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豪州 vs 中国 「FTA」交渉とその豪州鉱業への影響
| 豪州と中国は自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の二年後の締結にむけて二国間交渉を開始することに合意、豪州John Howard首相は4月18日、北京を訪れ中国首脳と会談、交渉開始の覚書(Memorandum of understanding)に署名、その後の会見で、フィージビリティ・スタディの概要を発表した。 本稿では、豪中自由貿易協定締結にむけた二国間交渉開始、フィージビリティ・スタディの概要と、交渉が今後の豪州鉱業に及ぼす影響について報告する。 |
1. 二国間交渉開始の背景
豪州が、欧州や米国が中国経済を市場経済であることを認めようとしないのにもかかわらず、中国と自由貿易協定交渉に合意した背景には、中国が豪州にとって重要な輸出相手国となっていることに加え、中国経済を市場経済であると認める見返りに今年末に開かれる東アジア・サミットに豪州が参加する際の後押しに中国を利用しようとする思惑があると言われている。
豪州国内では野党労働党等から、中国との自由貿易協定交渉は繊維製品に代表される中国のダンピング輸出、豪州国内の失業率増加を招き、更には豪米関係の悪化につながるとの批判がなされている。
2. 豪中貿易の現状
現在、中国は、豪州にとって第3位の商業貿易相手国(289億豪ドル)、第2位の輸入相手国(179億、豪州全輸入額の12.7%)であり輸出相手国(110億豪ドル、豪州全輸出額の9.3%)である。
一方、豪州は、中国の第13位の商業貿易相手国、第12位の輸入相手国であり輸出相手国である。また、豪州の対中国貿易額は年約20%の割合で増加している。
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| Source: | Australian Department of the Foreign Affairs and Trade Web site |
鉱物資源は、豪州の対中輸出の約60%を占め、2004年は約45億豪ドルの市場規模であり、1995年から470%の増加となった。豪州から中国への輸出上位10品目のうち7品目(鉄鉱石、アルミナ、原油、石炭、ガス、アルミニウム、マンガン鉱石)が鉱物資源であった。
中国は、銅、錫、鉄鋼、亜鉛、鉄鉱石、石炭の世界最大の消費国であり、アルミニウム、原油、鉛は第2位、ニッケルは第3位、金は第4位の消費国である。2004年、中国の鉄鉱石の輸入額は41%増の24億豪ドル(日本を抜いて世界最大)、石炭は72%増の4.2億豪ドル、ニッケルは88%増の1.4億豪ドル、銅は35%増の1.6億豪ドル、アルミニウムは26%増の12億豪ドルであった。
豪州は、これら鉱物資源の最も大きな供給源となっており、Rio Tinto社は中国の輸入鉄鉱石の約25%、BHP社の売上の10%(2003年は5%)は中国からとなっている。
他方、投資分野では、中国は豪州第14位の投資元相手国(22億豪ドル)であり、第18位の投資先相手国(12億豪ドル)となっている。
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| Source: | Australian Department of the Foreign Affairs and Trade Web site |
3. 自由貿易協定のメリット
自由貿易協定による利益は、豪中共同フィージビリティ・スタディによると、関税の引下げ或は撤廃によって、豪州では0.012%、中国では0.006%、それぞれ経済成長に寄与し、その額は、2015年までに、豪州は9.4億USドル(13億豪ドル)、中国は16億USドル(133億人民元)に相当すると見積られている。また、豪州の対中国輸出額は14.8%増の43億豪ドル、中国の対豪州輸出額は7.3%増の20億USドル(166億人民元)に及ぶと試算されている。
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| Source: | Australia-China Free Trade Agreement Joint Feasibility Study;Australia Government, Department of Foreign Affairs and Trade |
国内総生産(GDP)への影響は、年0.04%の増加が期待されており、豪州は2015年までに総額244億豪ドル、中国は832億豪ドルに及ぶと考えられている。
また、輸出は豪州が0.9%増に対して中国が0.5%増、輸入は豪州が1.5%増に対して中国が0.4%増と見積もられている。雇用面では、豪州では繊維・自動車、中国では鉱業・農業などの分野で失業者が発生するものの全体として雇用は増え、賃金は豪州で0.8%増、中国で0.4%増と試算されている。
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| Source: | Australia-China Free Trade Agreement Joint Feasibility Study;Australia Government, Department of Foreign Affairs and Trade |
また、投資分野では、自由化が進み、豪州は年0.011%、中国は0.016%で増加すると考えられており、2015年までに豪州から中国への投資は4.8億USドル、中国から豪州への投資は318USドルに及ぶと試算されている。
4. 自由貿易協定の鉱業分野への影響
中国の平均関税率は9.9%(算術平均値)で、鉱物資源に対する関税(金属7.3%、石油6.3%)は比較的低いが、自由貿易協定によって表4に上げた鉱物資源に対する関税の引下げ或は撤廃が検討されている。
豪州鉱業協会(Mining Council of Australia)は、自由貿易協定によって持続可能な鉱山開発や鉱山保安、環境などの鉱山技術分野(豪州の鉱山技術関連輸出額は12.4億豪ドルに及ぶ)での取引が活発になることを期待している(2004年の鉱山技術関連の対中国輸出額は9,000万豪ドルで、インドネシアの1/3以下)。また、知的所有権や契約法関係などにおける貿易及び投資の非関税障壁の撤廃に貢献すると考えられており、世界の60%を占めると言われる鉱山ソフトウェアへの中国のアクセスを容易にすると考えられている。
中国企業は、豪州の資源分野への投資、特に、鉄鉱石、銅、ボーキサイト、ニッケル、鉛、亜鉛、ウラン等に興味を示しており、2003年6月時点で、中国企業15社による豪州の鉱業分野への投資額は3.3億豪ドルに及んでいる。他方、豪州企業の中国鉱業への投資も、輸出入の権利の保障、探査・開発へのアクセスの改善、探鉱・開発・生産における諸制限の撤廃などによって促進されることが期待されている。
5. おわりに
豪州は、歴史的には欧州と強いつながりを持つが、その地理的条件から経済分野においてはアジア、特に日本との関係を強めてきた。近年の中国経済の急成長は豪州にとって鉱産資源や農産物などの一次産品の輸出先として重要な市場として位置づけられている。西欧諸国に先駆けて中国と自由貿易協定交渉に合意したのもその現われと言えよう。
鉱業分野では、中国企業と豪州との間では、鉄鉱石の価格交渉、石炭企業への投資など鉄鉱・エネルギー分野での話題が先行しているが、今後、ニッケル、銅などの非鉄金属分野でも活動が活発化すると思われる。
参考文献
- Australian Department of the Foreign Affairs and Trade Web site
- Mineral Council of Australia、Fact Sheet -Australia and China Minerals Trade-
- Australia-China Free Trade Agreement Joint Feasibility Study;Australia Government, Department of Foreign Affairs and Trade
- “Give and take as China inches towards trade talk”, The Sydney Morning Herald, April 20, 2005
- “China deal delivers ドル24bn bonanza”, The Australian Financial Review, April 20, 2005
- “Services the winner Beijing deal”、The Australian, April 20, 2005


