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銅の鉱山生産動向 ―主要生産者の2004年1~9月の生産実績と今後の生産能力の見通し―
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2003年後半から上昇を続けていた銅価格は、4月に一旦値を下げた後、10月中旬には一時、2004年最高値を更新、その後急落したものの依然高い水準を維持している。背景には、投機資金の為替市場や石油市場へのシフトや中国の経済成長の減速への危惧で一旦値を下げることがあっても、ベースとしては現状でも生産不足が続く銅の需給動向があると言われている。国際銅研究会の需給月報によると、足元の需給(2004年1~8月)では、引き続き需要の増加が生産の増加を上回っているものの、生産不足量は最近3か月で減少し、地金在庫減少のスピードも緩んできている等、需給バランスに変化が現れつつある。2005年には、引き続き供給不足との予測がある一方、再び供給過剰になるとの懸念も出始めており、国際銅市場の中長期的方向性を決定する実際の需給が注目される。 |
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銅鉱山生産:2004年1~9月ではGrasberg鉱山事故の影響残るも、第3四半期は増産傾向
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鉱山・プラント能力:2008年までに鉱山能力が291万トン増強の見込み
2004年1~9月の主要生産者の銅鉱山生産は、合計で約0.5万トンの減産(前年同期比0.08%減)であった。1~9月の生産実績を公表した主要生産者14社のうち、11社が増産、3社が減産となった。第3四半期の単独の生産実績では、14社のうち9社が増産、5社が減産であったものの、合計では約14.8万トンの増産であった。1~9月生産実績では、地すべり事故を起こしたGrasberg鉱山の減産の影響が極めて大きいため、全体の流れを未だ打ち消している形となっている。
(1) 各社の動向
全体として減産に留まっている最大の要因は、Freeport McMoran社(米)のGrasberg鉱山の地すべり事故による減産である。同鉱山では、4月から高品位地域の採掘を開始、6月からは通常生産を開始しているが、低品位と低稼働率の影響もあり、Freeport McMoran社の1~9月の生産量は、前年同期と比べて253,300トン減であった。
2番目に大きな減産としては、Rio Tinto社の135,900トンの減産であった。同社においても、Grasberg鉱山の減産(1~9月で75%減、第3四半期で68%減)の影響が大きく響いた。他にEscondidaが大幅増産(1~9月で19%増、第3四半期で19%増)となっているが、Kennecott Utah Copperでは低品位により減産(1~9月で10%減、第3四半期で18%減)、南アのPalaboraは状況は改善しつつあるが引き続き生産目標以下の状態が続いており、Rio Tinto社全体としては大幅減産となった。
一方、最大の増産は、世界最大の銅生産者であるCodelco社(チリ)の100,000トンの増産であった。これは、Codelco Norte、El Tenienteの増産によるものである。なお、Codelco社の2004年4~9月の業績は、1~6月に記録した最高記録をまた大幅に更新し、過去最高の税引き前利益23.7億USドルを記録している。
2番目に増産幅が多かったのは、BHP Billiton社(英豪)の87,000トンの増産であった。同社の1~9月の銅生産は、前年同期比で13%増、第3四半期だけでも16%増となっている。これは、Escondida、Tintayaがフル生産を回復、Antaminaが通常生産に復帰したことによるものである。
この他、世界第2位の銅生産者であるPhelps Dodge社(米)は、1~9月で22,600トンの増産、第3四半期だけでは16,600トンの増産となっている。なお、Phelps Dodge社の2004年第3四半期の業績は、第2四半期に引き続き好調で、純利益が292.9百万USドルと、前年同期の0.3百万USドルの純損失から大幅に改善している。
Grupo Mexico社(メキシコ)は、約39,000トンの増産であった。これは、傘下のMinera Mexicoが鉱山スト等で第3四半期に1.6%減産したものの、Southern Peru Copper Corporationが第3四半期で4.1%増産したことによるものである。なお、Grupo Mexico社の第3四半期の業績は、第2四半期に引き続き、売り上げが前年同期比62%増、操業利益が237%増加した。
2004年1~9月及び第3四半期の主要銅鉱山生産者の生産実績(精鉱中銅金属量及びSX/EWカソード生産量)は下表のとおりである。
| 主要銅鉱山生産者の生産実績 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(2) 世界全体の鉱山生産動向と今後の見通し
国際銅研究会の11月の月報によれば、2004年1~8月の世界の鉱山生産は、9,408,000トンで前年同期比3.2%増となっている。このことは、2004年1~9月の主要生産者14社の銅鉱山生産としては、地すべり事故の影響が残るGrasberg鉱山の減産の影響が大きかったため、前年同期比0.08%減少にとどまっているものの、世界全体の供給としては、既に明確に増産に向かっていることがわかる。したがって、今後はGrasberg鉱山の生産回復や多くの企業の生産計画により、増産が見込まれることから、最終的には2004年通期では増産になることが見込まれる。
国際銅研究会は、四半期ごとに改定している世界の銅鉱山・プラント一覧の2004年10月版を発表した。これは、本年7月から10月までに発表された変化を反映したものである。
| 2008年までに計画されている世界の銅鉱山・プラント能力 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2004年から2008年までの4年間の鉱山生産能力は、291万トン増加する(年率4.4%増加する)ことが見込まれ、精鉱で165万トン、SX-EWで126万トン、それぞれ精鉱:年3.1%増、SX-EW:年9.3%増となる見込みである。これは同じ期間の銅消費の楽観的予測を十分カバーできる量である。
2004年から2008年までの4年間の溶錬生産能力は、2005年に63万トン増加しその後増加幅は減少し2008年には0トンとなるものの、4年間合計では121万トン増加する見込みである。これは年率では1.9%増加することとなり、電解精錬の増加(約133万トン)をやや下回り、精鉱の供給能力増加よりはかなり低くなっている。しかしながら、現在約80%と低い溶錬稼働率を引き上げることで溶錬のボトルネックは回避できると考えられる。
2004年から2008年までの4年間の精錬生産能力は、約258万トン増加することが見込まれ、電気精錬で133万トン、EWで127万トン、それぞれ電気精錬:年2.1%増、EW:年9.0%増となる見込みである。
これらの計画された能力拡張には、現存する鉱山・プラントの管理、メインテナンス、一時的生産削減等で変動する部分(Swing Capacity)は含まれていない。国際銅研究会の調査では、この変動部分は鉱山で11.8万トンあり、溶錬で40.0万トン、精錬で54.0万トンの能力が使用されていない状況にあるとしている。
前回の7月版の一覧と比較して、鉱山、溶錬、精錬のすべての生産能力において、2004年から2008年までの4年間の生産能力引き上げが上方修正され、かつSX-EW以外の全ての生産能力の2004年から2005年にかけての増加幅が増えていることから、生産者の間において、前回の分析で示した需給への警戒感は薄れている模様である。


