閉じる

報告書&レポート

2005年3月31日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年19号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年2月)

  1. 国際市場

  2.  2月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が8か月連続で上昇して2.6%増の3,253.70 USドル/t、ニッケルは2か月連続で上昇し5.8%増の15,349.50 USドル/t、亜鉛は5か月連続で上昇し6.4%増の1,326.18 USドル/tであった。引き続き銅、ニッケル、亜鉛ともに高いレベルを維持し、最近は再び金属価格全般の上昇が見られる傾向となってきている。こうした価格変動の主要因は、金属市場の需給がタイトという状況に加えて、再びファンド資金の影響が大きくなっていると言われている。銅は、2月中旬よりドル安と旧正月明けの中国需要回復を見込んだ投機により急上昇、ニッケルも、主要生産者のINCO社とNorilsk Nickel社の2005年のニッケル生産が2004年より減少する見込みでLME在庫も減少していることから2月中旬に2005年最高値を記録し急上昇、亜鉛も、ドル安とLME在庫減少を材料に上昇傾向が継続している。在庫レベルが全般的に低いため、供給上の問題の影響が大きくとられる傾向にある一方、中国の金属需要や為替等の他の市場動向の影響を受けたファンド資金の動き次第では、現在の価格水準が急変する可能性もあり、当面高いレベルで推移しつつも、引き続き市場は不安定な動きを続けることが予想される。

    LME平均価格と在庫
      平均価格(cash settlement,USドル/t) 在庫(t)
    2005年1月 2005年2月 前月比 2005.1.31 2005.2.28 増減
    Cu 3,170.00 3,253.70 +2.6% 45,675 53,975 +8,300
    Ni 14,505.00 15,349.50 +5.8% 17,034 10,002 -7,032
    Zn 1,246.38 1,326.18 +6.4% 617,575 604,625 -12,950

  3. 需給動向

  4. 2004年の需給状況(出典:国際銅・ニッケル・鉛亜鉛研究会)
      鉱山生産 精錬生産 消費 需給バランス
    (t)
    1-12月(t) 前年比 1-12月(t) 前年比 1-12月(t) 前年比
    Cu 14,513,000 +6.1% 15,784,500 +3.6% 16,486,400 +5.5% -701,900
    Ni 1,270,800 +0.5% 1,248,000 +3.9% 1,248,700 +1.3% -700
    Zn 9,649,000 +0.8% 10,181,000 +3.2% 10,387,000 +5.6% -206,000

    2・1
      【需要】
     国別の2004年の需要量は、最大消費国中国が3.6%増、2位米国5.4%増、3位日本6.3%増、4位ドイツ9.5%増で、世界計では前年比5.5%増の16,486.4千tであった。世界の需要を月別に見ると、2004年3~5月は1,400千t/月以上あったが、その後減少し8月は1,200千t台まで下がった後月ごとに増減を繰り返し、12月は1,276.3千tと減少した。注目の中国の需要動向も、9月以降増減を繰り返し、11月は307.4千tと急増した後、12月は263.7千tと減少した(対前年比11.5%減)。

      【供給】
     2004年の鉱山生産は6.1%増の14,513.0千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2004年5月以降は1,200千t台に達した後そのレベルを維持し、12月は1,346.7千tと2004年最高値を更新した。鉱山の設備稼働率も6月以降93%前後と高いレベルで推移、10月以降さらに上昇し12月97.2%まで上昇した。2004年の国別生産量は、最大生産国チリが508.3千t増(+10.4%)、4位ペルー(04年3位)が192.9千t増(+22.9%)と大幅増産、2位米国2.6%増、5位豪州(04年4位)3.2%増となり、3位インドネシア(04年5位)の160.3千t減(-16.0%)を補い、全体としての増産に貢献した。
     2004年の精錬生産は3.6%増の15,784.5千tであった。月別の精錬生産は徐々に上昇、9月は一旦減少したが10月以降再び増加、12月は1,382.8千tを記録した。稼働率は80%台で徐々に上昇傾向にあったが、12月は82.2%と11月の84.1%から若干減少した。2004年の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が0.2%減、3位日本が3.4%減であったものの、2位中国が10.8%増、4位米国が0.3%増、5位ロシアが9.1%増、6位ドイツが9.3%増となっており、全体では3.6%増となった。

      【需給バランス】
     2004年は701.9千tの供給不足であった。2004年2~4月に月毎に100千t台の供給不足が発生した後供給不足量は減少し、7、8月は供給超過、その後供給不足と供給超過を繰り返しており、12月は107千tの供給超過となっている。季節調整後の需給バランスでは、10月は04年で初めて供給超過(37千t)となったが11月は54千tの供給不足に戻り、12月も僅かながら5千tの供給不足となった。

      【価格】
     3,200 USドル/t台でスタートした2月のLME銅価格は、2月3日には3,100 USドル台に下落しその後しばらく3,100 USドル台で推移したが、2月11日に3,200 USドル台を回復、2月18日には3,300 USドル台を突破、2月28日には3,405 USドルと3,400 USドル台を記録して終了した。
       
    2・2 ニッケル
      【需要】
     2004年の消費量は1.3%増の1,248.7千tであった。最大消費国の日本が0.5%減、5位台湾(04年6位)が3.5%減となったものの、2位中国が12.8%と大幅増、3位米国が1.6%増、4位ドイツ(04年5位)が2.2%増、6位韓国(04年4位)が7.4%増となり、全体としては消費が増加した。高値の影響でニッケル低含有やニッケルを含まないステンレス生産がアジアを中心に増加するなど、ニッケル消費の伸びが抑制される傾向が続き、ステンレス需要が旺盛だったわりには伸びが抑えられた。

      【供給】
     2004年の鉱山生産は0.5%増の1,270.8千tであった。最大生産国のロシアは前年並み、2位豪州(04年4位)は20.3%減と急減する一方、3位カナダ(04年2位)が15.5%増と急増、4位インドネシア(04年3位)が3.3%増、5位ニューカレドニアが6.4%増となり全体としては微増となった。
     2004年の一次精錬生産は3.9%増の1,248.0千tであった。最大生産国のロシアが0.7%減少したほか、3位豪州(2004年4位)が6.3%減、5位ノルウェー(2004年6位)が7.5%減となったものの、2位日本が1.8%増、4位カナダ(2004年3位)が21.6%増と大幅増、6位中国(2004年5位)も14.6%増と大幅に増え、減産国の減産分を補い全体としては増加した。

      【需給バランス】
     2004年の需給は微量(700t)の供給不足となった。高値の影響で消費が抑制される一方、供給の伸びも落ち着いてきた結果、ほぼバランスした。2005年は引き続き需要が堅調で、ステンレスの品質上の制約から2004年よりも需要が伸びる一方、主要生産者の供給減少から供給不足が広がるとの予測も出てきている。

      【価格】
     LMEニッケル価格は、1月末の14,490 USドル/tからさらに上昇を続け、2月9日には15,000 USドル台を突破、その後も上昇傾向を強め、2月24日には16,000 USドル台を突破し、2月28日には16,375 USドルで終了した。

       
    2・3 亜鉛
      【需要】
     2004年の需要量は5.6%増の10,387千tであった。最大消費国の中国が10.4%増、2位米国が9.5%増、3位日本が0.6%増、5位韓国が4.4%増と好調で、4位ドイツの3.2%減などを補った。

      【供給】
     2004年の鉱山生産は、最大生産国の中国が11.6%増、4位カナダが1.3%増、6位メキシコが2.8%増であったが、2位豪州が10.3%減、3位ペルーが10.4%減、5位米国が5.2%減とふるわず、世界合計で0.8%増の9,649千tに止まった。
     2004年の精錬生産は、最大生産国の中国が8.6%増、2位カナダが4.9%増、4位韓国(2004年3位)が3.7%増、6位スペイン(2004年5位)が1.2%増となり、3位日本(2004年4位)の2.5%減、5位豪州(2004年6位)の14.5%減を補い、全体で3.2%増の10,181千tとなった。

      【需給バランス】
     2004年の需給バランスは206千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、2月28日現在604.6千tとなり、前月から1.3万t減少。2005年は中国・米国の強い需要等引き続き堅調な需要、地金供給制約により、供給不足が続く見込み。

      【価格】
     1月31日に1,300 USドル/t台を記録して終了していたLME亜鉛価格は、2月に入り1,200 USドル台に戻ったものの、2月10日に再び1,300 USドル台を突破、その後上昇を続け2月24日には1,395 USドルを記録した。
ページトップへ