報告書&レポート
チリEscondida鉱山の最近の動向 ―Escondida Norte鉱床の開発と低品位硫化鉱バイオリーチングの開始―
はじめに
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発見から開発まで
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生産開始から現在へ
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操業概況
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Escondida Norte鉱床開発と硫化鉱バイオリーチングプラント
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将来の生産見通し
2004年のチリ銅生産量は520万tに達した。そのうち、Escondida鉱山が120万tを生産。この量は、日本の1年間の銅消費量にほぼ匹敵し、1鉱山としては世界最大の銅生産量を誇る。同鉱山は1990年に生産を開始し、四期に亘る拡張工事が実施され、2002年末には年産125万tの生産体制が出来た。2004年から更にEscondida Norte鉱床の開発と硫化鉱バイオリーチングプラントの建設がスタートした。このたび同鉱山を訪問する機会があったので、同鉱山の概況と合わせてEscondida Norte鉱床開発および硫化鉱バイオリーチンおよび将来の生産見通しについてレポートする。
Escondida鉱床は、1981年3月Minera Utha de ChileとGetty MiningとのJ/V探査によりチリ第II州Antofagasta市東方150kmのアタカマ砂漠で発見された(第1図)。2年計画の最後の年、5孔計画されたボーリングのうち最後のボーリングにおいて450mの計画のところ420mで着鉱し、これが巨大鉱床発見の端緒となった。Minera Utha de ChileとGetty Miningによる探査の着目点は、Chuquicamata鉱床とEl Salvador鉱床の間で大型のポーフィリー鉱床がまだ発見されてない場所であった。 |
1990年に商業的生産を開始して以来、第I期(1993年・1994年)から第IV期(2001年・2002年)に亘って拡張事業を続けてきた。特に2000年にスタートした第IV期拡張計画は、総投資額約10.446億USドルにのぼるもので、主体はLaguna Seca選鉱プラントの新設(鉱石処理能力:110,000t/日)で、2003年に完了した。この結果、年産125万t体制が確立された。1989年の開発から2004年までの総投資額は43.36億USドルで、これまでの産銅量は、10,232千tに達した(第2図)。2003年は、銅価の低迷で操業規模を落としていたが、2004年は銅価の高騰に支えられフル操業により生産能力に近い119.5万tの銅を生産した。その内訳は硫化精鉱:104万tおよびSX-EWカソード:15万tである(いずれも含有銅量)。 |
現在の操業概況は、以下のとおりである。鉱山施設配置を第3図に示す。
露天採掘は、剥土比4:1(開発当初)、2:1(現在)、ピット径は3.2km×2.2km×465mで、最終的には4.8km×3.5km×750mとなる。鉱石はインピットクラッシャーで破砕し、コンベヤーでLos ColoradosおよびLaguna Seca選鉱プラントに運搬。採掘された鉱石のうち酸化鉱および二次富化鉱はヒープリーチングを経て電解しカソードにする。一方硫化鉱は、Los ColoradosおよびLaguna Seca選鉱プラントにて精鉱を生産。Escondida露天採掘の拡大に伴い、Los Colorados選鉱プラントは将来移転する予定。精鉱は、170km離れたColoso港にパイプ流送、脱水後海外に輸出。なおColosoに建設された硫化精鉱のアンモニアリーチングプラントは、実収率があがらず、1998年操業を停止した。
アタカマ砂漠の中に存在するEscondida鉱山は選鉱プラントおよびSX-EWに必要な水が確保できないという問題を抱えていた。同鉱山では近くの地下水からの供給では選鉱プラント増設には対応しきれず、150km離れたColoso海岸で海水の淡水化を行い、山元まで送水し利用する工事を2005年から開始した。
鉱量・品位 | 確定鉱量 Cu 1.02% | 23.3億t |
鉱石品位 | 1.4% | |
精鉱品位 | 34.7% | |
探鉱 | 探掘方法 | 露天掘(3.2km×2.2km×465mH) |
剥土比 | 2:1(開発当初4:1) | |
ベンチ高 | 15m | |
ピット傾斜 | 50° | |
ダンプトラック | CATA797(380mt)ほか92台 | |
ショベル | P&H4100×PB(73yd Dipper)ほか14台 | |
フロントエンドローダー | CAT944(23yd Bucket) 3台 | |
選鉱能力 | La Coloradoプラント | 110,000t/日 |
Lagna Secaプラント | 120,000t/日 | |
選鉱実収率 | 84% | |
SX-EW | カソード生産能力 | 450t/日 |
実収率 | 80% | |
その他 | 従業員(2003年) | 2,284人 |
下請け(2003年) | 3,302人 | |
Clキャッシュコスト(2003年) | 44.2¢/lb | |
収益(2004年) | 17億USドル | |
法人所得税(2004年) | 357百万USドル |
(1) Escondida Norte開発
(2) 硫化鉱バイオリーチングプラント |
Escondida鉱山は、300,000t/年からスタートし、相次ぐ拡張により12年間で、1鉱山としては世界最大を誇る125万tの生産能力を備えることとなった。2005年後半からEscondida Norteからの生産が開始され、2008年までは、125万tの規模が維持される。それ以降については、鉱石品位の低下から生産規模の縮小が予想される。
チリ北部のような砂漠地帯に存在するポーフィリー銅鉱床では二次富化帯(secondary enrichment zone)と称されるほぼ現在の位置で、天水により地表下浅所において二次的な銅の濃集が生じ、高品位鉱床が形成される。Escondida鉱山と言えどもこの高品位二次富化帯の採掘は終了し、深部に行くに従って初生硫化鉱が採掘の主体となり、次第に低品位鉱が増大してくることになる。この低品位硫化鉱に対するバイオリーチングにより、採掘対象が拡大し、生産規模の低下を補うことが出来るかが鍵を握ることになる。
ポーフィリー銅鉱床は、クラスター(いくつかの鉱床が密集する)を形成することが多いが、Escondida地域においても、Escondida鉱床のほかEscondida Norte鉱床に隣接してZaldivar鉱床が存在する(第3図参照)。現在でもEscondida鉱山周辺で活発な探査活動が展開されており、周辺においてPinta Verde、Co.Grande W&N、Carmen、Escondida Surといったポーフィリー銅鉱床が既に捕捉されており、CODELCO Norteのような巨大なポーフィリー銅鉱床クラスターをなしている。探査が進展すれば、近い将来これら周辺鉱床も開発の対象となり、世界一を誇るEsocndida地域の銅生産はしばらく続くものと思われる。
