報告書&レポート
2005年2月24日
ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail: kamura@jogmec.org.uk
2005年10号
ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年1月)
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国際市場
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需給動向
1月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が7か月連続で上昇して0.8%増の3,170.00 USドル/t、ニッケルは2か月連続で下落した後に今月は上昇し5.3%増の14,505.00 USドル/t、亜鉛は4か月連続で上昇し5.6%増の1,246.38 USドル/tであった。2004年に引き続き銅、ニッケル、亜鉛ともに高いレベルを維持しており、最近亜鉛価格の上昇が目立ってきている。こうした価格変動の主要因は、金属市場の需給がタイトという状況を受けたファンド資金の影響が大きいと言われ、最近ファンド資金は、米ドルとの関係を重視していると言われている。2004年11月の米大統領選後のドル安により金属市場に資金が再流入、2005年に入ってドル高等により多くの金属価格が急落する等不安定な動きを続けつつも、金属価格は全般に高いレベルを維持している。2005年の予想としては、銅は前半高いレベルが継続し後半の供給増加により弱くなる、ニッケルは中国の需要拡大により2004年より需給が引き締まり供給不足が継続する、亜鉛は通常経済サイクルの中で最後にピークを迎えるとの特徴から今年も中国・米国の強い需要から価格は上昇傾向といった見方が強い。こうした見方の一方、中国の金属需要や為替等の他の市場動向の影響を受けたファンド資金の動き次第では、現在の価格水準が急変する可能性は引き続きあると言えよう。
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2・1 | 銅 |
【需要】 国別の1~11月需要量は、最大消費国中国が5.4%増、2位米国6.6%増、3位日本7.1%増、4位ドイツ6.8%増で、世界計では前年同期比5.7%増の15,7208.1千tであった。世界の需要を月別に見ると、04年3-5月は1,400千t/月以上あったが、その後減少し8月は1,200千t台まで下がったものの、9月1,400千t台を回復、10月は一旦下がったが、11月は再び1,428.8千tと上昇した。注目の中国の需要動向であるが、8・9月と増加に転じ、10月は急減した後、11月は307.4千t(前年同月比12.3%増)と再び急増した。 |
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【供給】 1~11月期の鉱山生産は5.4%増の13,199.0千tであった。月別の鉱山生産を見ると、04年5月以降は1,200千t台に達し、10月は1,298.5千tと04年最高値を更新した後、11月は若干減少し1,277.7千tとなった。鉱山の設備稼働率も6月以降93%前後と高いレベルで推移、10月94.9%、11月95.9%まで上昇した。1~11月の国別生産量は、最大生産国チリが451.8千t増(+10.2%)、4位ペルーが168.8千t増(+22.1%)と大幅増産、2位米国1.7%増、5位豪州2.6%増で、3位インドネシアの231.4千t減(-23.8%)を補った。 1~11月期の精錬生産は3.4%増の14,375.7千tであった。月別の精錬生産は徐々に上昇、9月は一旦減少したが10月は再び増加、11月は1,373.8千tを記録した。稼働率は80%台で徐々に上昇しており、11月は84.7%となった。1~11月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が0.3%減、3位日本が3.0%減、4位米国が1.1%減であったものの、2位中国が11.7%増、5位ロシアが5.1%増、6位ドイツが9.4%増となっており、全体では3.4%増となった。 |
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【需給バランス】 1~11月期は832.4千tの供給不足であった。04年2-4月に月毎に100千トン台の供給不足が発生した後供給不足量は減少し、7月4千t、8月は68千tの供給超過となった。その後再び供給不足となり、9月71千t、10月2千t、11月は55千tの供給不足となっている。季節調整後の需給バランスでは、10月は04年で初めて供給超過(24千t)となったが11月は43千tの供給不足に戻った。 |
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【価格】 2004年末3,279.5 USドル/tを記録して終了していたLME銅価格は年明け早々下落し、1月5日には3,100 USドル台を割り込んだが、すぐに3,100 USドル台を回復、1月21日には3,200 USドル台となり、1月31日は3,275.5 USドルで終了した。 |
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2・2 | ニッケル |
【需要】 1~11月の消費量は1.5%増の1,140.4千tであった。最大消費国の日本が2.6%増、2位中国が11.7%と大幅増、3位米国が1.6%増、4位ドイツが2.2%増、6位韓国が8.3%増というように、5位台湾が3.6%減少した以外、殆どの主要国で消費が増加した。最近の高値の影響でニッケル低含有ステンレスやニッケルを含まないステンレスの生産がアジアを中心に各地で増加するなど、ニッケル消費の伸びが抑制される傾向が続いている。 |
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【供給】 1~11月の鉱山生産は0.2%増の1,159.2千tであった。最大生産国のロシアは前年並み、2位豪州は19.0%減と急減する一方、3位カナダが17.7%増と急増、4位インドネシアが2.4%増、5位ニューカレドニアが5.3%増となり全体としては微増となった。 1~11月の一次精錬生産は4.0%増の1,140.9千tであった。最大生産国のロシアが0.4%減とわずかに減少したほか、3位豪州が5.6%減、5位ノルウェーが10.8%減となったものの、2位日本が1.2%増、4位カナダが24.8%増と大幅増、6位中国も12.8%増と大幅に増え、減産国の減産分を補い全体としては増加した。 |
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【需給バランス】 1~11月の需給は微量(500t)の供給超過となった。高値の影響で消費が抑制される一方、供給の伸びも落ち着いてきており、2004年は若干の供給不足か、ほぼバランスする方向となっている。2005年は引き続き需要が堅調で、ステンレスの品質上の制約から2004年よりも供給不足が広がるとの予測も出てきている。 |
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【価格】 2004年末15,000 USドル/t台を記録していたLMEニッケル価格は、1月4日、14,105 USドルと急落してスタート。1月12日には一時15,000 USドルを記録した以外は、基本的に14,000 USドル台を維持して推移し、1月31日には14,490 USドルで終了した。 |
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2・3 | 亜鉛 |
【需要】 1~11月の需要量は5.7%増の9,527千tであった。最大消費国の中国が10.5%増、2位米国が10.8%増、3位日本が0.7%増、5位韓国が5.0%増と好調で、4位ドイツの4.8%減などを補った。国際鉛亜鉛研究会は、2004年の世界の亜鉛需要量(速報値)を10,390千t(前年比5.5%増)と発表した。 |
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【供給】 1~11月の鉱山生産は、最大生産国の中国が12.3%増、4位カナダが0.3%増、6位メキシコが2.8%増であったが、2位豪州が10.9%減、3位ペルーが7.4%減、5位米国が5.1%減とふるわず、世界合計で1.2%増の8,866千tに止まった。国際鉛亜鉛研究会は、2004年の世界の亜鉛鉱山生産量(速報値)を9,686千t(前年比1.1%増)と発表した。 1~11月の精錬生産は、最大生産国の中国が7.7%増、2位カナダが5.2%増、4位韓国が3.9%増、6位スペインが2.4%増となり、3位日本の2.5%減、5位豪州の15.9%減を補い、全体で2.9%増の9,301千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は、2004年の世界の亜鉛精錬生産量(速報値)を10,156千t(前年比2.7%増)と発表した。 |
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【需給バランス】 1~11月の需給バランスは226千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、1月31日現在617.6千tとなり、前月から1.1万t減少。国際鉛亜鉛研究会の発表では、2004年の世界の亜鉛需給(速報値)は234千tの供給不足となった。 |
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【価格】 2004年末1,270 USドル/tと年間最高値で終了していたLME亜鉛価格は、1月5日に1,197.5 USドルとなった以外は、1,200 USドル台の高いレベルを維持し続け、1月31日には1,303 USドルと1,300 USドル台を記録して終了した。 |
