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報告書&レポート

2004年8月19日 ロンドン事務所 霜鳥 洋
2004年32号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2004年7月)

  1. 国際市場

  2.  7月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、ニッケルが11%増のU$15,031.59/tと6月に続き上昇し、一時はU$16,000/tに達した。4月以降価格が下落していた銅も4.5%増のU$2,808.43/tとなったが、亜鉛は6月に続き下落してU$1,000/tの大台を割りU$988.32/tになった。
     ニッケル価格の上昇は投機資金の流入によるものとされている。主要ニッケル生産者であるWMC Resources社(豪)やNorilsk Nickel社(露)は、現在の高価格は需給を反映したものではなく、一時的なものと見ている。銅の5月の需給は57千tの供給不足で、1月からの累計不足量は610千tに達し、2005年初頭までタイトな需給と高価格が続くと予想されている。亜鉛の需給は若干の生産余剰があり、在庫量は依然として多い。

    LME平均価格と在庫
      平均価格(cash settlement、U$/t) 在庫(t)
    2003年 2004年6月 2004年7月 前月比 2004.6.30 2004.7.30 増減
    Cu 1,778.41 2,686.70 2,808.43 +4.5% 101,475 88,450 -13,025
    Ni 9,625.53 13,539.55 15,031.59 +11.0% 8,394 10,158 +1,764
    Zn 826.90 1,021.45 988.32 -3.2% 730,125 706,050 -24,075

    LME 月平均価格の推移

  3. 需給動向

  4. 2004年1~5月の需給状況(出典:銅、ニッケル、鉛亜鉛国際研究会)
      鉱山生産 精錬生産 消費 需給バランス
    (t)
    1~5月(t) 前年比 1~5月(t) 前年比 1~5月(t) 前年比
    Cu 5,679,000 +0.6% 6,315,000 +1.4% 6,925,000 +6.4% -610,000
    Ni 533,200 +2.0% 526,100 +3.6% 528,700 +3.2% -2,600
    Zn 3,961,000 +2.1% 4,125,000 +3.2% 4,062,000 -0.3% +63,000

    (1) 銅
    【需給】
     1~5月期の鉱山生産は、世界の3分の1を生産するチリが5.3%増であったのを初め、メキシコ23.8%増、ペルー18.3%増、ザンビア15.7%増と主要生産国が増産となってインドネシアの47.3%減を補い、合計で0.6%増となった。インドネシアの減産の原因であるGrasberg鉱山は4月以降本格的な生産を再開している。消費は6.4%増で1~4月期の8.7%増よりは伸び幅が減少したものの需給は依然として供給不足である。5月の供給不足量は57千tで、前月の141千tよりも不足幅は小さくなった。消費増は依然として東アジアと米国が寄与しているが、中国の需要は4月の312,900tから5月241,300tへと減少しており、需要増のペースに陰りが見られる。EU 15か国の1~5月期の消費は6.9%減で、2000年をピークとして以来の減少傾向が続いている。
     Bloomsbury Minerals Economics社は2004年に90~95万tの供給不足となるが高価格が増産を促進し2005年初めに需給はバランスすると予測(7/22、Reuters)。Goldman Sachs社は銅生産が年6%増の場合2005年に314千tの生産過剰と予測(8/6、Oster Dow Jones)。
    【在庫】
     7月末のロンドン、ニューヨーク、上海の3金属取引所の在庫合計は203,146tで、6月から38,578t減少した。生産者、消費者の在庫も含めた合計量は5月末現在で1,188,500tで前月の7.3%減。
    【価格】
     銅価格は4/19に数年来の最高値U$3,170/tに達した後、6/15のU$2,554/tまで下げ続けていたが、その後上昇に転じ、7/30にはU$2,900/tに戻した。
     ブラジル銅研究所は2004年末の銅価格をU$2,000/tと予測(7/9、Business News America)。チリ中央銀行は2004年の平均銅予想価格を年当初のU$2,200/tからU$2,600/tに上方修正(7/14、Latin America News Services)。チリ銅委員会は2004年の平均銅価格はU$2,820/tで、2005年後半から2006年にかけ徐々に下げると予測(7/23、Business News America)。Reuters社によるアナリスト25人へのアンケートの結果、2004年の銅平均予想価格はU$2,713/t、2005年はU$2,553/t(7/23、Mining Journal)。

    (2) ニッケル
    【需給】
     1~5月期の鉱山生産は、生産量第2位のカナダが5.6%減であったものの、ニューカレドニア12.8%増、コロンビア11.5%増、インドネシア11.1%増、中国9.4%増と中堅生産国の増産が寄与して世界合計で2.0%増となった。1次ニッケル精製生産量は、豪州が7.4%減、ノルウェイが10.8%減、ニューカレドニアが20.4%減と生産量を減らしたものの、日本が6.9%増、カナダが4.6%増、中国が20.6%増と生産量を伸ばし、世界計で3.6%増となった。消費量は、最大消費国の日本が3.1%増であったほか、中国が13.2%増、韓国が19.7%増で、米国の0.2%減、ドイツの4.9%減、台湾の3.9%減を補って世界合計で3.2%増となった。経済成長の減速が予想されている中国の5月の消費量は11千tで、前月の4.8%増、前年同月の14.6%増と依然として好調であった。
    【在庫】
     LMEの7月末の在庫は6月末よりも1,764t増えた。7月下旬にロシアから地金2,800tがLME英国倉庫に搬入されたが、買い手がつかなかった余剰地金とのこと(7/26、Metal Bulletin)。
    【価格】
     1/6に数年来の最高値U$17,770/tとなって以降、値を下げ、5/18にはU$10,530/tになったが、その後再度上昇に転じ、7/7にはU$15,980/tにまで戻し、7月後半はU$14,000台前半を推移した。
     WMC Resources社Andrew Michelmore社長は「U$15,435/t以上の価格は代替を促すので好ましくない。当社顧客との関係では需給はタイトではなく、余剰地金をLME倉庫に送っている。現在の高価格は需給を反映したものではない」と発言(7/19、Metal Bulletin)。Inco社Soctt Hand会長は2004年後半のニッケル需要は前半以上に強いと予測(7/21、Canadian Press)。Falconbridge社Santo Ranieri市場調査部長は2005年の供給不足量を3月前に予測した9,000tから18,000tに拡大(7/23、Oster Dow Jones)。Reuters社によるアナリストアンケートの結果、2004年のニッケル平均予想価格はU$13,583/t、2005年はU$12,742/t(7/23、Mining Journal)。ニッケル生産者は供給不足になると警鐘をならし、ステンレス生産者は需要増を予測し続けているが、関係者の多くは高価格の原因を投機資金に帰しており、生産コストU$6,000/tのニッケル地金をU$16,000/tとする程に需給は逼迫していないとMetal Bulletinはコメント(8/9)。

    (3) 亜鉛
    【需給】
     1~5月期の鉱山生産は、最大生産国の中国が15.8%増となった他、アイルランド12.1%増、インド13.4%増、ナミビア87.2%増で、豪(14.4%減)、ペルー(6.3%減)、カナダ(1.8%減)、米国(3.7%減)といった主要生産国の減産を上回って2.1%の増産となった。精錬生産は最大生産国の中国が16.9%増と伸ばし、世界計で3.2%増となった。消費は中国と米国がそれぞれ4.2%増、7.3%増と好調であったものの、日本、韓国、台湾などの東アジアと欧州の消費量が減少し、世界計で0.3%減となった。
    【在庫】
     生産者、消費者、金属取引所の在庫の合計は5月末現在で1,153,600tと前月から26,300t減少しているものの年間消費量の約1割に相当し、依然として多い。
    【価格】
     年初以降U$1,000/t台を維持していた価格は、6月以降は大台を割ることが多くなり、7/23にはU$962/tまで下げた。その後持ち直したが、7/27には上昇を続ける鉛価格がU$995/tとなって亜鉛価格U$971/tを上回った。鉛の需要増は年率2%と比較的低いが、低迷する亜鉛の副産物として主に産するため生産増がままならず、タイトな需給が続いて在庫が記録的な低さにある。一方亜鉛は在庫が多く需給も供給過剰気味であることから、鉛価格の上昇と亜鉛価格の低迷は続くとMetal Bulletinは予測(8/9)。Reuters社によるアナリストアンケートの結果、2004年の亜鉛平均予想価格はU$1,053/t、2005年はU$1,108/t(7/23、Mining Journal)。
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