閉じる

報告書&レポート

2005年4月7日 バンクーバー事務所 宮武修一 e-mail:miyatake @jogmec.ca
2005年22号

金属資源の探鉱開発の現状: カナダ・ブリティッシュコロンビア州の銅資源

  1. はじめに

  2.  2001年に成立したカナダ・ブリティッシュコロンビア州(BC州)のBCリベラル党政権は、鉱業に対し比較的冷ややかだった前BC新民主党政権の施策を転換し、鉱業振興を図るための政策パッケージを推進している。このパッケージは、税額控除、自然公園や先住権地域の明確化、地域住民への支援体制の樹立、探鉱許可申請手続きの簡素化、北部開発のテコとなる港湾整備などからなっており、同州の探鉱開発に係る投資価値を次第に高めつつある(2004年カレントトピックス34号など)。また、2004年来の金属価格の高騰により、潤沢な資金が大、小の鉱山会社、探鉱会社に還流、加えて中国などの成長見通しに基づいた巷の中長期の高値予想は新たな投資意欲を喚起しているところ。こうした州の投資環境改善と市況回復の相互作用から、最近のBC州における探鉱開発は近年にない活況を呈している。本稿では、BC州において最も重要な資源の一つである銅資源について、各種雑誌、2005年ラウンドアップ報告、BC州エネルギー鉱山省資料発行の資料、および関係者への取材を基に、最近の探鉱開発の主要な動きを取りまとめた。

  3. BC州の探鉱開発プロジェクト

  4.  BC州における銅資源の探鉱開発の現状を概観するため、主要プロジェクトの現状を簡単に紹介したい。なお各プロジェクトは全て斑岩銅金型鉱床に分類される鉱床を対象とするものである。

    (1) プロジェクトの再開、再評価
      Mount Polley鉱山:Imperial Metals社は、1997年から2001年まで稼行、その後休眠していた2003年から新たに周辺探鉱に着手。この結果、新たな2鉱体の把握に至り鉱量は40.7Mt(M:百万)、0.43% Cu、0.31% Auに拡大、改めて経済性が見いだされた。同社は2005年からの生産再開をアナウンス。
    Gibrartar 鉱山:Taseko Minesは、1972年~99年まで操業した同鉱山の権益をBolidenから99年に獲得。休眠期間の後、Ledcor Miningと共に2004年10月より操業を再開した。生産規模は、粗鉱処理量35,000t/day。金属銅量32,000t相当の銅精鉱、モリブデン450t相当の精鉱をそれぞれ年産する。またSX-EWによるカソード銅4,500tを年産する計画。マインライフは15年。
    Mt. Milligan鉱床:Placer Dome社が1990年に権益取得。1991年実施のFSでは経済性は認められず、その後休眠していたが、2004年に10孔の試錐を行うなど探鉱再開。2005年の探鉱成果を踏まえた上、開発判断がなされる見通し。生産規模は粗鉱処理量45,000t/day、年産金量3,7百万oz。鉱床規模は443Mt、0.4g/t Au、0.179% Cu。

    (2) 開発準備中の鉱山
      Afton鉱床:DRC Resources社は、鉱量枯渇のため90年代に閉山した旧Afton露天採掘ピットの下部で68.7Mt、1.08% Cu、0.85g/t Au、2.62g/t Ag、0.12g/t Pd、の鉱量(予測鉱量込み)をまとめた。同社は今後、14.5M USドルを支出し、坑内採掘による開発計画を作成する計画。インフラを含めた初期開発資金は140M USドルとの見通し。
    Galore Creek プロジェクト:Nova Gold社は、現在FSを作成中。予測鉱量98.8Mt、0.37g/t Au、4.8g/t Ag、0.54% Cuを計上。当初5年間の年産金属量は270,000oz Au、1.8Moz:Ag、91,000t:Cuの見通しで、生産時の総キャッシュコストは、貴金属のクレジットが貢献して、15セント/lb. Cuと低い。また9km近接のCopper Canyonでは同社100%子会社のSpectrum Goldが探鉱実施中で、2005年1月の時点で予測鉱量168Mt、0.35% Cu、0.54g/t Au、7.15g/t Agを報告。
    Red Chrisプロジェクト:BC Metals社は、2004年11月にFSを完成、現在各種許認可の申請作業中。鉱量185Mt、0.414% Cu、0.32 g/t Au。地質鉱量および旧貯鉱を含む見積もりとしては833Mt、0.3365 Cu、0.29g/t Auの値を報告。生産計画によれば、当初期間、粗鉱処理量30,000t/dayにて、銅237,000t、金11.1tを含む精鉱を5年間かけて生産する。マインライフは露天採掘17年、坑道採掘期間合算で25年。インフラを含めた初期開発資金は228M USドル。なお鉱石中の銅鉱物は黄銅鉱、斑銅鉱が主体であるが、Outokumpu社のHydorocopper Processなる手法を用い、現地で精鉱から銅、金、銀を直接湿式回収する計画があり、現在湿式工程のFSを作成中。

    (3) 新鉱化帯の発見
      Woodjamプロジェクト:Fjordland ExplorationおよびWildrose Resourcesは、Mount Polley鉱山の35km南部の探鉱地で試掘を行ったところ、361.2m間、平均分析品位 0.84g/t Au、0.12% Cuの鉱化帯を捕捉した。2005年も探鉱継続。
    Copper Creekプロジェクト:Firesteel社は2004年に6孔の試錐を実施。この結果、242.3m間、平均分析品位 0.44% Cu、0.32g/t Au の鉱化帯を捕捉した。2005年も探鉱継続。など

    (4) 操業鉱山のマインライフ延長
      Highland Valley Copper 鉱山(HVC):Teck Cominco社、Highmount Mining社が操業するBC州最大の操業中の銅山で、年間産銅量は170,000t、モリブデン産量は5,000t/year。Valleyピットを更に深化させる新たな操業計画により、マインライフを5年間延長、2013年までとするよう検討中。
    Huckleberry 鉱山:Imperial Metalsおよび三菱マテリアルらの日系グループらが操業。粗鉱処理量21,000t/dayにて銅精鉱、モリブデン精鉱を生産中。今後3年間操業期間を延長する見通し。また2004年の周辺探鉱を通じて、現ピット北隣に新たな有望鉱化帯を把握。2005年も探鉱を継続予定。
    Kemess South 鉱山:Northgate Minearals社は2004年の周辺探鉱の結果、12Mtの新鉱量を獲得。2004年の生産量は金属銅34,000t、金0.93t。マインライフは2008年までとされるが、隣接のKemess Northの開発如何によっては更なる延長が見込まれる。

    2004年のブリティッシュコロンビア州の操業鉱山と主要開発プロジェクト
    (British Columbia Ministry of Energy and Mines(2005b)より転載)

  5. おわりに

  6.  BC州における2004年のベースメタルの探鉱投資額は2004年比88%増と急伸し、この伸び率はケベック(46%)、オンタリオ(48%)、マニトバ(-2%)らカナダの鉱産各州に比較しても大きい(カナダ天然資源省データ)。BC州の投資が急伸した理由として、多数の在バンクーバーの鉱山会社・探鉱会社がよく親しむフィールドである上、全体に採算ラインの前後にあるマージナルなプロジェクトが多く、より市況の影響を受け易い点が挙げられる。またBC州政府による投資環境の改善努力も大きい。今後とも引き続き改善を継続するとするBC州の姿勢は、90年代のWindy Craggy鉱床開発の取り扱いを巡り傷ついた同州の投資環境への信頼を回復させつつある。こうした州政府の努力に対する評価は、2005年1月のPlacer Dome社長兼CEOの「今やBC州の投資環境は明確に変化した」との言葉に表れているのではないか。他方BC州においては資源開発と環境保全の狭間でおよそ10年を周期に振れるとの専門家の見方もある。BC州の現在の政策がどの程度持続的に継続されてゆくかどうか、市況の推移と共に、注視してゆく必要がある。

    主な文献と資料

    British Columbia Ministry of Energy and Mines, 2005a, Exploration and Mining in British Columbia 2004. 88p.
    British Columbia Ministry of Energy and Mines, 2005b, British Columbia Mines and Mineral Exploration Overview 2004. 16p.
    Metals Economics Group, Internet Services
    Natural Resources Canada, 2004, Exploration and Deposit Appraisal Expenditure, by Mineral Commodity Sought, by Province and Territory, 2003
    Natural Resources Canada, 2005, Exploration and Deposit Appraisal Expenditure, by Mineral Commodity Sought, by Province and Territory, 2004
    各社プレスリリース、ニュースレター
ページトップへ