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報告書&レポート

2004年10月7日 アルマティ事務所 酒田 剛 e-mail: jogmec@nursat.kz
2004年41号

MINING WORLD CENTRAL ASIA 2004報告

 9月15・16日、カザフスタンのアルマティで「Mining World Central Asia 2004, 3rd Central Asian International Conference」が開催された。昨年に続きITEグループが主催したもので、カンファレンスには前回を大幅に上回る14カ国約170名の参加があり、主にカザフスタンにおけるMining Industryの現状と課題を中心として活発な情報交換が行われた。本稿では、カンファレンスの特徴及び注目されたプレゼンテーションの概要について簡単に報告する。

  1. カンファレンスの特徴

  2.  以下の6セッションから構成され、全体では23のプレゼンテーションが行われた。事前に配布された予稿集には、ウズベキスタンやキルギスの他、ロシアの鉱業関係者(政府機関や鉱業企業など)による講演も予定されるなど関心を引くプログラムも目についたが、これらの多くが実施されなかったのは残念である。また、Powerpointの活用が乏しい点は前回同様であった。しかし、鉱業の現状や法制面の動向、情報開示の必要性などに関する講演は、カザフスタン鉱業界が直面している課題を論点としたものもあり、それなりにアピールする内容であった。

    (1) 鉱業分野における原料基盤の現状と開発の見通し
    (2) 鉱物原料の地質調査・採掘・加工に関する法制の動向
    (3) 鉱物原料の合理的な加工処理と技術的な課題
    (4) 探鉱・採掘と競争力を有する生産物のあり方
    (5) 鉱業分野における投融資の状況と鉱物資源産業の経営管理
    (6) 鉱業分野の基本的問題と解決方法-鉱物資源量の拡大と鉱物原料の複合利用

  3. 注目されたプレゼンテーションの概要

  4. 2-1. Zhezkazganredmet社(レニウム・オスミウム生産企業)の概要:Dzhanysbayev Alim部長
      (1) カザフスタン国営企業(産業貿易省の管轄)
      (2) 生産拠点はカラガンダ州Zhezkazgan
      (3) 金属レニウム、過レニウム酸アンモニウム、オスミウム187を生産
       
    • 国策である「レアメタル産業の発展」をベースに、Zhezkazgan鉱山(世界有数規模の銅鉱山)の銅硫化鉱を原料として1993年からレニウムとオスミウムの回収を開始。
    • レニウム需要の60~70%は航空機などの超耐熱合金向け(スーパーアロイ)用途であり、プライマリー生産(2002年推定生産量:31t)を行っているのは、チリ、ペルー、米とカザフスタンだけで、これらの国は銅・モリブデン精鉱から副産物としてレニウムを回収。
    • CIS諸国でのレニウム生産は、ロシアのKyshtym Copper-Ekectrolyte Works(KMEZ社)が石油精製触媒からリサイクルを、択捉島では火山の噴出ガスから回収を行っているほか、ウズベキスタンのAsia Rhenium Resource(英とのJ/V企業)でも生産。
    • オスミウムは白金との合金が硬くて耐食性に優れ、触媒としての用途も注目される一方で、同位元素オスミウム187は核兵器製造に必須とされるが、それ以外の用途は開発途上。
    • 製品の品質保証を取得し、生産物は全量を輸出。米、独、蘭、露、ウズベクと関係を構築。

    2-2. カザフスタンの鉱業の現状とレアメタル産業:National Center for Complex Processing of Mineral Raw Material(資源利用センター)/Zharmenov Abdurassul総裁
      資源利用センターは、旧ソ連時代からカザフで金属鉱物資源関係の研究を行ってきた5研究所を管轄し、鉱物原料の総合利用を促進させるための機能を果たす国家センターとして1993年に設立
       
    • カザフの金属鉱床はComplex Oreが多いのが特徴で、Kazakhmys社のZhezkazgan銅鉱山の場合、鉱石1t当たりの金属価値(国際市場価格を基に試算)に占める金属の比率は、Cu:58%、随伴する金属:42%(内訳:Ga:19、Re:9、Ag:6、Zn:5、Pb:2、Co:1)。しかし、実際に回収されるのは、ほとんど銅と銀だけというのがこれまでの実態。Kazzink社の場合は、稼行する鉱山からの希少金属の回収率は下表に示すとおり、ここ10年で大幅に低下。
    種別 回収率(%) 備考(生産拠点)
    1990年 2001年
    カドミウム 88.3 56.1 Ust’kamenogorsk Metallurgical Complex
    タリウム 61.1 31.1 同上
    セレン 43.4 19.0 同上
    テルル 76.9 3.7 同上

       
    • Complex Oreに含まれる随伴金属をいかに効率よく回収するかは、レアメタル産業の発展にとっても大きな課題であり、高度な生産技術と外資企業を積極的に招致することが必要。オスミウム187を生産可能にしたことで、Zhezkazgan鉱石の金属価値比率は、Os:64%、Cu:21%、Ga:7%、Re:3%、Ag:2%、Zn:2%、Pb:1%、Co:0.4%と大きく変化。国が進める『カザフスタン・レニウム開発計画』を一層推進し、回収が不十分なガリウムの生産を行うことも非常に重要。

    2-3. カザフスタンの鉱業法制等に関する動向:地質鉱物保護委員会/Bulat Uzhkenov委員長
      地質鉱物保護委員会は、エネルギー・鉱物資源省に属し、鉱業法関連の行政手続きや国が行う地質調査に関する事項を所管
       
    • 鉱物資源の非効率な回収が問題となっている選鉱作業等の工程には現行の地下資源法が適用されないため、新たな枠組みの導入が不可欠であり、CIS諸国政府間委員会が策定した地下資源法典を参考として草案を検討中。
    • 現時点で資源埋蔵量を、銅:20年、鉛・亜鉛:20~30年、ボーキサイト:30~40年、金:20~30年と評価しており、減少傾向が著しく将来的な資源枯渇を危惧。
    • 埋蔵量を増やすために地下資源利用者の探鉱努力に期待する一方、地質調査の国家予算を毎年30~40%増額し、2004年:18.4百万USドル、2005年:19.9百万USドルを計上。

    2-4. Kazzink社(亜鉛生産企業)の生産動向:Shtoik Garri社長顧問
      (1) カザフスタン最大の亜鉛生産者
      (2) 拠点は東カザフスタン州Ust’kamenogorsk
      (3) 権益の62.4%をGlencore International AG社(スイス)が所有
      (4) 生産・輸出データ(2004年上期);

    種別 生産量(t) 輸出量(t) 生産量増減(%)
    2003年下期比
    備考
    亜鉛地金 135,619.9 116,324.4 ±0 276,790t(2003年生産量)
    電気鉛 43,406.5 32,727.2 -9  
    銅精鉱 26,288.9 26,299.7 -18 銅金属分
    粗銅 5,831.5 6,299.7 +220  
    電気金 3.9 3.6 +21  
    電気銀 84.8 82.8 +8  

       
    • 2004年の投資額は70百万USドルを、亜鉛地金の生産量は前年同の277千tを予定。
    • 投資の重点対象として、資源埋蔵量を増やすための探鉱作業、選鉱廃さいからの有価金属の回収、新規の鉱山開発、を予定。
    • 主な探鉱開発プロジェクトは、以下のとおり。
    鉱床名 位置 鉱種 埋蔵量(千t) 備考
    Shaimerden Kostanay州 亜鉛 910 <Zn量> 開発準備中(2006年出鉱を目標)
    Ridder-Sokolnom 東Kazakhstan州   探鉱中
    Obruchevskoye 東Kazakhstan州 亜鉛   探鉱中(6年計画)
    Dolinnoye 東Kazakhstan州 亜鉛   同上

    2-5. 鉱業企業における情報開示の重要性:KPMG Janat社/Asel Khairovaマネージャー
       
    • KPMGが2003年に行った世界の鉱業界における財務報告の実態調査“The Current State of Financial Reporting in the Global Mining Industry”の概要を説明し、企業が財務・会計報告として情報を開示することの重要性を指摘。
    • 同調査は国際的鉱山企業50社を対象としたもので、企業の拠点をTraditional Mining Bases(豪、加、南ア、英、米)とEmerging Nations(それ以外の国)に分類して分析。
    • 主に各社のAnnual Reportを題材として、資源埋蔵量、M&A活動、探鉱開発費や生産コストなどに関する情報が開示されているかを調査。
    • 資源埋蔵量を一例として挙げると、Traditional Mining Basesでは38社中34社(89%)が開示しているのに対し、Emerging Nationsで開示しているのは12社中わずか2社(17%)。
    • 資源埋蔵量の報告規定に関する国際標準化(鉱量評価の基準や金属価格の定義など)の動きがある中で、これらデータを全く開示してない鉱山企業はStakeholdersの要望に応えておらず、改善が必要。
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