報告書&レポート
2004年11月24日
ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail: kamura@jogmec.org.uk
2004年52号
ベースメタルの国際市場と需給動向(2004年10月)
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国際市場
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需給動向
10月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が4か月連続で上昇して4.1%増の3,012.24USドル/トン、ニッケルは下落傾向から反転し8.5%増の14,410.71USドル/トン、亜鉛も9.2%増と急上昇し1,064.95USドル/トンであった。銅、ニッケル、亜鉛ともに9月中旬から価格が上昇し、10月中旬に銅、亜鉛は2004年最高値を更新したが、中国の需要減少の懸念から一時大幅に急落、その後再び回復しつつある。こうした動きの背景として、需給が引き続きタイトであるという状況の中で、価格変動の主要因はファンド資金の流入・流出によるものといわれている。2003年後半から2004年前半にかけてのベースメタル価格の上昇をもたらしたファンド資金は、8月以降、金属から石油に流れたとの観測も流れたが、金属から完全に手を引いたわけではなく、9月中旬から石油価格の上昇につられてベースメタル価格も上昇、10月中旬このファンド資金の利食い等により価格は急落した。今後はこのタイトな需給状況がどこまで続くか、中国のベースメタル需要やファンド資金の動きも絡んで、現在の価格水準の急変の可能性も指摘されている。
平均価格(cash settlement, US$/t) | 在庫(t) | ||||||
2003年 | 2004年9月 | 2004年10月 | 前月比 | 2004.9.30 | 2004.10.29 | 増減 | |
Cu | 1,778.41 | 2,894.86 | 3,012.24 | +4.1% | 93,550 | 78,850 | -14,700 |
Ni | 9,625.53 | 13,277.27 | 14,410.71 | +8.5% | 14,112 | 14,142 | +30 |
Zn | 826.90 | 975.18 | 1,064.95 | +9.2% | 736,600 | 705,675 | -30,925 |
LME月平均価格の推移 |
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鉱山生産 | 精錬生産 | 消費 | 需給バランス (t) |
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1~8月(t) | 前年比 | 1~8月(t) | 前年比 | 1~8月(t) | 前年比 | ||
Cu | 9,408,300 | +3.2% | 10,288,000 | +2.7% | 10,931,100 | +5.9% | -643,000 |
Ni | 845,500 | +1.8% | 821,700 | +3.8% | 824,900 | +1.6% | -3,200 |
Zn | 6,380,000 | +0.9% | 6,758,000 | +3.9% | 6,923,000 | +5.4% | -165,000 |
(1) | 銅 |
【需要】 国別の1~8月需要量は、最大消費国中国が6.9%増、2位米国10.0%増、3位日本4.8%増、4位ドイツ2.6%増と引き続き好調で、世界計では前年同期比5.9%増の10,931.1千トンであった。世界の需要を月別に見ると、3~5月が最も旺盛で1,400千トン/月以上あったが、5~7月は1,300千トン台に戻り、8月は1,272千トンであった。前月急減した注目の中国の需要動向であるが、8月の消費量は245.7千トンで、前月比9.1%増と回復したが、前年同月比では5.5%減と引き続き減少傾向にある。 |
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【供給】 1~8月期の鉱山生産は3.2%増の9,408.3千トンであった。月別の鉱山生産を見ると、1~2月は月産1,100千トン前後であったが、その後生産量を徐々に伸ばし、5月以降は1,200千トン台となり、7月は2004年最高の1,256千トン、8月は1,247.8千トンとなった。鉱山の設備稼働率も1月の79.9%から6~7月は93%台まで上昇、8月は92.4%となった。1~8月の国別生産量は、最大生産国チリが273.3千トン増、4位ペルーが114.4千トン増となり、3位インドネシアの291.1千トン減を補った。 1~8月期の精錬生産は2.7%増の10,288千トンであった。月別の精錬生産は徐々に上昇してきており8月は1,336.4千トンとなっているが、稼働率は80%台を推移している。1~8月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が1.6%減、3位日本が1.9%減、4位米国が2.5%減であったものの、2位中国が13.6%増、5位ロシアが2.9%増、6位ドイツが5.3%増となっており、全体では265.7千トン増加し2.7%増となった。 |
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【需給バランス】 1~8月期は643千トンの供給不足であった。2月から4月にかけて月毎に100千トン台の供給不足が発生したが、その後供給不足量は減少し、7月には供給超過に転じ、8月は64千トンの供給超過となった。ただし、季節調整後の需給バランスでは不足量は減少しつつも未だに供給不足が続いている。 |
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【価格】 10月初めのLME銅価格は10月1日の3,110USドル/トンから更に上昇、10月11日には3,287USドルと2004年最高値を更新した直後に急落、10月14日には2,860USドルまで下がった後、月末まで2,900USドル前後を推移した。 |
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(2) | ニッケル |
【需要】 1~8月の消費量は1.6%増の824.9千トンであった。消費量第2位の中国が10.5%増、3位米国が1.3%増、4位のドイツが0.1%増、6位韓国が13.0%増となって、最大消費国日本の1.0%減、5位台湾の3.9%減を補った。2003年後半からの高値の影響で、ニッケル低含有ステンレスの生産が主にアジアで増加し、またニッケルを含まないステンレス生産も各地で増加、消費を抑制している。国際ニッケル研究会は2004年の世界のニッケル消費量は2.4%増の1,261.6千トン、2005年は4.5%増の1,318.4千トンと予測。 |
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【供給】 1~8月の鉱山生産は1.8%増の845.5千トンであった。最大生産国ロシアは前年並み、2位豪州は2.6%減であったが、3位カナダの10.9%増、5位ニューカレドニアの8.7%増、7位コロンビアの2.3%増、8位中国の12.1%増が寄与した。 1~8月の一次精錬生産は3.8%増の821.7千トンであった。最大生産国ロシアは0.2%増に留まったが、2位日本が2.3%増、4位カナダが21.5%増、6位中国が21.9%増となり、3位豪州の9.2%減、5位ノルウェーの9.4%減を補った。2004年の世界生産量は5.2%増の1,253.9千トンに、2005年は5.3%増の1,319.8千トンと国際ニッケル研究会は予測。 |
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【需給バランス】 1~8月の需給は微量(3,200トン)の供給不足であった。高値の影響で消費が抑制され、供給不足量は2003年の40.1千トンから2004年は7.7千トンとなり、2005年は1.4千トンの供給超過と、ほぼ需給がバランスすると国際ニッケル研究会は予測。 |
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【価格】 15,000USドル/トン台からスタートした10月のLMEニッケル価格は、10月6日に16,000USドルを突破、10月8日に16,595USドルを記録した。その後10月12日以降急落し、10月13日には13,000USドル台に下落、10月26日に12,000USドル台に一時入った以外は13,000USドル台を維持した。 |
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(3) | 亜鉛 |
【需要】 1~8月の需要量は5.4%増の6,923千トンであった。最大消費国の中国が10.4%増、2位米国が13.5%増と好調、3位日本が1.5%増となり、4位ドイツの7.8%減、5位韓国の3.7%減を補った。国際鉛亜鉛研究会は2004年世界の地金消費量を4.8%増の10.342千トン、2005年は4.3%増の10,784千トンと予測、この中で注目の中国の需要増を2004年10.4%増、2005年11.3%増と予測している。 |
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【供給】 1~8月の鉱山生産は、最大生産国の中国が14.7%増、4位カナダが2.5%増、6位メキシコが2.5%増であったが、2位豪州が14.5%減、3位ペルーが7.9%減、5位米国が7.6%減とふるわず、世界合計で0.9%増の6,380千トンに留まった。国際鉛亜鉛研究会は2004年の世界鉱山生産を2.1%増の9,773千トン、2005年は生産量が初めて1,000万トンを超え、5.1%増の10,270千トンと予測している。 1~8月の精錬生産は、最大生産国の中国が13.9%増、2位カナダが2.5%増、4位韓国が4.7%増、6位スペインが4.3%増となり、3位日本の2.8%減、5位豪州の18.5%減を補い、全体で3.9%増の6,758千トンとなった。国際鉛亜鉛研究会は世界の精錬生産について、2004年は3.1%増の10,138千トン、2005年は4.9%増の10.631千トンと予測している。 |
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【需給バランス】 1~8月の需給バランスは165千トンの供給不足となった。LMEの在庫量は、10月29日現在706.7千トンと依然として高水準にあるものの減少してきている。国際鉛亜鉛研究会は2005年まで供給不足は続くとし、不足量として2004年は157千トン、2005年は101千トンと予測している。 |
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【価格】 10月のLME亜鉛価格は、10月4日に1,100USドル/トン台を突破、10月11日には2004年最高値の1,168USドルを記録した後下落し始め、10月13日には1,100USドル台を割り込んだものの、以降は1,000USドル台を維持した。 |
