報告書&レポート
国際銅研究会第3回特別総会の概要報告
3月16日、17日の両日、銅研究会の本部所在地であるリスボン(ポルトガル)において世界16か国約30名の政府・民間関係者、国際機関関係者が参加し国際銅研究会第3回特別総会が開催された。 |
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統計委員会
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環境経済委員会
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常任委員会
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総会
統計委員会では、事務局より世界全体及び各国ベースの2005、2006年における銅需給予測、銅及び銅合金製造工場要覧の最新版の発行、計画中の調査プロジェクト(銅市場における中国の影響、銅需給予測の精度を高める景気判断指標の検討)等について議論された。
(1) 2005、2006年における銅需給予測
2005年の世界の鉱山生産は116万t(前年比8.0%)増加し1,570万t、2006年は更に16万t(1.0%)増加し、1,580万tとなる見込みである。2005年の増加は、ほぼ全地域において生産量が増加していることによるもので、2006年は中南米鉱山の生産拡張が一段落するために生産量はほぼ横ばい(対前年比)となっている。
2005年の世界の地金生産(1次、2次含む)は、供給途絶の余裕分6.4万tを含め、133万t(前年比8.5%)増加して1,710万tとなる見込みであり、2006年は供給途絶の余裕分13万tを含め、96万t(前年比5.2%)増加して1,820万tとなる見込みである。
2005年の世界の地金消費は、87万t(前年比5.3%)増加して1,740万t、2006年には更に80万t(4.6%)増加して1,820万tとなる見込みである。この消費増は中国産業が堅調に成長するとの見方によるものである。しかし、同国の消費予測は見掛け消費の長期動向をベースに銅研究会が計算したもので、実際には中国国家計画発展委員会備蓄局による備蓄分も含めた未公表在庫があることから、対前年比見掛け消費計算値と実際の消費との間に大きな乖離が生じる場合があることに注意が必要である。
なお、北米では、消費は引き続き回復するものの動きは緩やかになるとの見込みであり、欧州では2005、2006年共に低成長となる見込みである。
2005年は、高い稼働率による地金生産の増加と地金消費の伸び鈍化により、生産不足が26万tに低下し、更に2006年には9.3万tになる見込みである。2005年の供給途絶分13.3万tを除けば、2006年の地金需給はほぼバランスするとの見込である。
(2) 銅及び銅合金製造工場要覧について
この要覧は、市場の透明性、市場分析や銅地金消費見込み予測のツールといった目的のため、世界の銅及び銅合金一次製造工場(85%以上を網羅)について、操業現状、生産能力、商品別詳細等について取りまとめたもので、2005年版は2005年6月に発行予定との報告があった。
世界の銅及び銅合金一次製造工場の生産能力について、2003年では3,100万t/年であったものが、中国及びイランの生産能力増強(各々8%、5%増)により2004年末では3,160万t/年に拡大し、現在建設中及び計画中のものを含めると2007年には3,270万t/年の生産能力になる見込みである。
(3) 計画中の調査プロジェクト
世界の銅消費における中国の影響、銅需給予測の精度を高める景気判断指標の検討の2プロジェクトが現在計画中であり、銅市場における中国の影響プロジェクトは、(社)日本メタル経済研究所より調査費用の一部資金提供がなされることとなり、2005年第4四半期にドラフトレポートが作成される見込みである。
また、銅需給予測の精度を高める景気判断指標プロジェクトについて、現在はOECD等の景気判断指標を用いて需給予測をしているものの、全ての国が網羅されておらず、国によっては需給予測精度にバラツキが見られることから、景気判断指標に関する検討を行おうとするものである。しかし、現時点において景気判断指標の設定方法等、実際の調査の進め方等に係る詳細について調整されていないことから、事務局で引き続き議論していく方向となった。
環境経済委員会では、事務局より、現在進行中のプロジェクト及び環境規制の動向について報告がなされた。現在進行中のものでは、銅の流通モデル(西欧版)、廃自動車に関する規制が与える影響についてのケーススタディ、銅産業の経済的貢献などがあり、環境規制の動向については、欧州の化学物質規制(REACH)の現状、銅産業に影響を及ぼす規制について報告された。
(1) 銅の流通モデルについて
これは、廃棄物からの銅リサイクリング率を求めるための重要な手段として開発されたもので、まず手始めに西欧に適用され、最終レポートが完成した。現在、本手法を米国に適用すべく、米国から提出されたデータ及び情報に基づき、事務局で作業を実施しており、2005年第1四半期に流通モデル(ドラフト)を構築、2005年第4四半期にドラフトレポートが作成される予定である。
(2) 廃自動車に関する規制が与える影響についてのケーススタディ
これは、環境規制が導入された場合の影響を見極めるために実施しているもので、事務局によって規制に伴う影響に関するインパクトマトリックスのフォーマットが作成された。今後、主要自動車メーカー及び利害関係者に対するインタビューによりマトリックスを完成させる。2005年第3四半期にドラフトレポート作成予定である。
(3) 銅産業の経済的貢献
これは、主要な銅生産消費国及びその地域の経済分析及び経済指標に資することを目的として銅の経済データベースを開発するもので、EUと米国については完了し、2005年第4四半期に概要レポートが作成される予定。今後、間接的、二次的な経済的便益も勘案しつつ、同様のデータベースをアジア、南米に拡大していく予定である。
(4) 欧州の化学物質規制(REACH)の現状及び銅産業に影響を及ぼす規制について
欧州の化学物質規制(REACH:Registration Evaluation and Authorization of Chemical Substances)について、EU議会は2005年1月より、利害関係者との議論及び一般からの意見の聴取を開始。2005年10月24~27日に開催予定のEU議会総会で審議される見込みとの報告があった。
銅産業に影響を及ぼす規制については、銅の使用に影響を及ぼす規制やイニシアティブについて世界的にモニタリングすることを目的としているもので、現在、中国ではEUの規制を参考にしてWEEE、RoHS、EuP、REACHの導入を検討しつつあり、韓国及び台湾でも、有害物質の規制に関して議論している等、アジアでも規制に係る動きが活発化しつつあるとの報告があり、これら銅産業に影響を及ぼす世界の規制及びその動向について、2005年6月にレポートが発行される予定である。
常任委員会では、研究会のメンバーシップ、2004年の決算報告及び2005年予算編成、2004年活動報告及び2005年活動予定について議論がなされた。
研究会のメンバーシップについて、事務局より、日本が2004年11月12日より再加盟したとの報告がなされるとともに、新規メンバーの候補として、タイ、韓国、東欧諸国があがり、今後、加盟に向けた働きかけを行うことでコンセンサスを得た。
2004年の決算報告(現時点)及び2005年の予算編成については、2005年予算の議論の中で、3研究会合理化に係る費用について、3研究会で按分する方向性が提示された。
また、2005年の活動予定の「世界の銅消費における中国の影響」プロジェクトについて、(社)日本メタル経済研究所からの資金提供に感謝するとの発言があるとともに、本調査研究については、2005年第4四半期にドラフトレポートが作成される見込みとの発言がなされた。
総会では、3研究会の事務所選定及び合理化、T/R(Terms of Reference)の変更承認について討議された。
3研究会の事務所選定については、議長より2004年11月の選定委員会でリスボンが候補地として選定されているとの報告があったが、本件について異論は無く、新事務所所在地をリスボンとすることが決定された。
新事務局長の選定に際しては、オープン、透明性をキーワードとして、選定委員会で候補者のショートリストを作成し、2005年10頃を目途に新事務局長を選定する方向性が示された。
T/Rの変更承認については、2004年9月開催の第2回特別総会での合意事項(各国分担金の上限を10%とすること)に基づき、T/Rの一部修正案が提示されたが、特に異論は無く承認された。
次回の銅研究会一般会合の日程は、2005年11月8~9日、もしくは11月15~16日のどちらかで開催予定。