報告書&レポート
国際鉛亜鉛研究会定期会合(2005年春)の概要報告
2005年4月25~26日、国際鉛亜鉛研究会の定期会合(第9回経済環境委員会、第33回産業アドバイザリーパネル、第100回常任委員会)が例年通り英国ロンドンにおいて開催された。以下その概要を報告する。 同総会は、同研究会メンバー国等から約50人の鉛・亜鉛関係の政府、民間関係者、国際機関関係者が参加し、鉛・亜鉛需給の現状と展望、産業の動向、環境問題、研究会の進め方等について、研究会の下に設けられた委員会ごとに報告・討論等がなされた。今回の特徴としては、例年の鉛亜鉛需給予測、鉛亜鉛産業に影響を与える環境規制等のレビューに加えて、既に他の非鉄金属研究会(国際銅研究会、国際ニッケル研究会)との本部・事務局所在地の統一が決定されている合理化問題について議論がなされた点があげられる。 |
1. 常任委員会
鉛・亜鉛需給の2005年の展望について事務局から以下のような報告があった。
1・1 鉛需給の2005年の展望
2005年の世界の鉛地金需要は、2.5%増の725万tと予測。主因としては、中国の鉛消費が8.1%増となることによる。一方、米国と欧州の需要は、バッテリー生産が低コスト国にシフトしていることにより、両地域とも2004年と同じレベルに止まる見込み。世界の鉛鉱山生産は、主に豪州(23%増)、中国(12%増)、欧州(11.5%増)の増産により、10.8%増の337万tと予測。世界の鉛地金生産は、欧州の鉛地金生産が過去4年間にわたる減少の後、8.8%増加、これに更なる中国の増産も加わり、3.7%増の709万tと予測。2005年末に、米国国家備蓄の鉛地金は残る全ての備蓄が売却される予定。1993年以来、米国国家備蓄からは、平均年4万tの鉛地金が売却されていたが、2005年は前年と同様5.5万tと予測。2004年の中国の鉛精鉱輸入は、鉛金属分で43万tを記録したが、2005年は同様のレベルを予測。最近の貿易データでは、中国の鉛地金純輸出は6%減の38万tとなる見込み。2005年の西側世界の鉛地金需給は10.5万tの不足となると予測。
1・2 亜鉛需給の2005年の展望
2005年の世界の亜鉛地金需要は、中国の需要が8.7%増となることを主因として、2.4%増の1,069万tと予測。米国と欧州の需要は、2004年と同じレベルに止まる見込み。世界の亜鉛鉱山生産は、5.2%増の1,015万tと予測。豪州、中国、インド、アイルランド、ギリシャ、ロシア、スウェーデンを含む多くの国で生産増となり、カナダだけ14%減と予測。世界の亜鉛地金生産は、Umicore社のフランスにおける生産削減を主因とした欧州の亜鉛地金生産が減少するにもかかわらず、3.3%増の1,049万tと予測。Vedanta社Hindustan製錬所の拡張でインドが28%増と大幅に増加、中国、日本、カザフスタン、韓国でも増産が予測されている。中国の亜鉛地金純輸入量は、2005年10万tを超えると予測、最近の傾向から大きな割合の輸入原料がカザフスタンから供給される見込み。2005年の西側世界の亜鉛地金需給は20万tを少し下回る不足となると予測。
|
1・3 財務・加盟問題
会計監査や各国の分担金支払い状況、分担金滞納国(アルジェリア、モロッコ、セルビア・モンテネグロ)の投票権剥奪等について説明がなされた。
1・4 非鉄金属研究会の合理化プロセス
常任委員長の仏代表から、2005年3月15日の国際鉛亜鉛研究会特別総会で3つの非鉄金属研究会の合同の本部・事務局の所在地がポルトガルのリスボンに決定したこと、スケジュールとして、合理化プロセス完了は2005年12月31日とし、このための事務所のスタッフ、事務手続きを進めること、3金属研究会の新事務局長選出について、オープンかつ透明性のあるリクルート・プロセスし、公募は6月に締め切り、その後、面談等絞込みを行い、遅くとも10月までには選出することなどが説明された。この他、事務局スタッフ問題や組織構造につき議論が行われ引き続き検討することとなった。
1・5 次回総会等について
定例の秋の総会(第50回総会)は、10月26~28日、ロンドンにて開催されること、来年以降の会合については、他の金属研究会との合同開催等が検討される必要があることが説明された。
2. 経済環境委員会
ICMMから、現在、鉱業・金属産業のための持続的発展に関する指標の策定作業(14項目の新指標設定し、パイロット・プロセスを今後実施)についての講演があった後、事務局等より、鉛亜鉛産業に大きな影響を与える主要な国際イニシアティブとして、EUにおける温室効果ガス排出権取引スキーム(Euromeatuxは同スキームが欧州にのみ導入された場合の非鉄業界への影響を懸念)、金属リスクアセスメントに対する米国EPAのフレームワーク、2005年2月のUNEPの重金属管理に関する会合(この会合は、水銀がターゲットであったが、今後の議論に備えて鉛・カドミウムの理解もUNEPレベルで深めるべき)、最近の鉱業ロイヤリティ賦課に関するレビュー(賦課の対象として売上、NSR、収益、純利益等様々なケースあり、南アの事例紹介)、使用済み酸化鉛バッテリーの取り扱いに関するバーゼル条約の訓練マニュアル(中南米・カリブ諸島、カンボジアのバッテリー回収国家計画に適用、他の廃棄物管理マニュアルのモデルとなる)について、説明がなされた。
また、グリーン・レッド・イニシアティブの検討状況(第2回ワークショップ開催)、亜鉛と鉛に関するリスク・アセスメントの現状(亜鉛は本年半ばに報告書完成、10月までにEU各国に要約とリスク削減戦略が提示される予定、鉛は蘭政府が最終原稿をレビュー中、5月には欧州化学政策当局に送付され、技術委員会でレビューされる予定)、EU新化学政策の現状(2004年11月に英国及びハンガリー政府が提案した一物質一登録OSORについて、2005年1月、費用対効果や実行可能性を検討、また公開ヒアリングを開催、原案では原油等有機原材料が除かれたものの、一次二次の金属原材料は対象等)、EUバッテリー指令の現状(全てのバッテリーの収集とリサイクルを義務付ける指令、2004年12月に産業用バッテリーへのカドミウム使用禁止を除外、この案の欧州議会での承認が必要)などが説明された。
また、研究会の開発途上加盟国を支援するためのプロジェクトとして、国際亜鉛協会(IZA)と中国めっき協会で実施している中国溶融亜鉛めっきプロジェクトの現状、IZAとインド鉛亜鉛開発協会で進めている亜鉛ダイカストに技術移転のためのセンター設立の状況、その他の一次産品共通基金プロジェクトの検討状況について説明がなされた。
3. 産業アドバイザリーパネル(IAP)
IAPメンバーから、最近の鉛亜鉛市場、リサイクルに関する報告、議論がなされた後、鉛亜鉛等の金属市場における銀行や投資ファンドの役割、スウェーデンのBoliden社の最近の状況についての講演が行われた。
また、EUで導入を議論している化学政策REACHと鉛亜鉛製品に関するIAPとしてのポジション・ペーパーが提出され、この中でこの規制は、鉛亜鉛を扱う産業に、その得られる効果とは不釣合いの事務的・財務的負担を増加させ、鉛亜鉛製品に対する深刻な競争上の歪みをもたらすものと批判している。具体的には、REACHの対象から除外される有機化学分野の原材料(天然ガス、原油、石炭)と同様に、鉛亜鉛の鉱石・精鉱は無機の原材料として除外すること、鉛亜鉛合金の定義明確化のためのGHS分類の使用、鉛亜鉛スクラップは現存の規制でカバーされていることから除外することなどを求めている。