カレント・トピックス
 
 
 
 
 

  平成27年10月22日 No.15-41
ニッケル需給予測、2016年に2.3万tの供給不足へ
―2015年秋季国際ニッケル研究会(INSG)報告―


< ロンドン事務所 竹下聡美 報告 >

 2015 年10月5日から6日にかけて、ポルトガル・リスボンにおいて国際ニッケル研究会 (INSG)の秋季定期会合が開催され、INSG加盟国や産業団体、企業、専門家等の約70 名が参加した。第50回目にあたる統計委員会では、世界のニッケル鉱石生産、一次ニッケル生産及び一次ニッケル消費に係る2015 年及び2016年の予測値について、加盟国から提出された数値をベースに参加者により検証が行われ、2015年10月7日にはINSG事務局から需給予測が発表された(2015年10月14日発行ニュース・フラッシュNo.15-38号)。本稿ではその詳細について報告する。

1. 需給バランス―過剰幅は大幅に縮小も2015年は供給過剰を継続―

 表1のとおり、一次ニッケル生産量と一次ニッケル消費量との差分である需給バランスについて、2015年は4.9万tの供給過剰、2016年は2.3万tの供給不足に転じると予測した。ニッケルは供給過剰が過去長い間継続していたが、インドネシアの鉱石禁輸を受けてこれまで在庫調整でNPI生産を続けていた中国のNPI生産量が2015年以降鈍化するとして、2015年に供給過剰幅が縮小し、2016年には消費量が一次ニッケル生産量を2.2万t上回る供給不足に転じる見通し。

表1:世界のニッケル需給バランス(2013~2016年)

表1:世界のニッケル需給バランス(2013~2016年

2. ニッケル需給動向

 2013年から2016年にかけての地域別の数値を表2に、図1で当該数値をグラフ化して需給バランスを赤字で示す。また2015年及び2016年の世界のニッケル鉱石生産量、一次ニッケル生産量及び消費量の見通しについては以下のとおり。

表2:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2013~2016年)

表2:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2013~2016年)

(出典:INSG会議資料より作成)

図1:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2013~2016年)

(出典:INSG会議資料より作成)

図1:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2013~2016年)

(1) ニッケル鉱石生産量―ニューカレドニア、フィリピン等増産で2016年に前年比6.8 %増へ―

 世界のニッケル鉱石生産量について、2015年は前年比1.7 %減の210.0万t、2016年は6.8 %増の224.3万tと推定した。インドネシアが2014年1月から鉱石禁輸に踏み切ったことにより、図1のとおり、2013年から2014年にかけて世界全体の生産量は18.3 %減少し、その後、フィリピン、ニューカレドニア、マダガスカル等の増産により上昇に転じたものの、未だ2013年時の260万tを超える生産体制には至っていない。INSGによる国別予測では、2015年はロシア、豪州及びフィンランドで減産し、ニューカレドニアの増産がこれを一部補うものの世界生産は前年比1.7 %減、2016年は主にニューカレドニア、マダガスカル、ブラジル及び豪州が増産し、フィリピンの生産量は横ばいで推移するも世界生産は前年比6.8 %伸びる見通し。国別の2016年生産量についてINSGは上位からフィリピン41.7万t、豪州24.5万t、カナダ24万t、ニューカレドニア24万t、ロシア23万t、インドネシア14万tと予測した。

(2) 一次ニッケル生産量―中国、ロシア、豪州で2016年にかけて減産見通し―

 世界の一次ニッケル生産量については、2015 年は前年比2 %減の195.4万t、2016年は前年比0.6 %減の194.2万tと2年連続して減産する見通し。世界生産の3割を占める中国については、インドネシア鉱石禁輸によりNPI生産を2014年の69.7万tから2015年は12.4 %減の61万t、2016年はさらに10.2 %減産して54.8万tと予測した。またロシアでも2015年に前年比7.3 %減の22.2万t、2016年も引き続き12.2 %減の19.5万tと減産見通しで、豪州も同様2016年にかけて減産に動くとの予測から世界生産は縮小傾向にある。2016年の国別生産見通しは、上位から中国54.8万t、ロシア19.5万t、日本19.2万t、カナダ15.8万t、豪州12.8万t、ノルウェー9.2万t、ニューカレドニア9.2万tと予測した。

(3) 一次ニッケル消費量―前年比3.1 %増と需要鈍化へ―

 世界の一次ニッケル消費量については、2015年は前年比2.3 %増の190.5万t、2016年は前年比3.1 %増の196.5万tと予測した。特に世界需要の5割以上を占める中国については、過去2桁成長であった需要成長率は2014年から鈍化し、2014年は前年比5.7 %増、2015年は成長率がさらに低下して3.5 %増の98.4万t、2016年は3.7 %増の102万tと予想した。2016年について、国別では消費国上位から、中国102万t、米国16.1万t、日本15万t、韓国8万t、イタリア6万t、ドイツ5.4万tとなる見通し。

まとめ

 世界のニッケル需給については、インドネシアの鉱石禁輸に伴い供給不足に転じるとの予測が従前からなされていたものの、中国のNPI生産はフィリピン及びニューカレドニアの増産及び中国国内の鉱石在庫で相当分が賄われ、2015年は供給過剰幅の縮小に留まった。何より長引くニッケル価格の低迷が生産者を圧迫しており、2016年には中国に加えてロシア及び豪州での減産が予定され、不足幅は2.3万tと僅かながらも供給不足に転じる見通しである。


(注記)

国際ニッケル研究会(INSG)

国際非鉄研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の中では国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)に次いで2 番目に古い歴史を持ち、世界のニッケル市場の透明性の強化を目的に1991 年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関である。現在、ニッケル生産国、消費国及び貿易国からなる14カ国及びEUが加盟している。事務局は、設立当初はオランダ・ハーグに、2006 年からポルトガル・リスボンに置かれている。同研究会は、ニッケル市場の需給予測分析を始め、国際的なニッケルの貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



 ページトップへ