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ペルー・Las Bambas銅鉱床の開発オプション権をXstrata社が獲得
ペルーのみならず世界の鉱業関係者が注目した、Las Bambas銅鉱床の開発オプション権譲渡の入札は、Xstrata社(スイス)が他の応札メジャー企業3社に競り勝ち、121百万ドルで落札した。 |
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背景・経緯
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入札状況
- 落札額121百万ドルの内、91百万ドルは契約締結時、27百万ドルは開発オプション権の行使時に支払う。この内、半分の59百万ドルは地元Apurimac県に配分され、残り59百万ドルは国庫収入となる。地元Apurimac県には、この他、探鉱段階で1.5百万ドル、鉱山の建設段階で1.5百万ドル、総額で62百万ドルが配分され、インフラ整備等の社会開発、産業開発に向けられる。
- 開発オプション権行使までの猶予期間(探鉱期間)は4年だが、両者の合意によりさらに2年間までの延長が可能である。(義務探鉱費42百万ドル)
- 開発オプション権を行使する場合は、10億ドル以上の開発投資か、粗鉱量5万トン/日以上の処理能力を有するプラント建設の義務がある。
- 操業に至った場合、総販売高の3%が鉱業ロイヤルティーとして徴収される。これは、全額、地元のApurimac県に配分される。
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反響と今後の視点
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Las Bambas銅鉱床は、ペルー南部のApurimac県Cotabambas郡の標高約4,500mに位置し、歴史都市クスコからは、直距で南西約80kmである。(右図参照)
本鉱床は、1911年にFerrobamba社(英)が発見し、その後、1940年代から1960年代にCerro de Pasco社(米)が、1990年代の後半にはCyprus社、Phelps Dodge社等が探査を行ってきた。これまでの調査(ボーリング約7,000m等)により、スカルン型の本鉱床は4鉱体(Chalcobamba、Ferrobamba、Sulfobamba、Charcas)よりなり、現時点での4鉱体トータルの埋蔵量は40.5百万トン(銅品位2.2%)、ポテンシャル鉱量は5億トン以上(銅品位1%以上)とされており、Antamina規模の銅山になるものと期待されている。また銅以外に、副産物として金(約0.2g/t)、銀(約20g/t)を含有する。
本入札の実施について、昨年半ばに政府は、昨年内に行うと発表し、昨年8月には入札希望会社に対し事前登録(資格審査)を開始した。しかし、その後、鉱業ロイヤルティー法の成立に向けた動きが活発化する中、この動向を見極めたいとの理由等から、入札実施は先延ばしされた。今年3月には、政府は7月2日に入札を行うと発表したが、鉱業ロイヤルティー法が成立し、本入札への同法の適用について不明確であったことから、入札日は、その後も2回延期された。最終的には、同法の修正案が可決し、政府入札案件の鉱業ロイヤルティーについては、入札要綱に定める条件が優先されると決まったことで、今般の入札実施となった。
本入札に関心を示し、事前登録を行った会社は、多数のメジャー企業を含む14社を数えたが、鉱業ロイヤルティー法の成立と相前後して、これを理由とした撤退表明等が相次ぎ、最終的には、Xstrata社を含む4社のみが応札した。
8月31日に実施された入札には、最終的にXstrata社の他、メジャー企業3社(CVRD社、BHP Billiton社、Phelps Dodge社)が参加・応札した。Xstrata社の落札額121百万ドル対し、他の3社の応札額は、CVRD社111百万ドル、BHP Billiton社106.1百万ドル、Phelps Dodge社50.02百万ドルであった。政府が事前に定めた最低入札価格は40百万ドルであったので、この約3倍の落札額という高値であったが、CVRD社、BHP Billiton社の応札額も落札額に近く、これらの社の本鉱床に対する評価に大差がなく、いずれも高い評価をしたと言える。
本入札結果を踏まえ、政府側(投資促進庁)とXstrata社の正式契約は10月1日に予定されているが、落札額の支払時期・額及び配分先、事前の入札要綱に定められていた鉱業ロイヤルティー、投資義務等、合意内容のポイントは以下の通りである。
落札会社となったXstrata社は、スイスに本拠を置くが、ロンドン市場上場のグローバル資源開発企業である。(昨年度総売上高約44億ドル) 元来、石炭、フェロクロム等を主な対象鉱種としてきたが、昨年6月にMIM社(豪)を買収し、アルンブレラ鉱山(亜)の50%権益を取得する等、銅分野へも積極的な参入を図っている。今回の応札も、同社の南米地域での銅資源開発に対する積極戦略の一環と考えられ、本鉱床開発に懸ける意気込みが感じられる。
本入札は、関係企業の他、キハンドリア エネルギー鉱山大臣、投資促進庁長官、Apurimac県知事、地元の町村長、さらに100人を越える地元住民も出席する、高い関心と期待の中で行われ、これに応える結果となった。入札終了後、トレド大統領自らも、Xstrata社の幹部、地元住民と面会し入札の成功を祝した。
政府は、本プロジェクトが開発・操業に至った場合、15億ドル規模の開発投資となり、当国の銅生産量(昨年実績84万トン)を30%増加させ、GDPを1%押し上げ、5万人の直接・間接雇用を生み出すと広報している。
また、今回の入札要綱は、昨今の鉱山開発が地元の協力なしには進められない点に配慮し、地元のApurimac県に多額の恩恵をもたらす内容になっており、落札額の高さは、直接的に地元収入の増加を意味し、地元関係者が入札結果を喜んだ一因でもある。落札額121百万ドルの内、地元のApurimac県への配分金は、別途、この使途先を決める協議会が設けられる予定になっているが、基本的には、インフラ、教育、保険・医療等の社会開発、農業、工業、伝統手工芸等の産業開発に向けられ、貧困地域を多く抱える地元の発展が期待されている。
ペルー国内では、今回の結果に対し、当地の鉱業協会、主要政党の関係者等がこれを祝し、総じて歓迎ムードであり、今後の鉱業投資の促進に寄与するとしている。Xstrata社も落札後直ちに、今後4年間で45百万ドルの探鉱投資を行い、まず鉱量の確定に努めたいと発表している。
政府は、今回の成功を受け、他の政府保有の大型の銅鉱床案件である、Michiquillay(鉱量544百万トン、銅品位0.69%)、La Granja(鉱量1,200百万トン、銅品位0.65%)についても、入札手続を順次進めたいとし、前者については、年内にも入札公示が行われる見込みである。
この様に、政府と地元が一体となって進められた今回の入札は成功し、落札したXstrata社も、今後の積極的な探鉱活動を表明しているが、早くとも2011年以降と予想される新鉱山の誕生が、政府が期待する規模になるかは今後の探鉱成果に拠るところが大きく、不確定要素も多い。また、地元の一部には開発反対の動きもあり、国内の環境団体、国際的な環境NGOと連携した動きを指摘する声もある。ペルー国内で、Tambogrande等幾つかの大型の探鉱・開発案件が、環境問題等を巡る地元との対立により凍結状態にある中、本案件も世界が注目するプロジェクト故に、一層このような動きに関係者は敏感になっており、換言すると、この面からの不安要因も内包している。
