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報告書&レポート

2005年2月17日 キャンベラ事務所 神谷夏実 e-mail: mkamiya@cyberone.com.au
2005年08号

豪州・VALMIN規程(2004)の紹介

 はじめに

     豪州は世界的な鉱業国であると同時に、鉱業活動を支援する管理システムの開発、運用を行っている。こうした鉱業の管理システムには、JORC規程(鉱物資源量、鉱石埋蔵量)、環境管理規程、VALMIN規程(技術報告作成ガイドライン)等があり、豪州国内のみならず、国際的にも導入、運用が進んでいる。こうした管理システムのうち、VALMIN規程(2004)の改定作業が進められており、以下にその概要を報告する。VALMIN規程の正式名称は、「豪州鉱物石油資源資産に係る技術評価査定のための独立専門家報告作成規程」1である。

  1. VALMIN規程の概要

  2. (1) VALMIN規程の主旨
     VALMIN規程は、資源開発を行う企業が公開用の技術報告を作成する際、遵守するべき内容を解説したガイドラインである。このために、報告書の目的、種類、報告書作成のポイント(重要性、独立性、透明性、機密保持等)、作成者(資格保有者、倫理条項)、技術的内容(資源量、埋蔵量、資本コスト、操業コスト、ファイナンス等)等について、報告書の作成に当たって遵守するべき内容が述べられている。構成は、主文は全101条、キーワードが全40語から成っている。

    (2) 適用報告書
     VALMIN規程は、AusIMM2、AIG3及びMICA4会員が、豪州企業法及び規則、ASIC規則、ASXその他の認定証券取引所に規定される「独立専門家報告書」を作成する際、報告書の執筆を担当する専門家(Expert)、スペシャリスト(Specialist)が遵守するべき内容を示している。

    (3) 報告対象
     対象となる報告は、石油及び鉱物資源の資産の評価、査定を目的とした公開プロスペクタス(新規上場時の事業計画、資産等についての投資家向け発起書)、企業買収時の資産評価書、投資家向け情報説明の他、所有する鉱物及び石油資源資産(鉱物資源量、鉱石埋蔵量の評価、査定)に関する技術報告書(技術評価報告書、技術査定報告書)等がある。

    (4) 報告書執筆者
     報告書の執筆を担当する専門家、スペシャリストは、原則として、上記3団体に所属する者とする。専門家は、報告書の主たる部分を執筆する技術者で、地質、採鉱、冶金、環境、ファイナンス、法務、ビジネス等の広い分野での、直近10年以上の経験、知識及び能力が求められる。スペシャリストは専門家の業務を補助するもので、特定分野の直近10年以上の経験、知識及び能力が求められる。専門家、スペシャリストは、発注者からは独立した中立的立場での活動がもとめられるとともに、担当部分における執筆責任を負い、所属団体の倫理規程に従って業務を行うものとする。

    (5) 報告範囲
     目的、免責条項、専門用語リスト、基本方針の他、報告書の内容における重要性、資格保有、独立性、透明性、明瞭性等の報告書の内容に関すること、発注者及び発注者との関係、費用負担、データ及び情報の質、引用方法等報告書の作成に係る全般的な内容が含まれている。また、探鉱開発権、鉱物資源量・鉱石埋蔵量の評価・査定、採鉱・鉱石処理技術、資本・操業コスト、ファイナンス、リスク管理等の技術的、経済的内容も含まれている。

  3. VALMIN規程の管理団体

  4.  現在は、VALMIN(1998)が使用されており、主たる管理は大洋州採鉱冶金学会(AusIMM)が行ってきた。VALMIN規程と同様なJORC規程では、AusIMMの他に、豪州地質技師協会(AIG)、豪州鉱業協会(MCA)も管理団体となっていることから、AusIMMでは今回の改訂に当たって、オブザーバーの一部も管理団体となるよう働きかけていた。この結果、管理団体として新たにAIG及びMICAが加わることとなった。VLAMIN規程の対象となる技術報告を行う専門家の大部分がAusIMM、AIG及びMICAの会員となっており改定の効果が期待できるとみられる。VALMIN規程(2004)におけるオブザーバーには以下の団体が加わっている。

    <VALMIN規程(2004)のオブザーバー>
      豪州鉱業協会(Minerals Council of Australia:MCA)
      豪州証券取引所(Australian Stock Exchange:ASX)
      豪州証券投資委員会(Australian Securities and Investment Committees:ASIC)
      豪州証券協会(Securities Institute of Australia:SIA)
      豪州石油探鉱学会(Petroluem Exploration Society of Australia:PESA)

  5. 2004年版改定の経緯

  6.  豪州では、95年に初めてのバージョンのVLAMIN(1995)が策定、発表され、その後98年に改定が行われ、現在この98年版の規程が使用されている。現在第3バージョンである、VALMIN(2004)の策定作業が進められており、2004年9月にその最終ドラフトが発表された。このドラフトは、現在最終パブリックコメントの過程を経て、近く最終的に発表される予定となっている。最終的には、ドラフトの一部が変更される可能性があるが、通常最終バージョンの発表までに相当時間を要すると予測されること、すでに業界の一部から新バージョンを指示するコメントが発表されていることから、現段階においてドラフト版の概要を報告することとする。
     VALMIN規程の管理、運用は、大洋州採鉱冶金学会(AusIMM)が行っており、今回の改定作業のために、AusIMM内にタスクフォースが設立された。現行のVALMIN(1998)は、豪州国外を含めて広く普及し、高い評価を受けているものの、より難解度を下げユーザーフレンドリーな内容にするとともに、基本原則の改定を求める声があった。また、現在AusIMMのみがVALMIN規程の管理団体となっているが、JORC規程は、AusIMMを含む豪州の3専門家団体が共同管理を行っており、VALMIN規程も管理団体を拡大必要性が求められてきた。こうした点をふまえて、2000年からタスクフォースを中心に改定作業が進められてきた。

    VALMIN規程(2004、ドラフト)

  7. 改定の焦点

  8.  2004年版VALMIN規程改定の概要は以下のとおりである。

    • VALMIN(1998)では、ガイドラインは条項の後につけられていたが、新バージョンでは、これをすべて条項本文中に含めることとした。したがって、新バージョンでは、「ガイドライン」という言葉はなくなっている。
    • 各条項の中で、法的拘束力がある、または義務に近い内容については、用語「must」を使用して、内容を強調している。
    • その他の、重要性に応じて最良が認められるような、いわゆる「good practice」的内容は、用語「should」を用いている。
    • 重要なキーワードについて、本文中に明示するとともに、巻末にキーワードリストをつけた。
    • 改定バージョンの作成にあたっては、資源開発分野の法務専門家によるチェックを導入し、最近の法律改正に沿った内容とした。

    1 Code for the Technical Assessment and Valuation of Mineral and Petroleum Assets for Independent Expert Reports(The VALMIN CODE)
    http://www.ausimm.com.au/codes/valmin.asp
    2 The Australasian Institute of Mining and Metallurgy(AusIMM)
    3 Austgralian Institute of Geoscientist:AIG)
    4 Minerals Industry Consultants Association:MICA
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