- 内蒙古自治区の概要
内蒙古自治区の総面積は118.3万km2で、8つの省に接しているほか、モンゴル、ロシアと国境を接している。東西に長く、その距離は2,400kmある。人口は約2,300万人で、このうちモンゴル族が約400万人。北京と区都呼和浩特間は約400kmあり、現在車では7時間かかるが、来年には高速道路が開通する予定で、高速道路が開通すると北京-呼和浩特間は4時間で移動が可能になる(航空機では実質飛行時間45分)。
一般経済状況としては、GDPは15億4,600万元(2001年、31省・自治区・直轄市の下から8番目、中国全体のGDP 959億3,300万元)であり、このうち第一次産業23.2%、第二次産業40.5%、第三次産業36.3%となっている。一人あたりGDPは6,463元(2001年、全国平均7,543元、上から15番目)である。
日本との関係としては、カシミヤの他、蕎麦、わらび、馬肉を輸出している。
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図1. 内蒙古自治区位置図 |
- 内蒙古自治区の鉱業政策
内蒙古自治区は、第十次5カ年計画で推し進められている西部大開発の対象となる西部12省・市・自治区に含まれており、中央政府が定めた西部地域を対象とした資源開発に関する政策(外国企業の投資に関する税の優遇措置等)が適用される※。内蒙古自治区独自の資源開発に関しての外資に対する優遇制度は特にないが、内蒙古自治区として国内外の企業の自治区内での探鉱を奨励する通知を出しており、積極的に鉱業振興を計っている。なお、内蒙古自治区で外資が鉱業権を取得する場合は、中央政府に申請する。ただし、地元政府の意向が大きく反映されるため、鉱業権の取得にあたってはまず地方政府との折衝が必要である。
- 内蒙古自治区の鉱業概要
これまで発見された鉱徴地はエネルギー資源、金属、非金属をあわせて4,100箇所以上あり、石炭(埋蔵量2,000億トン)、天然ガス(埋蔵量7,000億m3)といったエネルギー資源が豊富であり、また、レアアース鉱床は世界一の規模である。
一方、非鉄金属に関しては、亜鉛・鉛の埋蔵量が多く、発見された鉱徴地のほとんどがすでに開発されている。操業中の鉱山は120箇所程度あるが、大半が小規模であり、中規模以上の鉱山は10数箇所くらいしかない。しかも、それらは鉱山の管理、設備、技術的な面で遅れており、経営が厳しい。
表1. 内蒙古自治区のベースメタル埋蔵量及び2000年の精鉱生産量(金属量)
鉱種 |
埋蔵量 |
生産量(国内割合) |
中国全土(世界順位) |
内蒙古(中国順位) |
銅 |
37百万トン(第4位) |
3.28百万トン(第7位) |
10,605トン(1.8%) |
鉛 |
30百万トン(第1位) |
3.25百万トン(第3位) |
20,300トン(3.1%) |
亜鉛 |
93百万トン(第1位) |
11.96百万トン(第2位) |
51,985トン(2.9%) |
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出典: |
Mineral Commodity Summaries 2002、中国鉱床発現史内蒙古巻、中国有色金属工業年鑑2001 |
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表2. 内蒙古自治区の主なベースメタル鉱山
鉱床 |
鉱種 |
品位 |
埋蔵量(金属量) |
操業状況 |
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個人経営者により操業中。1,200t/日の選鉱場あり。 |
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甘粛省の民間会社とグレンコアが操業中。選鉱能力60万t/年。 |
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1年前に倒産。山東省の民間会社が購入したが、未操業。 |
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現在地方政府の所有に変更作業中。粗鉱量1,500t/日で操業中。 |
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- 探鉱・開発状況
内蒙古自治区は、地質構造上北側の内蒙古-大興安嶺褶曲系と南側の華北準地台に分けられる。内蒙古-大興安嶺褶曲系には、鉛・亜鉛を中心とした熱水型多金属鉱床が特徴的な大興安嶺中南部鉱床帯や、内蒙古自治区西端の天山山脈の延長にあたり、最近発見された斑岩銅鉱床が特徴的な北山鉱床帯、等の鉱床帯がある。また、華北準地台の北縁部には白雲鄂博レアアース鉱床があり、層準規制型の多金属鉱床帯である狼山鉱床帯、等の鉱床帯がある。
狼山鉱床帯は比較的調査が進んでいる鉱床帯で、先ごろスイス・グレンコアが参入した東昇廟鉱山のほか、甲生盤、霍各気、炭窯口等の鉱山がある。大興安嶺中南部鉱床帯は、白音諾爾鉱山のほか、多数の小規模鉛・亜鉛鉱床がある。北山鉱床帯は、最近注目されている鉱床帯で、最近ではカナダのIvanhoe社が探鉱を実施している。
内蒙古自治区には、比較的狭い範囲に鉱床が集中しており、資源ポテンシャルは高い地域と考えられる。その一方で、白雲鄂博レアアース鉱山を除いて大規模な鉱山開発は見られない。これは、60~70年代にかけて大規模な調査が行われてから、あまり調査が行われていないことや、探鉱を行った組織が複数あり、一貫した調査が行われていないことが原因と考えられる。従って、同自治区における探査余地は多く残されていると考えられ、実際最近になって西端の北山地域で斑岩銅鉱床が発見されている。
一方、投資環境の面では、もともと内蒙古自治区は中国では中部地域にあたるが、少数民族への配慮等から西部大開発の対象地域となっており、西部大開発に係る優遇政策が適用され、また中部地域ということで経済発展を遂げている沿岸地域に近いという立地条件もあり、同自治区の東部地域の投資環境は良いと考えられる。
内蒙古自治区だけに限らず、中国には小規模鉱山が多いといわれているが、中国側も効率的な開発が行われていないと問題視しているが、雇用問題、資金不足から有効な対策が打ち出せず、国内外の大資本の投資を強く望んでいる。