報告書&レポート
「Mineral Exploration Roundup 2004 in Vancouver」報告
平成16年1月26日から29日、「Mineral Exploration Roundup 2004 in Vancouver」が開催された。ラウンドアップは、BC州及びユーコン準州鉱業協会(BC & Yukon Chamber of Mines)が主催するもので、26か国3,900人が参加。金、ニッケルや銅など金属価格が大きく上昇する中、資源開発部門に再び活気がよみがえったことを反映し、近年にない大盛況となった。 |
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「Convergence and Sustainability in Gold Industry」
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「FNX and McCreedy West Mine Case Study: The Dynamic Link Between Old and New」
(1) 企業統合の波の始まり
非鉄資源産業における企業統合の波は、1999年Group Mexico社によるAsarco社、Phelps Dodge社によるCyprus Amax社、2000年Rio Tinto社によるNorth社、Billiton社によるRio Algomの買収により確認できる。こうした波は、2001年のBHP Billiton社の設立によってさらに勢いを増し、2001年の半ば以降も、15以上の企業統合が成立した。
また、1998年における大規模金生産者40社を抽出し、その動向を整理すると、2002年までに当初抽出した40社は22社に、中堅企業も14社から6社に減少し、中堅企業の生産量は24%から10%に減少した。対照的に、金生産のトップ9社の生産量は、2002年には、66%から86%まで増加。この間の企業統合の結果、中堅企業数が減少し、大企業と小企業の格差がさらに拡大している。
(2) 統合の波の背景
1) | 企業統合は、株式市場に参加する投資家の目に止まる企業規模を持った企業の形成を求める投資家の要求によって進められたもの。投資家は、成長を続け流動性が高く、収益性の高い企業を求める。金鉱業全体の株式時価総額は約1,000億ドルで、マイクロソフト社の3,000億ドルの約3分の1に過ぎない。 | |
2) | 企業統合は、新鉱床の探鉱開発よりも、コスト削減等を通じた既存施設からの収益率の向上を優先する投資家の要求を受けたものでもある。 | |
3) | また、企業統合は、生産能力拡大のため、本来不可欠な探鉱リスクを取ることなく事業拡大を目指す企業によって進められた。 |
(3) 統合の波と探査活動へのインパクト
・ | 探鉱費の大幅な減額 | |
金に対する探鉱投資は、1997年から2001年の間に、世界全体で33億ドルから9億ドルに急減。この減少の主な原因は、金価格の低迷。この結果、投機資本が金産業から避け、ジュニア企業の資金確保が困難になった。このような状況で、大手企業間の統合が進み、探鉱予算が縮小した(NormandyとNewmontの統合では1.11億ドルから0.73億ドル、BHPとBillitonの統合では2.00億ドルから1.36億ドル)。 | ||
・ | 統合は探鉱戦略にも影響 | |
過去、金産業では、100万オンス(31t)規模の鉱床でも開発対象になった。企業統合の結果成立した年産500万オンス(155t)から800万オンス(250t)規模の大企業は、500万オンス以上(155t)の鉱床をターゲットとする。 | ||
・ | 大規模鉱床発見数の減少 500万オンス(155t)を越える鉱床の発見は1994年~1998年の10件から1999年~2003年の3件と減少。 |
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・ | 失業による人材の流出 探鉱業界の統合により、人材は流出。過剰人員の削減と企業活動規模の縮小を経験。例えば、Newmont社はBattle Mountain社との統合により5か所の探鉱事務所を、Homestake社と統合したBarrick Gold社は3か所の探鉱事務所を閉鎖。 |
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・ | R&D支出の減少 Australia Institute of Geoscienceの2001年の報告では、オーストラリアでは、探査関係R&D予算が3年間で60%減少。研究のスポンサーとなる企業は確実に減少。 |
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・ | 統合は業界にマイナス面しかもたらさないのか。 買収企業は、生産量の拡大のみならず、新たな事業機会と利益を得る。現実にBarrick Gold社はHomestake社との統合によりオーストラリアで新たな探査フィールドを獲得した。 |
(4) 統合は今後も続くか
規模の拡大により多額の投資を獲得しようとする中堅企業層とジュニア企業との間で、企業統合が更に続くものと予想する。
(5) Barrick Gold社の探鉱戦略
Barrick社は、自社探鉱に加え、ジュニア企業の統合吸収やジョイントベンチャーを進める。当社は、バンクーバーに事務所を設置し、ジュニア企業との繋がりを強化する。
(6) まとめ
企業統合は、投資家からの要求と資本獲得競争によって情け容赦なく、進展。金属価格の低迷という事情もあり、探鉱予算やR&D予算の削減と雇用の場が喪失された。探鉱資金の消失によりこの産業が被った長期的な損失は計り知れない。しかし、見方を変えると、企業統合は探鉱分野に相乗効果を生み、新たな地域に視野を広げ、知識の移転を促す機会と見ることもできる。長期にわたる金属価格の低迷、資本不足と雇用機会の喪失は、新たな人材をこの産業に引き寄せることをより困難にしている。
我々探査関係者は、探鉱支出を増額させ、新規鉱床を発見しなければならない。この2~3年鉱量枯渇をするにまかせた結果、現在の生産規模を維持すると、10年ほどで鉱量が枯渇する。通常、鉱床発見から生産開始まで数年から8年程度を要することを理解しなければならない。しかし、金属価格の高騰、投資家の信頼そして投機資本が戻ってきた現在、改めて、本格的探査活動を再開する時期がやってきたと考える。
FNX社はSudbury地区でかつて生産していた5つのニッケル鉱区をInco社から2002年1月に獲得。新たな鉱床(Inter Main鉱床)を発見した後、14か月経った2003年5月に生産を開始した。
(1) 本プロジェクトの背景
・ | 大規模なプロジェクトの生産開始が2007年まで期待できない現在、ニッケル価格は高水準で推移すると予測。McCreedy West鉱山は、価格低迷時代に閉山したが、鉱床の品位はかなり高く、更に周辺で富鉱体が見つかったことから、開発が具体化。本開発は、Inco社の施設を再利用することで、短時間で生産立ち上げが可能で経済的。 |
(2) 開発形態
Inco社は、非中核資産の価値を高めるため新しい方法を求めていたが、その結果がSudbury Joint Ventureとなったもの。具体的にはFNX社(75%を保有)が、探鉱をDynatec社(25%を保有)が生産を担当。鉱石の精製及び販売はInco社が行う。
(3) 鉱床
McCreedy West鉱山の地質環境は、世界でも例を見ないNi、Ir、Ruに富む特徴を持った“Contact-style”(Nickel-Rich sulfide)と“Footwall-style”のCu-PGE vein鉱床が直接繋がった鉱体。第1フェーズの生産は、従来の“Contact-type”と“Footwall-type”そして新しく発見された“Inter Main”鉱床からなる。Inter Main鉱床では、鉱量1.07百万t(Ni 1.88%、Cu 0.21%)が確認されている。Footwall-styleは、Cu-PGE vein鉱床で、本鉱体は1,600m深度まで鉱化作用が把握され、第3フェーズでの生産に向け追加調査及びF/Sを実施中。
(4) 生産計画
・ | 第1フェーズは、昨年5月に生産を開始し、本年第2四半期までに1,000t/日まで立ち上げる予定。なお、フル操業時には、3,000~4,000t/日の生産が見込まれる。 |
