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報告書&レポート

2004年6月18日 金属資源開発調査企画グループ 大迫次郎、北 良行 バンクーバー事務所 中塚正紀
2004年22号

リオドセ(CVRD)、ノランダ社(Noranda)を買収か

 CVRDによるNoranda社の買収話がうわさされている。買収費用はおよそUS$47億になるとの情報も出ている。成約すればBHPに次いで世界2位の鉱山会社が誕生することになる。CVRDは、今後、非鉄分野に一層の投資を行う計画で、新たに銅、亜鉛、ニッケル鉱石の生産とアルミニウムの精錬事業が追加され、特に銅生産は最重点事項となるためNoranda社は極めて魅力的である。Noranda社は2003年こそ赤字を計上したものの、売却にあたって、業界が好況にあり弱気になる環境にないため、今後交渉がどの様に進むか注目される。なお、6月17日付ロイターによれば、CRVDはこの話を否定している。

  1. 世界最大の鉄鉱石生産会社であるCVRDがカナダ最大の鉱山会社、Norandaを買収する話が浮上している。ロイターによれば、規模はUS$30億以上に達する可能性があるが、ブラジル有力経済紙バロール・エコノミコは、不動産投資会社Bariscanが所有するNorandaの43%の支配権株式を買収するのに、CVRDの提示額US$20億余りに対し、カナダ側は約US$30億以上を要求しているという。Bloombergが6月16日伝えるところでは、買収費用はC$65億(およそUS$47億)という。また、C$71億という情報もある。CVRDはNorandaグループ全てをターゲットにしているといい、その場合かなり高額になる事は確かであろう。Norandaは複数の会社が同社の買収に興味を持っていると述べている。各紙の情報では、Anglo American plc、BHP Billiton、Norilsk、Rio Tintoなどの名前がある。この話は、2004年年明けから情報が出回っていたが、当時Rio Tinto社が一歩先んじていると言われていた。CVRDに持ちかけたのは、Morgan Stanleyといわれ、もし取引が成功すればCVRDにとってブラジル以外での最初の大きな買収で、BHPに次いで世界2位の鉱山会社が誕生することになる。両社で生産する金属はアルミニウム地金のみで、その他の鉱産物生産は補完関係にある。ある試算によれば、総合資産US$300億、年間売上高は約US$150億になるという。
     Brascan社はCIBCを財政顧問とし、不動産、金融、林業等の分野の投資会社で、Norondaの活動も支えてきた。同社は、Noranda株43%を所有するが、2年前頃から鉱業界から手を引くことを示唆しており、卑金属産業は金属価格が高騰、回復した資産から利益を得、株主にとって価値を最大化するための選択枝を生かす最大のチャンスが来たと述べている。
     BMO(Bank of Montreal)Nesbitt Burns社の鉱業アナリストVictor Lazarovici氏は、現在の北米での相場は、資産額より10%多くした金額が一般的で、この相場で行くと、Noranda株は一株C$28相当になると述べ、現在の金属価格の高値もあり、Brascan社はNorandaを安く売り急ぐ必要もないのではと考え、この話が立ち消えになる可能性を示唆している。

  2. CVRDは、主として中国などの拡大する非鉄金属の需要と高騰する金属価格により2003年には、前年の約2倍にも相当するUS$14億7千万の利益を出し、今後、非鉄分野に一層の投資を行う計画。買収が実現すれば、60%の売り上げを鉄鉱石とマンガン鉱石から得ていたCVRDの事業に、新たに銅、亜鉛、ニッケル鉱石の生産とアルミニウムの精錬事業が追加される。毎年US$20億ほどの投資を金属生産部門していく予定で、銅生産は最重点事項。
     CVRDのChief ExecutiveであるR Agnelli氏は、2004年のUS$18億を含め、2004~2008年にU$60億の投資を計画していると2004年1月に述べている。Norandaの買収はCVRDのSossegoプロジェクトの拡張に継いで銅に投資するという戦略に合致、ペルー政府が売り出し中のBambas銅山にも関心を寄せている。CVRDにとって、Norandaが銅に関しては南米に注力しており、また、Falconbridgeを介してニッケルの生産が世界第3位であることが最大の魅力。
     Sao Paulo 証券取引所で主に上場するCVRDの株は16日2%下がった。買収価格が著しく高すぎると見られたため。

  3. 一方、Noranda社は昨年の売上がUS$47億で、世界第3位のニッケル生産を誇るFalconbridge社の60%のシェアを有する。銅生産は世界第9位、亜鉛生産は世界第3位で、売上の80%を銅とニッケルから得ている。資産の42%はカナダ国内、チリは27%、米国は12%である。銅生産は、チリのAltonorte製錬所、Ontario州TimminsのKiddcreekを保有、チリのCollahuasiのFalconbridge社分の40%及びペルーのAntaminaの34%の権益を保有。また、New BrunswickのBrunswick亜鉛鉱山・製錬所、MissouriのNew Madridのアルミ製錬所なども保有している。
     トロント証券取引所のNoranda株は16日には前日比C$2.07(9.4%)急騰し、C$24.06で引けた。

    主な鉱業関係会社の株式市場規模
        Mkt cap (US$m)
    BHP Billiton Ltd Diversified 31,747
    Anglo American Diversified 30,686
    Alcoa Aluminium 26,917
    Rio Tinto plc Diversified 25,132
    BHP Billiton plc Diversified 20,654
    CVRD Ferrous 17,947
    Newmont Mining Gold 16,920
    Norsk Hydro Aluminium 16,737
    Alcan Aluminium 14,874
    Rio Tinto Ltd Diversified 12,194
    MMC Norilsk Nickel Nickel 11,166
    Barrick Gold Gold 10,297
    Xstrata plc Diversified 8,214
    Anglo Platinum PGM 8,076
    Placer Dome Gold 6,218
    Phelps Dodge Copper 6,154
    Inco Nickel 6,033
    Noranda Mining Diversified 4,601
    Mining Journal June 11 2004、P14から作成
    両社の主要鉱産物生産規模
    鉱産物 リオ・ドセ社(CVRD) ノランダ社(Noranda Inc.)
    2002年 世界シェア 2002年 世界シェア
    鉄鉱石(000,000t)
    166.6
    14.8 % ( 1位)
     
       
    マンガン鉱石(000,000t)
    2.2
    8.4 % ( 3位)
     
       
    金(t)
    10.3
    0.4 % (30位)
     
       
    ボーキサイト(000,000t)
    4.7
    3.2 % ( 9位)
     
       
    アルミニウム地金(000t)
    262.9
    1.0 % (18位)
    236.5
    0.9 % (21位)
    銅鉱石(000t)
     
       
    328.1
    3.5 % ( 9位)
    亜鉛鉱石(000t)
     
       
    505.5
    6.3 % ( 3位)
    ニッケル鉱石(000t)
     
       
    41.6
    6.1 % ( 4位)
    鉛鉱石(000t)
     
       
    76.2
    2.8 % ( 8位)
    銀(t)
     
       
    351
    2.2 % ( 9位)
    銅地金(000t)
     
       
    395.5
    3.3 % ( 8位)
    亜鉛地金(000t)
     
       
    260.7
    4.3 % ( 7位)
    ニッケル(000t)1
     
       
    50.8
    7.8 % ( 3位)
    鉛地金(000t)
     
       
    90.2
    1.5 % ( 6位)2
    非鉄メジャーの動向2003(JOGMEC)を参考に作成
    1: フェロニッケル中のニッケル分を含む
    2: 鉛地金の世界シェアは2001年の数字
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