報告書&レポート
豪州・鉱業管理規程の進展
はじめに
- 世界的な資源生産国である豪州において、鉱業企業の活動を支援する基本原則やガイドラインからなる管理規程が策定されている。これらには、JORC規程(探査結果/鉱物資源量/鉱石埋蔵量)、VALMIN規程(技術報告作成ガイドライン)、環境管理規程等があり企業活動を支援している。現在、JORC規程、VALMIN規程については2004年版の改定作業がほぼ終了している。また豪州鉱業協会(MCA1)は、10月下旬に、環境管理規程に代わる持続可能な開発に配慮した新たな基本原則「永続すべき価値(Enduring Value)」を発表した。
これらの規程の目的は、企業活動における信頼性のある情報公開の促進、自主的な企業統治の維持、持続可能な開発に即した事業の支援等を行うとともに、不正を防止することにある。これらの規程は、法律で定められた義務的な遵守事項と異なり、企業、業界自らが策定する自主規程である。昨今の鉱業を取り巻く経営環境の複雑さが増す中で法制度が十分に対応するには限界があり、業界自らが、企業統治、グッドプラクティスを維持する必要性は高まっている。また鉱業のグローバル化、開発途上国等における事業においてこうした規程を国際的に運用し、標準化する必要性も高まっている。
-
JORC規程
-
VALMIN規程(2004)
-
環境管理規程と「永続すべき価値」
(探査結果、鉱物資源量、鉱石埋蔵量の報告に関する大洋州規程)2
管理団体:AusIMM3、AIG4、MCA
認定証券取引所:豪州証券取引所(ASX)、ニュージーランド証券取引所(NZX)
バージョン:現行は1998年版、2004年版策定中
対象鉱種:鉱物資源(石炭、ダイヤモンド、工業原料鉱物を含む。石油は除く)
構成(2004年版):主文44条
関連ウエブ:http://www.jorc.org/main.php
JORC規程は、探査活動によって得られる探査結果、鉱物資源量、鉱石埋蔵量の報告方法についての基本原則をまとめたもので、ASX及びNZXの上場基準として採用されている。1992年の初版が発表されてから、1996年、1999年に改正が行われ、現在1999年版が使用されている。米国、カナダ、欧州、南ア等においては、豪州JORC規程に準拠した各国規程の策定作業及び一部の証券取引所の上場基準への取込みが行われており、国際標準化が進展している。
2004年版の改定作業は、すでにASX及び公開のヒアリングが終了しており、最終版がまもなく発表されることとなっている。2004年版の改定では、海外専門家認定制度(ROPO5)の導入、ダイヤモンド、石炭、工業原料鉱物についての規程の追加・拡充が図られた。これまで探査結果、鉱物資源量、鉱石埋蔵量の報告を作成できる資格保有者は、豪州の認定団体会員のみであったが、ROPOでは、新たに米国、カナダ、欧州、南ア等の認定団体会員も資格保有者として報告できることとなっている。またROPOはASX、NZXの上場基準にも取込まれている。
(独立専門家報告のための鉱物石油資源資産の技術評価・査定規程)6
管理団体:AusIMM(2004年版よりAIG、MCAも加わる)
バージョン:現行1998年版。2004年版策定中。
対象鉱種:鉱物資源、石油資源
構成(2004年版):主文101条、キーワード40語。
関係ウエブ:http://www.ausimm.com/codes/valmin.asp
VALMIN規程は、石油及び鉱物資源に関連する資産・証券の評価・査定を行うための公開報告書の作成のための基本原則を示すものである。VALMIN規程には、報告書の目的、種類、報告書作成のポイント(重要性、資格保有、独立性、透明性)、作成者(資格保有者、倫理条項)、技術的内容等について遵守するべき内容が述べられている。対象となる報告には、公開プロスペクタス(新規上場時の事業計画、資産等についての投資家向け発起書)、売買収時の資産・証券の評価・査定に関する技術報告書(技術評価報告書、技術査定報告書)等がある。
報告書の執筆を担当する専門家、スペシャリスト(特定分野に関し専門家をサポートする)は、当該分野での直近10年以上の経験、知識及び能力、発注者からの独立した中立的立場、報告書への署名が求められるとともに、担当部分における執筆責任があり、所属団体の倫理規程に従って業務を行うこととなっている。また、専門家、スペシャリストの必要要件の一つは、業界内での世評(reputation)である。もし不正が行われたり、報告内容に疑義が生じた場合、所属団体の倫理委員会で審査され、その結果は関係団体の発行する出版物で公表される。JORC規程の資格保有者と同様に、個々の能力、経験について、業界内の世評が、その個人が適切かどうかを判断する一つの指標となっている。
| ・ | 豪州鉱業環境管理規程(2000)7 |
| 管理団体:MCA バージョン:現行2000年版 対象企業:MCA加盟企業で署名企業(非加盟企業も署名することは可能) 構成(2000年版):基本原則7項目 関連ウエブ:http://www.minerals.org.au/environment/code |
|
| ・ | 永続すべき価値(2004)(持続可能な開発のための豪州鉱業フレームワーク)8 |
| 管理団体:MCA バージョン:現行2004年版(2004年10月発表) 対象企業:MCA加盟企業(主に鉱物資源開発企業、加盟企業には義務的に適用) 構成(2004年版):基本原則10、サブ原則46項目はICMMが定める持続可能な開発のためのイニシアチブの基に、詳細事項(エレメント)を規定 関連ウエブ:http://www.minerals.org.au/enduringvalue |
環境管理規程は、企業が環境及び地域社会に対して示すべき基本原則を規定し、その実行性、パフォーマンスを公開環境年次報告書によって発表するとともに、3年ごとに規程実行調査報告書を作成し、MCAに設置された外部諮問委員会が審査する。現在2000年版が使用されている。
これに対してMCAは、2004年10月に、より持続可能な開発に配慮した新たな基本原則として、「永続すべき価値」を発表した。国際的には、ICMMが「持続可能な開発のためのフレームワーク」9を発表しており、「永続すべき価値」は、ICMMの10項目の基本原則とその中のサブ原則を採用し、この中に詳細な独自のガイドラインを策定した。ICMMの基本原則は、企業統治、企業意思決定、人権、リスク管理、労働安全健康、環境、生物多様性、マテリアル管理、地域社会の発展、第三者検証からなり、より持続可能な開発に即したものとなっている。MCAでは、長期的には環境管理規程の改定は行わず、「永続すべき価値」に集約していく方針である。
MCAの会員は「永続すべき価値」に従うことが義務付けられており、会員は毎年公開報告書を作成しなければならない。公開報告書は、グローバルレポーティングイニシアチブ(GRI)10のサステナビリティリポーティングガイドライン(2002)11又は鉱業及び金属産業向け補足文書12に準拠するか、独自の書式に拠ることとなっている。また、その適用範囲は、加盟企業、その系列企業ならびにサプライチェーンに及ぶとなっている。
| 1 | Minerals Council of Australia(MCA) | |
| 2 | Australasian Code for Reporting of Exploration Results, Mineral Resources and Ore reserves(The JORC Code) | |
| 3 | Australasian Institute of Mining and Metallurgy(AusIMM) | |
| 4 | Australian Institute of Geoscientists(AIG) | |
| 5 | Recognised Overseas Professional Organisations(ROPO) | |
| 6 | Code for the Technical Assessment and Valuation of Mineral and Petroleum Assets for Independent Expert Reports(THE VALMIN CODE) | |
| 7 | Australian Minerals Industry, Code for Environment Management 2000 | |
| 8 | Enduring Value:Australian Minerals Industry Framework for Sustainable Development | |
| 9 | http://www.icmm.com/corporate_governance.php | |
| 10 | Global Reporting Initiative http://www.globalreporting.org | |
| 11 | 2002 Sustainable Reporting Guideline | |
| 12 | Mining and Metals Sector Supplement |


