報告書&レポート
2005年2月10日
ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail: kamura@jogmec.org.uk
2005年07号
世界の鉛亜鉛需給の現状
国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)は、2月3日、2004年の世界の鉛亜鉛需給の速報を発表した。金属市場全般の需給がタイトという状況で、鉛、亜鉛についても研究会の秋の年次総会時の予測を大幅に上回る供給不足となった。 |
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鉛
- 1・1
- 概況
- 研究会がまとめた2004年西側世界の鉛地金需給は、23.6万tの供給不足となり、1973年以来最大の供給不足となった。
- 2004年の世界の鉛鉱石生産は2003年と同様の水準に止まった。
- 2004年の中国の鉛地金生産は13.2%増と大幅に増加し、米国8.5%減、豪州11.7%減等多くの国で減少したものの、世界全体では0.6%増となった。
- 2004年の世界の鉛地金需要は、主に中国、欧州、東南アジアにおける増加により、3.4%増加した。
- 中国の鉛精鉱輸入量(鉛純分)は22%増加し、45.7万tに達した。
- 西側世界の鉛地金生産中のリサイクル材料からの生産割合は、4%増えて69%となった。
- LME在庫と生産者在庫は、それぞれ6.8万t、1.8万t減少した。
- 1・2
- 需要
- 2004年の世界の鉛地金需要は3.4%増加した。米国、日本で減少したものの、中国、欧州、東南アジアの増加がこれを上回った。
- 欧州では、2003年に大幅に減少したが、主にチェコやスペインの増加により需要が5.5%増加した。これは、中国の鉛需要が6.2%増加していることを背景に、輸出用の自動車や産業向けバッテリー生産が急増しているためである。中国の鉛地金需要は、過去4年間で倍増以上となった。
- 反対に米国では、バッテリー工場が低コストのメキシコや中国に移転し続けていることにより1%減少し、150万tを下回った。これは1999年のピークから15%減となった。
- 1・3
- 供給
(1) 鉱石- 2004年の世界の鉛鉱石生産は0.5%減少した。米国の減産はアイルランドの増産でほぼ相殺され、他の生産国は2003年と同様の生産レベルに止まった。
- 3大生産国、中国、豪州、米国の2004年の鉱石生産は世界の3分の2を占め、中国単独のシェアは31%となった。
(2) 地金
- 2004年の世界の鉛地金生産は0.6%と微増となった。中国が13.2%増と大幅に増加したことにより、欧州、米国、豪州の減少を相殺した。
- 英仏による2003年の精錬能力の大幅な削減の後、独では増加したにもかかわらず、英国での更なる削減等により、欧州の生産は1%減少した。
- 米国の8.5%減の主要因は、2004年11月のDoe RunによるGlover操業(年産12.5万t相当)の閉鎖であり、豪州の生産削減の主要因は、2003年9月のZinifexのCockle Creekプラントの操業停止である。
- モロッコの生産急減は、Oued-el-HeimerにおけるZellidjaの鉛プラントにおける工業的・技術的問題によるもので、カナダ、メキシコ、カザフスタン、ペルーでは増産した。
- 中国の地金純輸出は、2003年より1%減と微減の40.4万tであった。
- 1・4
- 価格
- 2004年のLMEの鉛のCash Settlement価格と3か月先物価格は、各々平均888 USドル、851 USドルで、2003年よりそれぞれ72.3%、64.4%上昇した。
- 鉛のCash Settlement価格の最高値は12月31日に記録した1,056 USドルで、最低値は4月21日の696 USドルであった。
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亜鉛
- 2・1
- 概況
- 過去3年間にわたる大幅な供給超過が続いた西側亜鉛市場は、研究会がまとめた2004年西側世界の需給速報では、25万t弱の供給不足となった。
- 2004年の世界の亜鉛地金需要は、中国や米国における急増により5.5%増加した。
- 2004年の世界の亜鉛鉱石生産では、豪州・ペルーで大幅減産となったが、中国の大幅増産がこれを上回り、全体としては1.1%増加した。
- 中国の亜鉛精鉱輸入量(亜鉛純分)は17%減少した。
- 2004年の世界の亜鉛地金生産は、中国、カナダ、カザフスタン、ナミビアの増加により2.7%増加した。
- 中国の亜鉛地金輸入は1989年以来初めて輸出を上回った。
- 2004年末のLME倉庫の亜鉛地金在庫は、2003年末から11.1万t減少して62.9万tとなった。生産者在庫は7.1万t減少した。
- 2・2
- 需要
- 2004年の亜鉛地金需要は、中国の10.4%増、米国の11.1%増などにより、全体としては5.5%増加した。
- 中国市場の成長は、道路、鉄道、発電所、送電のようなインフラ・プロジェクトにおける亜鉛めっき鋼材使用のさらなる増加によるもので、住宅、自動車、家電部門の拡大も好影響となっている。
- インド、インドネシア、韓国、台湾、トルコなどの多くのアジア諸国でも亜鉛需要は増加している。
- 米国の需要は、亜鉛めっき鋼材の出荷急増によるもので、11.1%増と2000年以降最も高いレベルに回復した。
- 欧州では、ドイツ、イタリアの増加により1.4%増加した。
- 2・3
- 供給
(1) 鉱石- 2004年の世界の亜鉛鉱石生産は1.1%増加した。
- 最大の増産は中国で10.6%増加した。ブラジル、インド、アイルランド、カザフスタン、ロシア、ナミビア、スウェーデン、タイにおいても増産となった。
- これら増産は、2003年11月のTeck ComincoのLennard Shelf鉱山の閉鎖等による豪州の減産、Antamina鉱山の減産等によるペルーの減産、米国の減産を相殺した。
- 中国の亜鉛精鉱輸入量(亜鉛純分)は17%減少し30.8万tであった。
(2) 地金
- 2004年の世界の亜鉛地金生産は2.7%増加し、初めて1千万tを超えた。
- ナミビアにおけるAnglo AmericanのSkorpion操業が初めて1年間フル生産となり、カザフスタンのKazakhmyのBalkhash精錬所の増産とともに世界の増産に貢献した。中国の地金生産は、Fukang Zinc、King Stone、Shuikoushan、Shinli、Kunmingなど多くのプラントにおける拡張により6.8%増加した。ブルガリア、カナダ、フィンランド、韓国、メキシコ、米国も増産となった。
- 目立った生産縮小としては、2003年9月のCockle Creekプラントの操業停止による豪州の減産と、Chelyabinsk精錬所の大幅減産があったロシアがあげられる。
- 2004年の中国の亜鉛地金輸入は、輸出を1.5万t上回り、中国は1989年以来初めて純輸入者となった(1990~2003年の中国の亜鉛地金純輸出量は、合計4百万t以上)。
- 2・4
- 価格
- 2004年のLMEの亜鉛のCash Settlement価格は平均1,048 USドルと2003年と比べて26.5%上昇、3か月先物価格は平均1,064 USドルと26.2%上昇した。
- 亜鉛のCash Settlement価格の最高値は12月31日に記録した1,270 USドルで、最低値は9月7日の943 USドルであった。
西側世界の鉛地金需給 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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鉛の需要と供給 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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出典:ILZSG 注)数字は鉛純分、2004年の数字は速報値。 |
西側世界の亜鉛地金需給 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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亜鉛の需要と供給 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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出典:ILZSG 注)数字は亜鉛純分、2004年の数字は速報値。 |