報告書&レポート
2005年カナダ探鉱・開発協会総会報告
3月6日から9日までの4日間、カナダのトロント市で第73回カナダ探鉱・開発協会総会(Prospectors and Developers Association of Canada:PDAC 2005)が開催された。折からの金属価格の高騰、高水準化により世界的に探鉱活動が活況を呈していることもあって、世界各国から過去最大規模の探査関係者が参加し、探鉱投資に関する商談や情報交換等、最前線の探鉱ビジネスが活発に繰り広げられた。 |
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PDAC総会の概要
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2005年のPDAC総会の特徴
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各金属の市況と今後の見通し
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2004年の探鉱予算と2005年の見通し
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おわりに
PDAC総会は、鉱業関係企業及び政府機関による展示ブース(620件)と、3会場を使った個別分野毎の講演(約191件)とからなる。
展示ブースは、プロジェクトへの商談等を目的にしたInvestor Exchange(333件)と各国政府の鉱業政策や鉱山会社、探査機器メーカー等のPR等を目的としたTrade Show(287 件)に分けられる。
一方、個別分野毎の講演では、毎年恒例として行われる非鉄金属の市況見通し、探鉱プロジェクト、新規発見鉱床、新探鉱技術、等々のテーマからなるTechnical sessionの他、ジュニア企業の活動報告(Excahnge Forum)やブース出展者による最新の探査機器、掘削機器開発の現況や解析ソフトの紹介等(Exhibitors Innovation Forum)が行われた。
なお、参加者数は、カナダ天然資源省の情報によると、昨年の約12,000人を上回る13,000人に達し、過去最高を記録したと報告されている。
2005年のPDACの特徴は、昨年まで話題の中心だった中国市場の動向や持続的な開発等に特化したセッションは影を潜め、今後世界の金属市場の拡大が一層進展する中、供給サイドの中長期的な戦略、取り組みとして、モンゴル、中央アジア、西アジア、中近東、アフリカといったフロンティア地域の地質ポテンシャルに関心を引き付けることを意図したと見られるセッションが数多く見受けられた(セッション名:Mongolia to the Caspian、Africa:A golden safari、Opportunities from the Horn to the Cape等)。また、これら探査活動を支える探査技術の分野ではハード面では空中電磁探査技術(特に、探査深度や分解能に優れている時間領域が主流)の進展や、ソフト面では3次元自動解析をアピールした報告が目につき、物理探査技術の着実な進歩を伺い知ることができた。
(1) 銅
Barclays Capitalによると、2005年の消費は堅調もスピードは鈍化(2004年:7.4%増→2005年:4.6%増)する一方で、供給サイドの回復スピードは早く、需給バランスは2004年の684千tの供給不足から2005年は277千tの供給不足へと不足量は大幅に縮小。しかしながら、在庫は依然減少傾向が継続するため、2005年の金属価格は底固く2,300~3,100ドルで推移し、年平均は2900ドルと2004年を若干上回るとの見方。また、鉱石生産は高い伸びを示すことからTC/RCは高値を維持すると見られる。また、世界的な新規の鉱山開発段階にあるものがいくつかあるが、大規模鉱山の操業は早くて2008年と見る。
中国ファクターについては、現在の中国マーケットの状況は欧州、北米、特に日本で急増した1950年と1973年の間に似ている。70年代から80年代はオイルショック等による経済不況により一人当たりの金属消費は頭打ちになった。90年代に入り、中国の製造業やインフラ建設ブームで上昇し始めた。90年代初頭は中国の世界に占めるシェアは10%だったが、現在では20%になり、2010年には30%に達するものと見られる。具体的には、電力分野で2010年までに発電所、変電所で約5,600万USドルの投資を行う計画で、そのために50万tの銅を消費すると見ている。
(2) 亜鉛
Teck Comincoによると、亜鉛鉱山は長年続いた市況の低迷で、閉山、休山が相次いだため、生産回復の遅れから亜鉛精鉱供給不足が続いており、地金生産も減少している。加えて、中国が2004年に需要の急増で純輸入国へ転換しており、2005年の金属価格は、ベースメタルの中で最も強含みで推移するとの見通し。2005年も供給不足が続き需給バランスは37万tと供給不足が拡大すると予測。TCもスポットで100ドル以下、長期契約で140ドル以下と低い水準が継続すると見る。
(3) ニッケル
Falconbridgeによると、ニッケルの需要は中国を中心としたステンレス需要の成長から2004年から2015年まで、年率4.4%増と予想。2011年までは、十分な鉱山開発プロジェクトがあり、供給面の懸念はなく、需給はほぼバランスしていくとの見方を示している。
(4) その他
Dundee Wealth Managementによると、金価格は、ドル安との相関性が強く、米国の双子の赤字によるドル安の進行はしばらく続くと見る。従って、金価格は強含みで推移し、2005年:459、2006年:478、2007年:488と予測。
Impara Platinumによると、白金については、2004年は自動車の触媒関連で5%アップしたが、宝飾品で12%のダウン。需給バランスは6年ぶりに供給過剰に。2005年は15万ozの供給不足で価格は775~875ドル/ozのレンジになると予想。
Metals Economics Groupによると、2004年の世界の探鉱予算は前年の約6割アップの38億ドルと1998年の水準まで回復した。特にジュニア企業の躍進が顕著で、ジュニア企業の総探鉱予算は前年のほぼ倍額の16億ドルとなった。これは金属市況の回復で一般投資家からの資金調達が活発化したことに加え、カナダジュニア企業への株式投資に係る優遇措置(フロースルー制度)も大きく貢献している。なお、豪州でも同様の制度を導入する動きがある。
また、2004年の特徴として、レイトステージ探鉱(鉱量確定調査、F/S調査)やマインサイト探鉱(既知鉱山周辺調査)の予算がそれぞれ約8割増と大幅に増加したが、レイトステージ探鉱については、価格低迷時に開発が見送られていた案件が昨今の金属価格高騰でフィージブルになったこと、マインサイトについては、主にメジャー企業による昨今の増産に対応するための短期的な鉱量拡大への対応と見られ、今後もこの傾向は続くものと見られる。
2005年の探鉱予算の見通しとしては、金属価格は依然、高水準で推移していることや2004年の各大手企業が記録的な収益を確保していることから、15~25%のレンジでさらに増加し、ピークであった1997年予算の9割程度まで回復すると予想している。けん引役は引き続きジュニア企業で、また、ロシア、中国、中央アジア等の新興国への探鉱投資がさらに増加していくとの見方を示している。
PDAC総会は、今やカナダ鉱業界だけではなく、全世界の鉱業関係者が注目する世界最大の探鉱開発会議と位置づけられるようになった。ブースへの出展も約30か国(カナダ、米国の各州をはじめ、中南米4か国、アフリカ10か国、欧州6か国、アジア5か国大洋州2か国等)にのぼり、国際的な色彩が年々強まってきている。また、テクニカルセッションでのプレゼンテーションでは、今後の探鉱ビジネスのトレンドを探る上で最新かつ貴重な情報を収集できるとともに、各企業ブースやビジネスラウンジでは探鉱投資に関する商談が活発に展開され、最新のビジネス情報が得られる貴重なイベントと認知されている。当機構も昨年よりブースを出展し、JV基礎調査スキームの紹介や過去の事業成果等JOGMEC金属部門の活動状況を世界の資源関係者にアピールするとともに、実際の商談等を通じて探鉱プロジェクト情報を収集・発掘できるタイムリーな機会となっている。 |
