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国際ニッケル研究会2004年秋季会合が開催―ニッケル供給不足は解消へ向かうと予測―
2004年秋の国際ニッケル研究会が10月4日と5日の2日間、ロンドンの英国貿易産業省会議センターにおいて開催された。加盟国のほか、日本、ベルギー、ポルトガル、スペイン、カナダの各国の代表及び業界団体から約50名が参加し開催された。この中で、ニッケル研究会は、ニッケル需給バランスについて、2003年に4万tの供給不足となっていたが、2004年には不足量は1万t以内に縮小し、2005年には供給不足は解消するだろうと予測した。 |
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国際ニッケル研究会について
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2004年及び2005年の需給予測について
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その他の主な討議事項
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- 研究会の合理化
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- ニッケル産業における環境・社会指標の作成(環境・経済委員会)
- 経済指標…活動指標(生産量、生産能力、売上高)、雇用指標、財務指標、成長指標、競争力指標
- 環境・社会指標…環境指標(ISO14000認証、ニッケルスクラップ利用量、ニッケルの排出)、社会指標(事故件数、訓練時間等)
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- スクラップからのニッケル利用
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- ニッケル開発プロジェクト
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- ニッケルに関する長期間データ
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今後の予定
- 中国におけるマクロ経済状況
- 世界のニッケル市場(INSG)
- 中国におけるニッケル及びステンレス市場
- 世界のニッケル・ラテライト開発
- 鉱山業における中国-豪州間協力
国際ニッケル研究会(INSG)は、安定的なニッケルの需給を確保していく上でニッケルの生産、消費、国際貿易に関する政府間の協議の場を提供し、統計・情報の収集を行うことを目的として、UNCTAD(国連貿易開発会議)の下、1990年5月23日に発足した。研究会事務局はオランダのハーグにある。
現在の加盟は、12か国・1機関である(豪州、キューバ、フィンランド、英、仏、伊、ギリシャ、インドネシア、オランダ、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、EU)。日本は、ニッケル研究会に設立当初から加盟して活動に加わっていたが、予算上の制約から2002年末に脱退したが、経済産業省が要求した2004年度予算が認められ、現在再加盟手続きを急いでいる。
今回は加盟国のうちインドネシア、キューバが欠席し、10か国・1機関が参加、日本はオブザーバとして参加した。その他4か国(ベルギー、ポルトガル、スペイン、カナダ)がオブザーバ参加し、計15か国・1機関から約50人のニッケル関係の政府・民間代表が参加して開催された。
日程は、10月4日に常任委員会、環境・経済委員会、5日に産業顧問パネル、統計委員会の順に開催された。
各国から提出された需給見通しを集計した結果、研究会は、2004年の世界の一次ニッケル地金生産量は、125.4万tと予測した。カナダ及び英国等での増産が予想され、2003年の119.2万t(実績)と比べて5.2%の増加となる。これに対し、2004年のニッケル消費量は126.1万tと予測された。これは中国及び米国等の消費拡大から、前年の123.2万t(実績)と比べて2.4%の増加となる。これにより、2004年の需給バランスは供給不足となるが、その量は1万t以内と予測された。消費量の伸びが少なく見積もられているが、これは、2003年後半から始まったニッケル価格の上昇にあるとされている。
ニッケル地金価格(LME現物)は、2003年初は7,210 USドル/tであったものが、2004年初に17,770 USドル/tの高値を付けた。その後、5月には10,530 USドル/tまで下落したが、9月以降再び急騰し、10月7日に16,595 USドル/tとなった。その後、銅価急落とともに値を下げ、10月19日現在13,300 USドル/tに推移している。
ニッケル価格の値上がりの影響で、アジアを中心としてニッケル使用率の低い、低ニッケル含有ステンレス鋼の生産が増えている。また、世界中でニッケル不使用ステンレス鋼のような代用品の生産が増え、いわゆる「ニッケル離れ」の現象が始まっている。
研究会の2005年の予測では、世界の一次ニッケル生産量は、132.0万tで前年比5.3%上昇が予測された。これは、豪州、ニューカレドニアでの増産を見込んでいる。2005年のニッケル消費量は、131.8万tで前年比4.5%の伸び予想し、これは中国の消費拡大が見込まれている。以上により、研究会の需給予測では、2005年には市場はバランスするとした。この結果、2003年に4万tの不足となっていた需給バランスから大きな転換を迎えることとなる。
ただし、豪州、ニューカレドニア等の増産が予想通り行われなかったり、中国等の消費が予想以上に伸びた場合、供給不足となる可能性も否定できない。
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3研究会(INSGのほか、国際銅研究会、国際鉛亜鉛研究会)の合理化について、3研究会合同タスクフォース委員から検討状況の紹介があり、事務局及び事務局長を統合する一方、予算や各研究会の活動は独立となる方向であること等が紹介された。INSGとしては、2004年4月の常任委員会・総会で既に合理化推進について合意済み。
また、2005年2月に3研究会の合同会議を開催し、事務局の場所(候補地:ロンドン(英)、リスボン(ポルトガル)、ベニス(イタリア))、事務局長の人選方法について議論することを他研究会に提案することとなった。
研究会は、ニッケル産業における環境・社会指標を作成することとなり、鉱山業、製錬・リサイクル業、加工業の業種別に、公表された資料から、次のような指標を記入していく。
最初に、ヨーロッパのニッケル産業における経済データの収集を開始し、その後、世界のニッケル生産の90%を占める15の大手ニッケル生産者のデータを収集する予定。
スクラップからのニッケル利用に関するデータの有効性を向上させるため、研究会は定量的な情報のコンパイルを開始している。ステンレス鋼スクラップ中のニッケルの利用可能性に関する暫定的な推測について発表があった。研究会によれば、スクラップ鋼からのニッケル利用量は、2003年には52.5万tであり、その後年率5%上昇し、2015年には95万tに達するとの予測も発表された。このプロジェクトは、ニッケルの「生産責務」への貢献を目的としており、今後の研究会の環境・経済作業プログラムの鍵となるものである。
European Nickel社から、トルコ西部において開発中のCaldagニッケル開発プロジェクトについて、講演があった(推定可採鉱量37.9百万t@Ni 1.14%、Co 0.05%)。また、Brook Hunt社より、世界における開発中のニッケルプロジェクト及びその市場に与える影響と題する講演があった。これは、2015年までの新規プロジェクトの評価に関するものと、スクラップ利用がニッケル価格に与える影響に関するものとであった。
1990年の設立以来、INSGは、ニッケル市場における詳細な統計を収集し、普及させてきた。このデータベースは、ニッケル鉱石生産、地金生産及びニッケル消費のデータから成り、ニッケルの在庫及び価格のデータについても同様である。しかし、長期間にわたるニッケル市場調査のためには、特に生産・消費・価格のような一貫した歴史的データ・セットが必要である。例えば、スクラップからのニッケル利用可能性を考える場合、ニッケル含有製品の耐用年数が長いので、少なくとも数年間に及ぶデータが必要となる。
2004年4月会合の合意により、事務局は、様々な出典から1950年以降の年ベースの歴史的データの収集を開始した。最善のデータが利用できるように、主要なニッケル生産国及び消費国にデータをレビューするよう申し入れた。
次回のニッケル研究会は、2005年4月にオランダのハーグにおいて、産業顧問パネル、環境・経済委員会、統計委員会、常任委員会及び第15回総会が開催される予定である。
また、INSGの関連セミナーとして「2004 China International Nickel & Cobalt Industry Forum and Manganese & Chromium Seminar」の開催が紹介された。これは中国有色金属工業協会の主催で2004年11月23~25日に中国・海南島で開催されるもので、予定されている主な講演は以下の通り。
