採掘の許認可発行という条項に関しては、業界や野党からの支持を受けている。

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