報告書&レポート
アフリカ鉱業投資会議(INDABA 2004)の概要について
アフリカ鉱業投資会議(Investing in African Mining Conference:INDABA 2004)が、2月10~12日、南アフリカ・ケープタウンの国際コンベンション・センター(CTICC)において開催された。今回で同会議は9回目となり、アフリカにおいて事業を実施している、あるいはアフリカに関心を有する世界の鉱業・金融関係者、アフリカ政府関係者等約800人が参加した。同会議に当事務所も参加したので、その概要を報告する。 |
参加者はアフリカに投資している民間関係者が多く、例年のとおり会議そのものよりもこれをビジネスの一つの機会として捉えている参加者がほとんどであり、展示ブース・エリア等で商談をしている人の姿が目についた。会議全体の構成としては、民間企業関係者からの講演の多くは2日目の午後途中まで、それ以降はアフリカ政府関係者の講演が多くなるという内容であった。この構成内容も影響したためか、1日目より2日目、2日目より3日目と聴衆の数が減少し、最初のセッションで800人ほどだった聴衆が、最後のセッションでは30人足らずという状況であった。アフリカ政府からも当初予定されていたほどの数の大臣によるスピーチはなく、本会議が恒例となるに従いアフリカ政府関係者には、不特定多数の人たちにこの場で投資を呼びかけるというよりも、イベントとして一応挨拶しているとの印象の講演内容が多かった。
目立った講演を中心にその概要は以下の通りである。
セッション1:開会挨拶・基調講演等
アフリカ政府関係者を代表して、南アフリカ鉱山・エネルギー省のPhumzile Mlambo-Ngcuka大臣の挨拶の後、以下のような講演があった。
The Financial Services Charter & Empowerment in the Mining Industry | |
Athol Rhoda (Director, Corporate Finance Standard Bank Group) | |
昨年発表された南アフリカの金融サービス部門憲章のBEE(黒人への経済権限付与)は、法的規制がある鉱業憲章と異なり、民間セクターによるイニシアティブ。長期的に国際競争力を持ちつつ南アの人口構成を反映した平等な社会を確立するためには、憲章で求められている黒人の人材開発、黒人企業からの各種調達の推進、黒人企業支援、黒人低所得者に対する金融サービスへのアクセス確保、株主構成の黒人・黒人企業への分散化といった課題に取り組む必要がある。 | |
The Future Relevance of Mining in Africa | |
J. Gerard Holden (Managing Director, Global Head of Mining & Metals, Barclays Capital) | |
昨年の一次産品価格の上昇は目覚しく、今後も継続する勢いがある。生産のディヘッジングが未だ有効な状況である。ここ7年間における世界の新規金鉱山開発では、アフリカが6鉱山と他地域をリードしており、アフリカの地質的ポテンシャルは更なる投資を引きつけ続けるであろうが、鍵となる要因は、疾病(HIV/AIDS、マラリア)、平和と政治的安定性、汚職である。国際鉱業資本にとってアフリカは引き続き重要な目的地であるが、潜行する危険に気をつけなければならない。アフリカの政府の更なる促進措置(にんじん)と少ない規制(むち)を望む。 |
セッション2:最近のアフリカ鉱業開発(RECENT DEVELOPMENTS IN AFRICAN MINING)
本セッションでは、南アフリカにおける金の探鉱開発等アフリカで一定の成果を出している企業の代表者からの講演が多く、自社のプロジェクトの経済優位性や今後期待できるプロジェクトへの取り組み、財務体質の健全さを強調する株主向け説明のような内容が目立った。
セッション3:(セッション名不明記)
本セッションでは、一次産品市場の需給に大きな影響を与える中国と南アの状況についての様々な講演がなされた。
The China Commodity Boom Risks, Rewards & Africa | ||
Jack Jones (Executive Director, CIBC World Markets Inc.) | ||
2003年のINDABAはEMPOWERMENT問題で支配されていたが、昨年の鉱業における重要な問題は中国に関するものだった。中国により金属価格はブームとなり、世界の鉱業界は新しい顧客を得た。このことがアフリカにどのような意味を持つかを考えなければならない。中国は20歳以下だけで人口約3億人で全米の人口に匹敵、競争力のあるコスト、製造業の拠点、インフラ需要、市場のサイズ全てが成長につながる。すでに世界最大の輸入者となっている鉄鉱石をはじめ銅、ニッケル、プラチナ等で中国の一次産品輸入はブームとなっており、今後製造業の移転、インフラ開発、消費者支出の動向でメタル需要はさらなる期待が可能。一方、供給面でも、かつて日本が安定供給のために鉱業投資を振興したように、中国も同じ戦略をとりつつある。中国のリスクは持続的な成長のための政策と弱い銀行システム等があげられるが、この業界で最も悲観的な予想をするリオ・ティントが長期的には楽観的な見通しを持ってきているという意味は大きい。中国は活発な需要と直接投資でアフリカを救える可能性がある。 | ||
Can the China Phenomenon in Commodity Markets be Sustained? | ||
Dr. Peter Richardson (Director, Head of Global Commodities, Deutsche Bank) | ||
現在の高レベルの一次産品価格は、歴史的教訓から見ていくつかの構造的かつ周期的な条件が同時に起きたことによるもので、今後さらに2年以上続く理由はないと考える。中国の需要は伸びているが、インフレがこの需要を抑える可能性があり、工業生産は今後も伸びるかもしれないが、外国からの投資や輸出は通貨の再評価により、その勢いが落ちてくる可能性がある。中国の持続的な成長には私は懐疑的である。また、より高い一次産品価格は南アの金、プラチナ生産者にとっていいニュースではあるが、過去2年間がそうであったように、その効果は通貨(ランド)次第であろう。 |
セッション4:大陸をめぐる開発機会(DEVELOPING OPPORTUNITIES ACROSS THE CONTINENT)
本セッションでは、講演者のアフリカにおける自社の事業実績とともに、その経験等から今後のアフリカにおけるプロジェクトの進め方や探鉱開発の方向性を示唆する講演等が行われた。
Confidence, an Important Ingredient in Exploration | |
Dr. David Klingner(Head of Exploration Rio Tinto Mining & Exploration Ltd.) | |
探鉱においては自信が重要な要素である。過去5年間に我々は、ボツアナ、ギニア、モーリタニア、モザンビーク、南ア、そしてジンバブエにおいて、57百万ドルの探鉱支出をしてきた。我々のアフリカにおける自信は実質的なプレゼンスと投資で導かれたものである。特定の国において自信がなければ、探鉱を始められない、あるいは始めたとしてもその努力は続かない。探鉱計画の優先順位をつけていく過程において、ルールやガバナンスに自信のない国のプロジェクトは生き残れない。そこには非常にたくさんのオプションといつも当然のことながら投入可能な資金の限界があるからで、探鉱は最も自信のあるところに焦点が当てられるものであるからである。リスク多い探鉱の世界において、自信が基本的に重要な要素である。 |
セッション5:ジュニア・プロジェクトの新発見と開発(NEW DISCOVERIES AND DEVELOPMENTS IN JUNIOR PROJECTS)
このセッションでは、ジュニアのアフリカにおける探鉱開発プロジェクトの説明と、また、多くのジュニア企業がアフリカで活動しているカナダ政府・天然資源省のDennis Lagace(グローバル・ダイアログではカナダ代表を務めていた人物)から以下のような講演があった。
Mining:Opportunities and Challenges For the Years Ahead | |
Dennis Lagace (Director General, Natural Resources Canada) | |
我々は鉱業に係る様々な課題について、経験に照らし、パートナーシップを通した解決や持続的開発に向けた対話を追求しつづけている。またカナダはファイナンス面でもメイン・プレーヤーとして鉱業に貢献してきている。カナダは、アフリカと同様にコミュニティの開発や先住民の参加、投資環境整備、持続的開発と産業のイメージ、技術革新といった共通する課題に取り組んできた。カナダはあなたがたのグローバルな鉱業パートナーである。 |
セッション6:(セッション名不明記)
本セッションは、天然資源に係る市場環境、鉱業経営におけるリスク・マネージメント、INDABA2004に先行して行われたアフリカ鉱業大臣によるフォーラム「African Mining Partnership(AMP)」の成果報告等の多岐にわたる講演が行われた。
UPDATE OF MINING MINISTER’S FORUM | ||
Cecilia Bannerman (Minister,Ministry of Mines, Republic of Ghana) | ||
予定されていた南アの鉱山エネルギー大臣に代わって、2月9日に開催されたAfrican Mining Partnership(AMP)の成果報告がガーナ鉱山大臣より行われた。 22か国(アンゴラ、ブルキナ・ファソ、チャド、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ジプチ、エジプト、エチオピア、ガンビア、ガーナ、ケニア、マラウイ、マリ、モーリタニア、ナミビア、ナイジェリア、セネガル、シエラ・レオネ、南アフリカ、スーダン、タンザニア、ウガンダ)からは鉱業を担当する大臣が、アルジェリア、ベニン、レソト、モロッコ、モザンビーク、ルワンダ、スワジランド、チュニジア、ジンバブエからは代表者が参加した。その他、パプアニューギニア、カナダの鉱業大臣、SADC事務局、南ア鉱業協会代表者も参加した。会議では、地域の恩恵、小規模採掘問題、人材開発問題、環境・持続可能な開発問題、外国投資促進と先住民・地元民の参加という多岐にわたる課題について議論、プロジェクトを採択した。また、昨年10月ガーナで開催されたAMP運営委員会における決定(AMPは、グローバル・ダイアログや、世銀の採掘産業トランスペアレンシー・イニシアティブに参加し、重要な役割を担うとの決定)を再決定した。 |
セッション7:アフリカの探鉱開発プロジェクト(EXPLORATION & DEVELOPMENT PROJECTS ACROSS AFRICA)
本セッションでは、アフリカにおける白金、銅、コバルト、ニッケル、金、ダイヤモンド等の探鉱開発等で一定の成果を出している企業の代表者からの講演が多く、前日のセッション2と同様に、自社のプロジェクトの経済優位性や今後期待できるプロジェクトへの取り組み、財務体質の健全さを強調する説明内容が目立った。
セッション8:(セッション名不明記)
本セッションでは、前のセッションに引き続きアフリカにおけるプロジェクトの紹介に加え、世銀からの講演も行われた。
Report Card On Sustainability and Governance in the Mining Sector | |
Dr. Rashad-Rudolf Kaldany (Director, Oil, Gas Mining & Chemicals Dept. IFC/World Bank) | |
世銀の鉱業分野における役割は、これまでのところ内部評価では一応成功していると評価している。鉱業は社会開発に貢献しうる分野であり、開発のメリットを地域のコミュニティにとって確かなものにするように、持続可能な成果を高めていく必要がある。より持続可能な発展のためには政府・産業・コミュニティがWIN-WINの関係になる成果を出していく必要があるが、アフリカ諸国では鉱業からの恩恵を確かにする役割が、我々世銀にはまだ残っている。鉱業セクターからの利益を管理する政府の規制・財務フレーム構築の支援については、これまで、マリ、コンゴ民主共和国、マダガスカル、モーリタニア、ナイジェリア、モザンビーク等で実施してきている。また、民間投資家への支援として、南アのBEE支援、ジュニア鉱業会社への資金提供等も実施してきている。世銀はアフリカの持続的な鉱業開発を強く支援しつづける。 |
セッション9:鉱業投資-開発推進の鍵(MINING INVESTMENT-A KEY DRIVER FOR DEVELOPMENT)
本セッションでは、金の探鉱開発で注目を集めてきている3か国(ガーナ、タンザニア、モーリタニア)の鉱業担当大臣から各国の鉱業投資環境、振興政策、企業活動の状況等が説明された。
セッション10:変化するアフリカ鉱業環境(THE CHANGING MINING ENVIRONMENT OF AFRICA)
本セッションでは、前のセッションに引き続き、アフリカ6か国(マリ、マダガスカル、アルジェリア、モザンビーク、シエラ・レオネ、ザンビア)の大臣等から各国の鉱業投資環境、振興政策等が説明された。
セッション11:(セッション名不明記)
本セッションは最終日の最初のセッションとして、まず以下のような基調講演等が行われた。
基調講演:A NEW ERA IN AFRICA | |
David Hale (President, Hale Advisors) | |
先進国の低金利、製造業の情勢、米国の財政政策といった経済環境は、コモディティ価格を支持する方向にあり、特に中国の高度経済成長の影響は大きい。中国の消費のオーバーヒートも気になるが、中国は鉱業分野で投資もよく行っており、この点でもメイン・プレーヤーになり得る。一方、アフリカは中国や東南アジアと比較するとまだ成長性が低い状況。しかし、今年はアフリカ13か国で選挙が予定され、政治体制の民主化が進展することが期待される。南アの鉱業法制も大きく変化し、ランドについても大きなリスクを持っているが、引き続きそのポテンシャルには期待できる。今後、世界経済の大きなサイクルの中で、アフリカにもチャンスが来る。 | |
Conversion of Rights Under the Mineral and Petroleum Resources Development Act 28 2002 | |
Hulme Scholes (Director, Werksmans Attorneys & Lex Africa Law Firm Network) | |
2002年10月10日に官報で公布された南アの鉱物石油資源開発法は、未だ効力を持っていない状況である。鉱業権の転換は保有原則の保証を基礎に行い、新法に基づく権利を、使用しなければ失効する、使用すれば維持できるという原則となっている。旧法に基づく権利は、まず一般法による権利を除き、探鉱・鉱業の許可、物理的なプロスペクトや鉱業実施の権利を付加することで、新法に基づく権利となる。未使用の旧法に基づく権利には、一般法による権利を除き、探鉱許可や鉱業実施権も与えない。旧法に基づく権利は、探鉱では2年以内、鉱業では5年以内に転換しなければならない。未使用の権利は1年以内に新たに申請しなければならない。 |
セッション12:国際投資家に開かれるアフリカ国家の門戸(AFRICA NATIONS OPEN DOOR TO INTERNATIONAL INVESTORS)
本セッションでは、昨日の午後に引き続き、アフリカ9か国(ブルキナ・ファソ、ナミビア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、マラウイ、セネガル、ウガンダ、モロッコ、ベニン)の大臣等から各国の鉱業投資環境、振興政策、企業活動の状況等が説明された。
セッション13:アフリカ鉱物資源開発のためのフォーラム(MINISTERS FORUM FOR MINERAL DEVELOPMENT IN AFRICA)
本セッションは、当初の予定が大幅に変更となり、アフリカ4か国(アンゴラ、ジンバブエ、エチオピア、トーゴ)の政府代表者等から各国の鉱業投資環境、振興政策、企業活動の状況等が説明された。
パネルディスカッション:黒人への権限付与-鉱業界のもう一つの役割(Black Empowerment: Another Mining Industry Role)
Professor Paul Dirks (Head of the School, University of the Witwatersrand) | |
現在、南アの大学では、科学技術力の維持、鉱業界への人材供給能力維持の観点から大きな挑戦を受けている。長期的に質の高い能力を維持するための大学の計画は、大変厳しい状況に置かれている。南ア政府のR&D支出は、94年には対GNP1.1%であったが、2002年には0.7%となっており、OECD平均2.15%と比較してもかなり低く、国際競争力を維持するには少なすぎる。人口統計上の年齢構成に比べて、大学におけるこの分野のスタッフには、黒人アカデミック・スタッフが少なく、高齢化が進んでいる。長期的な持続可能な発展のために、鉱業界にもっと大学に関心を持ち、大学における人材開発という問題にもEmpowermentの割り当てのようなものが必要である。 |
