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報告書&レポート

2004年11月18日 金属資源開発調査企画グループ 馬場洋三、北 良行 e-mail: baba-yozo@jogmec.go.jpkita-yoshiyuki@jogmec.go.jp
2004年50号

2005年プラチナは7年ぶり、パラジウムは引き続き供給過剰に

 11月16日 Johnson Mattey社と田中貴金属工業㈱が、「Platinum 2004 Interim Review」に関する記者会見で、2004年のプラチナ需要は前年比1%未満の微増で需給はほぼ拮抗、2005年には7年ぶりの供給過剰に、また、パラジウムは引き続き大幅な供給過剰となり、今後6か月間の価格はプラチナで1オンス760ドルから880ドル、パラジウムで160ドルから250ドルで推移するとの予想を発表した。以下にその概要を報告する。

  1. 2004年の需給概要

    1. プラチナ

      • 2004年のプラチナ需要は前年比で1%未満の増加にとどまるものの、201.3トンの最高記録に達すると予想される。
      • 2004年のプラチナ供給量は200トンに達し、前年の水準から約4%増加すると予想される。
    2. パラジウム

      • パラジウム需要は2004年も引き続き回復基調を辿り、13.5%増の191トンになると予想される。
      • 2004年のパラジウム供給量については、ロシアからの市場放出量が増加し、南アフリカの生産量が引き続き拡大していることから、11%増の222.7トンになると予想される。
    3. ロジウム

      • 2004年のロジウム需要は9%増加して21.2トンになると予想される(自動車触媒回収分相殺済み)。また、供給は22.7トンから21.5トンに減少すると予想される。
    4. ルテニウムとイリジウム

      • 最終需要家からのルテニウム需要は2004年に18.6トンとなり、昨年の19.1トンから落ち込むと予想される。
      • イリジウムについては化学触媒用途の使用量の増加が見込まれ、購入量が5%増加して3.3トンになると予想される。

  2. 鉱山供給

    1. 南アフリカ
       南アフリカでは、労働ストライキにもかかわらず、鉱山・プラントの拡充が順調に進んでいるため、2004年のPGM生産量の伸びは加速すると予想される。2004年のプラチナ供給量は154.9トンとなり、2003年の144トンからの増加率は7%、パラジウム生産量も72.2トンから80トンへの増加が見込まれる。ロジウムの売却量は17.6トンになるとみられる。

    2. ロシア
       ロシアのパラジウム売却量は2004年に計102.6トンとなり、前年の91.7トンから増加すると予想される(スティルウォーターの在庫売却11.7トンを含む)。ノリルスク・ニッケルは生産したパラジウムをすべて売却する予定であり、国家保有の在庫からも大量売却されていると考えられる。プラチナとロジウムについては、ロシアからの出荷量がそれぞれ26.4トンと2.5トンになると予想される。

    3. 北米
       北米のPGM生産量は2004年に大幅に回復すると予想される。プラチナの生産量は9.2トンから11.2トンに増加し、パラジウムの生産量は昨年の29.4トンから増加して31.9トンを上まわると予想される。このようなPGM供給量の増加はほぼ全面的にインコの増産によるものである。

    4. ジンバブエ
       ジンバブエでは、既存鉱山がいずれも予定の稼働率に達していることから、PGMの生産拡大ペースは2004年に減速、プラチナ生産量は0.3トン増の4.7トンになると予想される。

  3. 需要

    1. プラチナ

      1) 自動車触媒
         2004年の自動車触媒産業によるプラチナ購入量は、全世界で7%増加して106.7トンに達すると予想される。欧州では、ディーゼル車の売上増加基調と排ガス規制強化によって、プラチナ需要が高まっている。日本では大型ディーゼル車に対する新たな排ガス規制の導入が間近に迫り、アジアでは小型車の生産台数が増加しており、いずれの動向もプラチナ需要を刺激する要因となっている。もっとも、米国では、パラジウム・ベースの自動車触媒を使用した自動車モデルの比率が高まっていることから、自動車産業のプラチナ購入量は減少すると予想される。

      2) 宝飾品
         宝飾品製造用のプラチナ購入量は2004年に10%減の68.4トンとなり、この7年間の最低水準まで落ち込むと予想される。プラチナ価格の上昇が主因となって、中国宝飾品業界の購入量が急減していることが原因。欧州の需要は横ばいが予想されるが、米国の需要はホワイトゴールドとの競争激化によって減少するであろう。日本の宝飾品業界では、再利用される在庫が減少しているため、プラチナ購入量がわずかながら増加する可能性がある。

      3) 産業用
         産業用プラチナ需要については、アジアのガラス産業からの旺盛な需要等によって、9%増の47.6トンになると予想される。
    2. パラジウム

      1) 自動車触媒
         自動車触媒産業による購入量は2004年に5.5%増加して113.5トンになると予想される。北米の自動車メーカーでは、在庫の取り崩しを引き続き縮小しており、これが全体の購入量を押し上げる主因。日本・その他の地域でも、小型車の増産と排ガス基準の強化により需要の増加が見込まれる。ただし、欧州では、ディーゼル車のシェア拡大により需要の減少が予想される。

      2) 歯科
         歯科用合金による需要は2004年26.1トンとなり、わずか2%の増加にとどまると見られる。

      3) エレクトロニクス
         エレクトロニクス産業による購入量は2004年に2%増加、28.5トンになると予想される。

      4) 宝飾品
         中国の一部の宝飾メーカーが1~4月に急速に進出したため、中国の需要は15.9トン、全体で23トンに達すると予想される。

  4. 価格予測

  5.  プラチナ価格は、2005年度以降は7年ぶりの供給過剰となり、今後6か月間、やや弱含みの1オンス760ドルから880ドルで推移すると予想する。
     パラジウムについては、2005年以降も引き続き大幅な供給過剰で、今後6か月間、引き続き下げ圧力にさらされ、1オンス160ドルから250ドルで推移すると予想する。

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