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銅鉱業における副産物クレジット
2004年における世界の産銅企業の中には過去最大の利益を記録している企業がある。例えば、CODELCOの場合、税引き後利益は11.34億ドル(前年比12.7倍)、Phelps Dodgeの純利益も10.46億ドル(前年比11倍)となっている。この要因として、銅生産量の増加(CODELCOは2003年の1,674千tから2004年の1,840千t)や銅価格の高騰(2003年の1,779.87ドル/tから2004年の2,868.34ドル/t)の他、銅鉱山によっては、金・銀・モリブデンの副産物も無視できないものもある。銅鉱山の中には、副産物クレジット(副産物生産額/銅生産量)が60¢/Lbを越えるものもあり銅生産コストを上回る現象も生じている。2003年と2004年の銅生産上位10鉱山を対象に、副産物クレジットについて分析・検討したので報告したい。 |
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世界の銅鉱床
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銅生産上位10鉱山の鉱種別生産額
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銅鉱業による主要非鉄メジャーの売上高と生産コスト
世界の銅鉱床にはポーフィリーカッパー(斑岩銅鉱)があり、銅品位が低いにもかかわらず多くは露天掘りで採掘されるため生産コストが安く、世界で生産される銅鉱石の50~60%を供給している。ポーフィリーカッパーは環太平洋に分布しており、南米ではモリブデンに富む鉱床があり、その例として、Chuquicamata(Cu:0.86%、Mo:0.024%)、El Teniente(Cu:1.16%、Mo:0.02%)、Los Pelambres(Cu:0.65%、Mo:0.02%)があげられる。アジアではGrasberg(Cu:1.08%、Au:0.88g/t)、Batu Hijau(Cu:0.52%、Au:0.41g/t)のような金に富む鉱床がある。
鉱山開発する際には、コスト対象となる主たる対象金属からの収入と、物理的に分離される時点において副次的に産出する金属の収入があり、後者を副産物クレジットと呼んでいる。2003年から2004年の金属価格の高騰に伴い(Cu:61%、Au:13%、Ag:36%、Mo:132%)、生産額に占める位置も大きくなっている。
2003~2004年の銅生産上位10鉱山(Escondida、Grasberg、Chuquicamata、Morenci、El Teniente、Los Pelambres、Collahuasi、Radomiro Tomic、Batu Hijau、Bingham Canyon)に対して、銅・金・銀・モリブデンの生産量に年平均価格を乗じた生産額を算出した。価格は、LMEメタルセツルメント(銅)、スポット(金・銀)、Metals Week(モリブデン)に基づく。2003年における副産物の生産額比率の高い鉱山には、Grasberg(銅生産額の96%)、Batu Hijau(同42%)があり、金の副産物に起因している。2004年には、Grasberg(銅生産額の46%)、Chuquicamata(46%)、Batu Hijau(32%)の鉱山が指摘される(表1及び図2参照)。
副産物の経済的効果を検討するために、副産物を伴う鉱山を対象にして具体的に副産物クレジット(副産物生産額)/(銅生産量)を算出した。2003年における代表的鉱山の副産物クレジットとして、Grasberg/Ertsberg(77¢/Lb)、Batu Hijau(34¢/Lb)、Bingham Canyon (29¢/Lb)、Chuquicamata(23¢/Lb)、Los Pelambres(14¢/Lb)等がある。2004年における代表的鉱山の副産物クレジットには、Grasberg/Ertsberg及びChuquicamata(60¢/Lb)、Bingham Canyon(58¢/Lb)、Batu Hijau(41¢/Lb)、Los Pelambres(28¢/Lb)等がある。
表1 銅生産上位10鉱山の銅及び副産物の生産状況(2003~2004年) |
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図1 銅生産上位10鉱山の鉱種別生産額(2003~2004年) |
非鉄メジャーのアニュアルレポートやジャーナル誌で公表されている銅生産コストによると、2003年のCost to CathodeはFreeport McMoran(68.0¢/Lb)・CODELCO(65.4¢/Lb)・Phelps Dodge(52.0¢/Lb)と推定されている。そのため、鉱山によっては、副産物クレジットで銅生産コストをカバーしている。例えば、2003~2004年のGrasberg/Ertsbergの副産物クレジットは77~60¢/Lbであり、2004年のChuquicamataは60¢/Lbであり、生産コストに近い数字を示している。参考までに、2004年平均のCOMEX銅価格は128.972¢/Lbであることから、各鉱山における膨大な利益が容易に推定される。
2004年における銅生産上位10鉱山の銅生産量は4,511千tであり、世界銅生産の約31%を占めている。銅事業を展開する非鉄メジャー(CODELCO、Phelps Dodge、Freeport McMoran、BHP Billiton等)は、例外なく優良で大規模な銅鉱山のメジャーシェアーを保有している。その結果、冒頭に述べた企業の収益拡大につながっていることが明らかである。
わが国の非鉄鉱山会社や商社も、銅生産上位10鉱山にマイナーシェアーではあるが権益を保有している。
表2 銅生産上位10鉱山と権益保有状況(2004年) |
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