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銅の鉱山生産動向 ―主要生産者の2004年の生産実績と今後の生産能力の見通し―
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2005年に入っても、国際銅価格は2004年に引き続き高いレベルを維持し、ごく最近では2004年の最高値を上回る値動きをしている。こうした背景には、ドル安等を背景とした投機資金の大幅な流入の影響があると言われるが、他の市場へのシフトや中国の経済成長減速への危惧等で一旦値を下げることがあっても高いレベルを維持する要因としては、現状でもタイトな銅の需給動向があると言われている。国際銅研究会の需給月報によると、2004年は70.6万tの生産不足と依然生産不足の状態が継続しているものの、足元の需給(2004年12月)では、地金生産の加速と消費増加の鈍化により生産不足量は急速に減少してきており、取引所の地金在庫が増加する等、需給バランスに変化が現れつつある。2005年の銅価格の予想としては、前半高いレベルが継続し後半は供給増加により弱含むといった見方が強い。今後も中国の金属需要や他の市場動向の影響を受けた投機資金の動き次第では、現在の価格水準が大幅に変動する可能性は引き続きあり、国際銅市場の中長期的方向性を決定する実際の需給が注目される。 |
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銅鉱山生産:2004年は第4四半期の増産により全体でも増産
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鉱山・プラント能力:2008年までに鉱山能力が323万t増強の見込み
2004年の主要生産者17社の銅鉱山生産は、合計で約39.3万tの増産(前年比4.1%増)であった。2004年の生産実績を公表した主要生産者17社のうち、12社が増産、5社が減産となった。第4四半期の単独の生産実績では、14社のうち11社が増産、3社が減産で、合計では約32.6万tの増産(前年同期比16.3%増)であった。2004年全体の生産実績では、多くの企業が第4四半期に増産したことにより、地すべり事故を起こしたGrasberg鉱山の大幅減産の影響を打ち消した形となった。
| 1・1 | 各社の動向 |
最大の減産は、Freeport McMoran社(米)の2003年10月に発生したGrasberg鉱山の地すべり事故による減産である。同鉱山では、4月から高品位地域の採掘、6月からは通常生産を開始し、前四半期までは低品位と低稼働率の影響があったが、Freeport McMoran社の2004年第4四半期の生産量は、前四半期と比べて75,900t増(約65%増)、前年同期比では119,400t増(約2.6倍)と回復した。しかし、Freeport McMoran社の2004年の年間生産量は、依然として事故の影響が残り、前年と比べて133,900t減となった。
2番目に大きな減産としては、Rio Tinto社の113,900tの減産であった。同社においても、Grasberg鉱山の減産(2004年で55.8%減、第4四半期で2.1倍)の影響が大きく残った。他にチリのEscondidaが大幅増産(2004年で21.6%増、第4四半期で31.6%増)となったが、Kennecott Utah CopperのBingham Canyon鉱山は減産(2004年で6.4%減、第4四半期で3.2%増)、南アPalaboraは、状況は改善しつつあるが引き続き生産目標以下の状態が続いている。この結果、第4四半期では2,200t増産となってきているものの、年間ベースではRio Tinto社全体として引き続き大幅減産となった。
一方、最大の増産は、世界最大の銅生産者であるCodelco社(チリ)の166,000tの増産(前年比9.9%増)であった。これはCodelco Norte、El Tenienteの記録的増産によるものである。なお、Codelco社の2004年業績は、銅及び副産物価格の上昇と出荷量の増大により、売上は8,204百万USドル(前年比2.2倍)、収益は3,301百万USドル(前年比5.4倍)の黒字を達成、過去最高益を記録した。
2番目に増産幅が多かったのは、BHP-Billiton社(英豪)の126,000tの増産であった。同社の2004年の銅生産は、前年比で14%増、第4四半期だけでも前年同期比17%増となっている。これは、Escondida(チリ)、Tintaya(ペルー)が高品位でフル生産を回復、Antamina(ペルー)が記録的生産をしたことによるもので、2004年1月のHighland Valley Copper(加)の権益売却の影響を相殺した。
この他、世界第2位の銅生産者であるPhelps Dodge社(米)は、2004年で39,500tの増産、第4四半期だけでは16,900tの増産となっている。なお、Phelps Dodge社の2004年第4四半期の業績は引き続き好調で、純利益が341.1百万USドル(前年同期比2.7倍)と過去最高益を記録、2004年の純利益は1,046.3百万USドル(前年比11倍)となった。
Grupo Mexico社(メキシコ)は、約39,000tの増産であった。これは、傘下のMinera Mexicoが鉱山スト等で第3-4四半期は減産したものの年ベースでは10%の増産、Southern Peru Copper Corporationも年ベースで6%増産したことによるものである。なお、Grupo Mexico社の2004年の業績は、売り上げが前年比69%増、操業利益が299%増、税引前利益が182%増加となった。
2004年及び第4四半期の主要銅鉱山生産者の生産実績(精鉱中銅金属量及びSX/EWカソード生産量)は下表のとおりである。
主要銅鉱山生産者の生産実績
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| 注: | 各社発表による。生産量は各社とも自社シェア分。但し、WMC社はカソード生産量。 |
| 1・2 | 世界全体の鉱山生産動向と需給動向 |
国際銅研究会の発表(2004年12月速報)によると、2004年の世界の鉱山生産は、前年比6.2%増の1,452.7万tとなった。2004年の世界地金生産は前年比3.6%増(1次2.6%増、2次11.4%増)の1,578.1万tとなり、世界地金消費は前年比5.6%増の1,648.6万tであったことから、2004年の見かけ地金需給は70.6万tの生産不足(前年同期は38.6万t生産不足)となった。鉱山生産の順調な伸びに対し、1次地金生産の稼働率上昇が追いつかず、鉱山生産増加が需給緩和につながらない構図となっている。
国際銅研究会によれば、鉱山の稼働率は増加し続け12月は97.2%とフル生産状態となっており、今後の鉱山生産の見通しは、能力拡張がどこまで実行されるかという点にかかっている。
国際銅研究会は、四半期ごとに改定している世界の銅鉱山・プラント一覧の2005年1月版を発表した。これは、2004年10月から2005年1月までに発表された変化を反映したものである。
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2008年における鉱山生産能力は、2004年10月時と比べて約30万t上方修正され、2004年から2008年までの4年間の鉱山生産能力は、約323万t増加する(年率4.8%増加する)ことが見込まれる。2004年から見て、精鉱で195万t、SX-EWで129万t、それぞれ精鉱:年3.7%増、SX-EW:年9.5%増となる見込みである。うち113万tは探鉱中又はFS実施中で最終的な開発決定はなされていない。
溶錬生産能力では、2004年10月時と比べて2005年に12.9万t増加、2008年に27.9万t増加しており、2004年から2008年までの4年間の溶錬生産能力は、2005年の69万t増加から、その後増加幅は減少し2008年には0tとなるものの、4年間合計では約143万t増加する見込みである。これは年率では2.3%増加することとなり、電解精錬の増加(約153万t)をやや下回り、精鉱の供給能力増加よりはかなり低くなっている。この結果、精鉱から溶錬(精鉱及びスクラップからのものを含む)までの稼働率は、2004年82.4%から2008年87.0%へ上昇する見込みである。
2004年から2008年までの4年間の精錬生産能力は、約281万t増加することが見込まれる。このうち78万tは未だ計画中で建設決定はなされていない。電気精錬で153万t、EWで129万t、それぞれ電気精錬:年2.4%増、EW:年9.2%増となる見込みである。
これらの計画された能力拡張には、現存する鉱山・プラントの管理、メインテナンス、一時的生産削減等で変動する部分(Swing Capacity)は含まれていない。国際銅研究会の調査では、この変動部分は鉱山で徐々に縮小し僅か2.5万tあり、溶錬で40.0 万t、精錬で54.0万tの能力が引き続き使用されていない状況にあるとしている。
前回の2004年10月版の一覧と比較して、鉱山、溶錬、精錬のすべての生産能力において、2004年から2008年までの4年間の生産能力引き上げが上方修正され、かつSX-EW以外の全ての生産能力の2004年から2005年にかけての増加幅が増えていることから、引き続き最近の価格情勢や需要増大への期待から、生産者の間においては、今のところ需給緩和への警戒感はあまり強くない状況が続いているものと考えられる。


