報告書&レポート
2005年1月27日
ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail: kamura@jogmec.org.uk
2005年04号
ベースメタルの国際市場と需給動向(2004年12月)
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国際市場
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需給動向
12月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が6か月連続で上昇して0.7%増の3,145.45 USドル/t、ニッケルは2か月連続で下落し2.0%減の13,775.71 USドル/t、亜鉛は3か月連続で上昇し、7.7%増と急上昇の1,180.21 USドル/tであった。銅、ニッケル、亜鉛ともに2004年9月中旬から価格が上昇し、10月中旬に銅、亜鉛は2004年最高値を更新した直後に一旦急落した後再び上昇、ニッケルは乱高下を繰り返している。こうした価格変動の主要因としては、金属市場の需給がタイトという状況で、ファンド資金の流出入の影響が大きいといわれている。ファンド資金は、2004年8月以降、一旦金属市場から流出したが、9月中旬から金属市場へ再流入、10月中旬に利食い等により一時流出したものの、11月の米大統領選後のドル安により金属市場に再び流入、金属価格全般を高いレベルにしている。2005年に入って多くの金属価格が急落するなど不安定な動きを続けつつも、しばらくは高い価格レベルが継続するとの見方が強い。今後は、タイトな需給状況に一部緩和の兆しが見られる中、中国の金属需要や為替等の他の市場動向の影響を受けたファンド資金の動き次第では、現在の価格水準が急変する可能性もある。
平均価格(cash settlement, USドル/t) | 在庫(t) | ||||||
2003年 | 2004年11月 | 2004年12月 | 前月比 | 2004.11.30 | 2004.12.31 | 増減 | |
Cu | 1,778.41 | 3,122.80 | 3,145.45 | +0.7% | 59,975 | 48,875 | -11,100 |
Ni | 9,625.53 | 14,053.41 | 13,775.71 | -2.0% | 17,004 | 20,898 | +3,894 |
Zn | 826.90 | 1,095.64 | 1,180.21 | +7.7% | 673,975 | 628,625 | -45,350 |
LME平均価格の推移 |
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鉱山生産 | 精錬生産 | 消費 | 需給バランス (t) |
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1~10月(t) | 前年比 | 1~10月(t) | 前年比 | 1~10月(t) | 前年比 | ||
Cu | 11,919,500 | +4.5% | 13,004,300 | +3.1% | 13,761,500 | +5.7% | -757,200 |
Ni | 1,078,200 | +2.8% | 1,034,100 | +4.0% | 1,033,100 | +1.4% | +1,000 |
Zn | 8,015,000 | +1.0% | 8,440,000 | +3.4% | 8,647,000 | +5.5% | -207,000 |
(1) | 銅 |
【需要】 国別の1~10月需要量は、最大消費国中国が5.0%増、2位米国7.0%増、3位日本8.0%増、4位ドイツ4.8%増で、世界計では前年同期比5.7%増の13 761.5千tであった。世界の需要を月別に見ると、3~5月は1,400千t/月以上あったが、5~7月は1,300千t台、8月は1,200千t台まで下がったものの、9月は1,403.5千tと再上昇したが、10月は1,347.7千tと下がった。注目の中国の需要動向であるが、8・9月と増加に転じていたが、10月は231.5千tで前月比18.3%減と急減した(但し、対前年同期比では1.6%増)。米国も10月は前月比6.3%減であった。 |
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【供給】 1~10月期の鉱山生産は4.5%増の11,919.5千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2004年は生産量を徐々に伸ばしている。5月以降は1,200千t台に達し、8月には1,247.1千tを記録した後、9月は一旦やや減少したが、10月は1,297.7千tと急増、2004年最高値を更新した。鉱山の設備稼働率も6月以降93%前後と高いレベルで推移、10月は95.0%まで上昇した。1~10月の国別生産量は、最大生産国チリが392.9千t増(+9.7%)、4位ペルーが151.1千t増(+21.7%)と大幅増産、2位米国0.8%増、5位豪州1.8%増で、3位インドネシアの282.6千t減(-30.5%)を補った。 1~10月期の精錬生産は3.1%増の13,004.3千tであった。月別の精錬生産は徐々に上昇、9月は一旦減少したが、10月は1,357.3千tを記録した。稼働率は80%台で徐々に上昇していたが、10月は81.2%と前月よりやや下がっている。1~10月の国別生産量は、最大生産国のチリ(SX-EW生産を含む、以下同様)が0.9%減、3位日本が2.3%減、4位米国が1.7%減であったものの、2位中国が11.8%増、5位ロシアが5.3%増、6位ドイツが7.7%増となっており、全体では368.8千t増加(+3.1%)となった。 |
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【需給バランス】 1~10月期は757.2千tの供給不足であった。2月から4月にかけて月毎に100千t台の供給不足が発生したが、その後供給不足量は減少し、7月4千t、8月69千tの供給超過となっていた。9月は一旦68千tの供給不足となったが、10月は再び10千tの供給超過となり、季節調整後の需給バランスでは、2004年で初めて供給超過(36千t)となった。 |
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【価格】 12月のLME銅価格は、12月1日の3,246.5 USドル/tからスタートしたあと下降し、12月8・9日には3,000 USドルを割り込んだのち反転、12月10日には3,000 USドル台、12月14日には3,100 USドル台を突破し上昇、12月31日には10月中旬の2004年最高値(3,287 USドル)をうかがうレベル3,279.5 USドルで終了した。 |
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(2) | ニッケル |
【需要】 1~10月の消費量は1.4%増の1,033.1千tであった。最大消費国の日本が1.6%増、2位中国が12.3%と大幅増、3位米国が0.1%と微増、4位ドイツが1.8%増、6位韓国が9.5%増というように、5位台湾が3.7%減少した以外、殆どの主要国で消費が増加した。2003年後半からの高値の影響が継続し、ニッケル低含有ステンレスの生産が主にアジアで増加し、ニッケルを含まないステンレス生産も各地で増加するなど、ニッケル消費の伸びが抑制される傾向が続いている。 |
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【供給】 1~10月の鉱山生産は2.8%増の1,078.2千tであった。最大生産国のロシアは前年並み、2位豪州は2.2%減であったが、3位カナダが17.0%増と急増、4位インドネシアが1.8%増、5位ニューカレドニアが7.2%増となり全体としては増加した。 1~10月の一次精錬生産は4.0%増の1,034.1千tであった。最大生産国のロシアが0.1%減とわずかに減少したほか、3位豪州が8.0%減、5位ノルウェーが10.8%減となったものの、2位日本が0.7%増、4位カナダが26.7%増と大幅増、6位中国も17.9%増と大幅に増え、減産国の減産分を補い全体としては増加した。 |
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【需給バランス】 1~10月の需給は微量(1,000t)の供給超過となった。高値の影響で消費が抑制され、2004年は供給超過となる可能性も出てきている。 |
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【価格】 12月1日の14,260 USドル/tからスタートしたLMEニッケル価格はその後13,000 USドル台に下落し、12月8~14日には12,000 USドル台となったが、その後反転上昇し12月15日に13,000 USドル台を回復、12月20日は14,000 USドル台を突破、12月31日には15,205 USドルとなった。 |
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(3) | 亜鉛 |
【需要】 1~10月の需要量は5.5%増の8,647千tであった。最大消費国の中国が10.4%増、2位米国が10.9%増、3位日本が1.0%増、5位韓国が3.5%増と好調で、4位ドイツの5.4%減などを補った。 |
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【供給】 1~10月の鉱山生産は、最大生産国の中国が11.8%増、4位カナダが3.2%増、6位メキシコが2.8%増であったが、2位豪州が12.1%減、3位ペルーが7.1%減、5位米国が5.8%減とふるわず、世界合計で1.0%増の8,015千tに止まった。 1~10月の精錬生産は、最大生産国の中国が10.3%増、2位カナダが4.4%増、4位韓国が4.1%増、6位スペインが3.2%増となり、3位日本の2.0%減、5位豪州の15.6%減を補い、全体で3.4%増の8,440千tとなった。 |
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【需給バランス】 1~10月の需給バランスは207千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、12月31日現在628.6千tとなり、前月までの1か月当たり約3万tずつ減少というペースが加速し前月と比べて4.5万t減少している。供給不足はしばらく続く見込み。 |
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【価格】 12月のLME亜鉛価格は、12月2日に1,176 USドル/tと2004年最高値を更新した後、若干下落したものの高いレベルで推移し、中旬から再び上昇して最高値を更新し続け、12月20日には1,200 USドル台を突破、12月23日に一旦下落した以外は1,200 USドル台を維持し、12月31日には1,270 USドルと2004年最高値を記録して終了した。 |
