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報告書&レポート

2005年2月24日 バンクーバー事務所 中塚正紀 e-mail: nakatsuka@jogmec.ca
2005年11号

Mineral Exploration Roundup 2005報告 -Discovering our Future-

 2005年1月24日から27日までバンクーバーでMineral Exploration Roundup 2005が開催された。2003年後半から金属市況は高水準を維持し、ジュニア企業を始めとする鉱山会社の資金調達も順調に拡大する中、2005年のRoundupは、2004年の参加者3,900名をさらに上回り、メジャーやジュニア企業はもとより探鉱開発機器メーカー、地質コンサルタント、金融機関、一般投資家、ブリティッシュ・コロンビア大学等大学関係者など200以上のブースが設置されたほか、400社を超える企業、総勢約5,200名が参加するこれまでにない大規模な大会となった。
 加えて1月23日及び24日の2日間にわたってInvestment Conferenceが開催されたことから、こちらも100以上の企業ブースが設置され、関係者3,000名が参加した。このため、バンクーバーの街中で鉱業関係者がにぎわうRoundup週間となった。
 特に2005年は、2003年からBC州政府が取組んできた鉱業に関するTask Forceの検討結果を踏まえ、Roundupに合わせて鉱業再生プランを発表したことから、鉱業関係者は、BC州の新たな鉱業投資環境改善の取組みを歓迎し、さながらBC州経済の牽引車として今後の鉱業の発展を期待させる大会となった。本報告では、今年のRoundupにおいてBC州政府や鉱業協会等関係者が発表した将来の鉱業に関する発言内容を報告する。

  1. BC州政府の鉱業再生プラン

  2.  本大会のオープニングでBC・ユーコン鉱業協会Michael Gray会長が直前にBC州政府が発表した鉱業再生プランを紹介。同プランは4つの柱を骨格として具体的な57項目で構成されている。概要は以下の通り。

    (1) 地域住民と先住民への支援体制の強化
       地域社会、先住民と産業が一緒になって長期にわたる経済的かつ社会的利益を確保する体制の構築。→地域社会や先住民を対象とした職業訓練の実施など

    (2) 鉱山労働者の保護と環境保護の推進
       鉱山労働者や自然環境の安全性を更に高めるため、科学を基礎とした継続的な改善。→鉱山労働者の安全基準や環境基準の実行性をさらに高め、鉱山検査や監査プログラムを実施。

    (3) 世界的な競争力の確保
       安定した政策の実現、国際競争力を有した税制や法制度、熟練した技術者の確保、強いインフラ、地科学データベースの構築など。→オンラインによる鉱区取得システムの実施、BC州北部地域の搬送ルートの整備、電力供給体制の整備など。

    (4) 土地利用の促進
       土地利用促進の実施は、探鉱・開発への投資を支援。→公園区域と鉱業開発可能区域の2ゾーンシステムを導入、林業等の他産業との協力関係の構築など。

     バンクーバーは、約700社のメジャー及びジュニア企業が本拠を構えており、世界が注目する鉱業クラスターを形成している。BC州には、収益性の高い多くのプロジェクトがあり、鉱業は、電力、鉄道及び道路アクセスなど新しいインフラ整備を期待していると結んだ。

  3. Mineral Title Onlineシステム

  4.  本大会オープニングの挨拶でRichard Neufeld BC州エネルギー鉱業大臣は、2001年に29百万ドルまで低下した探鉱投資額は、1991年の150百万ドルには届かないものの、2003年の88%アップの470プロジェクトを実施した結果、2004年は130百万ドルまで回復する見込であり、2004年が過去10年以上を通じてBC州鉱業にとって最上の年であったと総括した。
     また、BC州の鉱業再生プランに基づき2005年1月12日からスタートしたMineral Title Online(MTO)システムを紹介。システムが供用されて以来、256万件のアクセスがあり、3,110件、120万haが処理された。これは過去13年で探鉱が最高だった2004年の鉱区取得面積110万haを超えるものである。
     こうした鉱区取得の増加はBC州でより多く鉱山や新しい仕事を創出するだろう。同様のシステムは、ケベック、アルバータ、ノバスコシアそしてニューファンドランドの各州で適用されているが、従来の制度は、鉱区の確定のため、GPSと袋詰の杭を持って歩き回らなければならず、加えてコストや時間がかかり、冬季の寒冷時期は、作業が出来ず、非常に不便であった。MTOシステムはコンピュータースクリーン上で電子地図から鉱区を選定することが可能となり、かつオンラインで申請手続きをすれば、8日間で鉱区が取得できる。
     本システムは、鉱区取得のためのヘリコプター需要や現地クルーの仕事を奪うことになるが、一方で探鉱需要が大幅に増大し、これを十分に補うことになるだろう。加えて、BC州政府内の業務の効率化にも寄与すると説明した。

  5. BC州政府、地質調査等に2,500万ドルを助成

  6.  Roundupの会場で開催されたBC州及びユーコン準州鉱業協会の年次総会においてG. Campbel BC州首相は、同州鉱業の経済活性化を目的として、法案認可が得られれば、地質調査に2,500万ドルの助成金を支給すると発表。これは、BC州の鉱業投資促進のために設けられたTask Forceにおいて地質図作成業務が他州に比べて遅れていると同協会が指摘したが、州政府はこれを受けて地質調査に力をいれ、BC州への探鉱投資の更なる拡大を図る事としたもの。2,500万ドルのうち、2,000万ドルは探鉱のための地質調査に、残り500万ドルは石油天然ガス産業と共同でBC州中部地域において産業創出のさまざまな機会の創出にあてられる予定と説明した。

  7. 鉱業は若い人材を求めている

  8.  BC州及びユーコン準州鉱業協会の次期会長David Caulfield氏は、今回のRoundupで、金属市況の上昇により、探鉱に資金が流入する環境のもと、鉱業に好意的な地域としてBC州は世界の注目を浴びているが、こうした時期こそ人材育成を真剣に考える必要がある。もし、若い人材の供給が進まなければ、ここ数年で深刻な問題を起こすことになるだろうと警告。我々は、雇用拡大に向けて今よりいい時期は他にないので、業務の遂行に必要な人材を雇い入れるため、行動を起こさなければならない。BC州が長期的に世界的な探鉱や鉱山開発の中心的役割を担うとするなら、地球科学、エンジニアリングなどの系列の専門家を育成していく必要がある。現在、BC州には開発ステージに進むと考えられる多くのプロジェクトがあり、もしそれぞれが鉱山開発に進むと考えると、数千名の長期雇用が発生することになると語った。

  9. BC州の鉱業は、2005年最も発展する産業になる

  10.  BC Mining Association会長Michael Mcphie氏は、BC州の鉱業は、非常に高い金属市況と政府支援に支えられ、2005年において最も発展する産業になるだろうと語った。
     金融筋の経済アナリストによれば、今年、BC州の鉱業は13.2%伸びるとし、次に成長が期待される建設業が5.2%でその伸びは2倍以上になるだろうと予測。同協会によれば、現在、BC州には2004年の探鉱結果から開発への可能性を持っているプロジェクトは14件あり、これらのプロジェクトは、ここ数年で18億ドルの資本投資を必要とし、その結果、2,800名の新たな仕事を創出することになるとしている。
     また、同会長は、2002年BC州の探鉱投資額は、州政府が魅力的な政策展開を行い、財政支援を行ったにもかかわらず、25百万ドルまで下落したが、2004年、前年の20,000件の鉱業権取得をはるかに上回る47,000件を記録し、探鉱投資額は130百万ドルまで回復した。新しい鉱山の発見は、産業の持続的な発展の源であり、開発可能なプロジェクトの発掘には、年平均で100百万から150百万ドルを投資する必要がある。2004年の探鉱結果は、1990年代に経験した探鉱投資の急速な下落の影響を脱し始めたことを示しているとの見解を述べた。

  11. 州政府の取組みは、プロジェクトを再生する

  12.  Teck Cominco社は、2004年末、Highland Valley銅鉱山を2008年閉山予定から2015年まで延長する計画を検討していることを発表。同社副社長によれば、金属消費の基盤となる経済活動は、米国経済からアジアにシフトしている。誰もが中国について話しているが、確かに消費構造は変化している。全てのメジャー企業の一致した見解は、この傾向は予知できる将来において続いていくということである。BC州には、低品位のポーフィリーカッパー鉱床などたくさんの休止鉱区が存在している。もし州政府の意欲的な取組みがあれば、これらの鉱床は開発されるに違いない。つまり、電力供給があり、税制の適用があれば、それらの鉱床は、適正な市場の下で非経済的プロジェクトから非常に早く経済性のあるプロジェクトになっていくと語った。

  13. あとがき

  14.  本報告では、Roundupにおいて特に話題を呼んだBC州政府の鉱業再生プランに端を発し、鉱業関係者がバンクーバーを中心とした鉱業財産に着目し、今後の鉱業発展について発言した内容を特集したが、閉会にあたりMichael Mephie BC Mining Associstion会長は、TSX-Vに上場している847社のうち603社が、またTSXに上場している186社のうち68社がBC州に本拠を構えている。BC州のこうした企業をベースにした鉱業財産を活用することにより、今後とも探鉱及び鉱山開発の主要な国際拠点であり続けるだろうとインタビューを締めくくった。
     2005年5月、BC州は選挙を迎えるが、選挙の結果も踏まえ今後の動向を注目したい。

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