2004年44号
LMEベースメタル価格急落
10月11日に国際銅研究会速報で、中国の今年7月の消費が対前年同月比で約20%減少したという報道を受けて、LME銅価格が10月13日に200ドル以上急落。この下げ幅は8年振りのもの。ニッケル、亜鉛については、中国の需要堅調にもかかわらず、LME価格は同様に急落。この影響で今週に入り世界の大手非鉄株価も軒並み大幅下落。
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LME(ロンドン金属取引所)のベースメタル価格が10月13日に急落した。銅は11日の3,287ドル/tから244ドル下落し、3,043ドル/tに(下落幅は8年ぶり)、また、ニッケルは3,000ドル近い下げ幅の13,700ドル/t、亜鉛も90ドル値を下げ1,078ドル/tとなり、9月中旬から徐々に値を上げて高水準に達していたベースメタル価格はいずれも大きく値を下げた。英国主要各紙によれば、中国政府が為替再評価を準備している噂が流れたこと、国際銅研究会(ICSG)が7月の中国の銅消費が前年同月比の約20%減であったと報告したことから、需要の牽引者であった中国の銅需要先行き懸念が広がって上海先物取引所で銅が売られ、それを受けてロンドンとニューヨークの金属取引所でも銅を初めとするベースメタルが売られたもの。銅価格は11日に16年ぶりの高値3,287ドル/tに達しており、最近の価格上昇をもたらしたファンド筋が利食い売りに出たという側面もある。今後の見通しについては、現在タイトな需給は今後緩和に向い、値下げ基調となるという予測がある一方で、予測し難いファンド資金の動きに起因する、さらなる価格急変の可能性も指摘されている。
また、このメタル価格の急落を受けて世界の大手非鉄企業の株価は今週に入り、軒並み6~9%程度下落している。JPモルガンによれば、これにより、鉱山会社の過剰な株高が中立な相場に戻ったとコメントしている。
こうした金属価格下落の原因は、ICSGにおける中国需要減少の発表に加え、2005年後半には、概ね需要と供給のバランスが取れるのではないかとするBHP Billiton社の将来予測も市場関係者を驚かせた。この他、米ドルが上昇していることやカナダのGibraltar銅鉱山のようにこれまでの価格高騰で資金を得た鉱山会社による再開発等が積極的に進められているなど資源不足解消の兆しが見られることも上げられている。
また、中国の石油需要が8月に6%の伸びを記録したが、これは、7月の伸び率の半分であり、第2四半期の25%の成長から大きく下げている。これを受けIEAは中国の第4四半期及び2005年の石油需要予測を削減しており、こうした石油需要の動向が他の原材料需要の指標と見るアナリストもいる。
中国のベースメタル地金消費量推移 |
(単位:千t)
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2003年7月 |
2004年7月 |
増減 |
銅 |
277.9 |
224.8 |
-19.1% |
亜鉛 |
158.3 |
177.5 |
12.1% |
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ニッケル |
10.1 |
11.0 |
8.9% |
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ベースメタルのLME価格の推移 |
(単位:$/t)
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9月平均 |
10/8 |
10/11 |
10/12 |
10/13 |
10/14 |
下落率 (11日~14日) |
銅 |
2,895 |
3,232 |
3,287 |
3,204 |
3,043 |
2,860 |
-13.0% |
亜鉛 |
975 |
1,140 |
1,168 |
1,131 |
1,078 |
1,021 |
-12.5% |
ニッケル |
13,277 |
16,595 |
16,500 |
15,715 |
13,700 |
13,550 |
-17.9% |
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主要非鉄企業株価の推移 |
(単位:ポンド)
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10/8 |
10/11 |
10/12 |
10/13 |
10/14 |
下落率 (8日~14日) |
BHP Billiton |
621 |
614 |
598 |
577 |
567 |
-8.7% |
Rio Tinto |
1,555 |
1,541 |
1,503 |
1,456 |
1,462 |
-6.0% |
Anglo American |
1,348 |
1,329 |
1,304 |
1,261 |
1,270 |
-5.8% |
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<参考> (10月11日国際銅研究会プレス発表の概要)
国際銅研究会は、10月11日、世界の銅需給に関する2004年7月速報を発表。2004年1~7月の地金需給は71.0万tの生産不足(前年同期は36.1万t生産不足)となった。2004年1~7月の報告された全在庫の減少は81.1万t。2004年7月の地金需給は0.3万t(季節調整後の数字では3.5万t)の生産不足であった。
2004年1~7月の世界地金消費は前年同月比6.0%増加であった。7月は前月比3.3%減少、季節調整後ではほとんど変化がなかった。7月の中国の地金消費は前年同月比で20.6%も減少、一方、他地域の7月地金消費は、日本18.2%増、米国14.3%増、EU 15か国でさえ7.4%増となっている。
2004年1~7月の世界鉱石生産は前年同月比2.3%増加。鉱石生産は上昇傾向で鉱山の稼働率は7月に94%に達した。対照的に精錬所の稼働率は80%を下回っており、この7か月間ほとんど改善していない。2004年1~7月の世界地金生産は前年同期比2.2%増加(1次0.1%増、2次18.5%増)であった。
2004年9月末在庫は、主要金属取引所(LME、COMEX、SHFE)合計で15.7万t、先月末からは4.1万t減少し、いずれの取引所の在庫も減少。2003年末から在庫レベルは64.9万t減少となった。2004年9月のLME cash price平均は、2,894.9 USドル/tであった。