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報告書&レポート

2005年5月26日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年34号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年4月)

 1. 国際市場

 4月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が10か月連続で上昇して0.4%増の3,394.48USドル/t、ニッケルは4か月ぶりに下落し0.3%減の16,141.90USドル/t、亜鉛は7か月ぶりに下落し5.6%減の1,300.14USドル/tとなった。銅、ニッケル、亜鉛ともに依然高いレベルであるものの、市場には不透明感が増してきている。銅は、4月12日に3か月先物が史上最高値を記録するなど急騰した後急落、その後中国の第一四半期の経済成長率が引き続き高かったことやドル安等により回復、ニッケルは、欧州を中心としたステンレス需要に減少の見込みがある一方、LME在庫が減少し続けている、亜鉛は、第一四半期の中国等からの供給増、他の金属と比べて高いLME在庫レベル等を理由に4月14日に急落したが、LME在庫の減少等引き続きタイトな需給により今後は回復するとの見方もあるなど、市場では各金属とも価格を上下させる両方の要因が複雑化してきている。今後も、基本的にタイトな需給に加えてファンド資金等の動きにより、当面高いレベルで推移しつつも、市場は不安定な動きを見せ続けると考えられる。

LME平均価格と在庫
  平均価格(cash settlement, USドル/t) 在庫(t)
2005年3月 2005年4月 前月比 2005.3.31 2005.4.29 増減
Cu 3,379.60 3,394.48 +0.4% 44,775 59,975 +15,200
Ni 16,190.00 16,141.90 -0.3% 10,002 6,240 -3,762
Zn 1,377.69 1,300.14 -5.6% 574,050 545,000 -29,050

2. 需給動向

2005年1~2月の需給状況(出典:国際銅・ニッケル・鉛亜鉛研究会)
  鉱山生産 精錬生産 消費 需給バランス
(t)
1~2月(t) 前年同月比 1~2月(t) 前年同月比 1~2月(t) 前年同月比
Cu 2,301,900 +8.1% 2,618,900 +4.6% 2,594,500 -5.3% +24,400
Ni 214,600 +1.9% 212,500 +0.3% 210,900 +3.7% +1,600
Zn 1,646,000 +8.3% 1,703,000 +5.8% 1,761,000 +6.4% -58,000

2・1 銅

【需要】
 国別の2005年1~2月の消費量は、最大消費国中国が前年同月比4.3%増となる一方、その他主要国では2位米国16.2%減、3位日本7.7%減、4位ドイツ8.9%減となり、世界計では5.3%減の2,594.5千tであった。世界の消費を月別に見ると、2004年11月1,431.8千t、12月1,284.3千t、2005年1月1,346.9千tと増減を繰り返し、2月は1,247.6千tと減少した。注目の中国の消費動向も、2004年11月303.1千t、12月263.7千t、2005年1月296.3千tと増減を繰り返し、2月は265.7千tと減少した。国際銅研究会は世界の銅地金消費を2005年5.3%増の17,370千t、2006年4.6%増の18,167千tと予測している。

【供給】
 2005年1~2月の鉱山生産は前年同月比8.1%増の2,301.9千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2004年後半1,200千t台を維持し、11月1,284.3千t、12月1,350.6千tと04年最高値を更新した後、2005年1月1,211.1千t、2月は1.090.8千tと更に減少した。鉱山の設備稼働率も2004年は高レベルで推移し、12月97.4%まで上昇したが、2005年1月は86.9%に低下、2月も86.3%であった。2005年1~2月の国別生産量は、最大生産国チリが前年同月比2.7%増、2位米国7.7%増、3位ペルー1.0%増、4位豪州16.2%増、5位インドネシアがGrasberg鉱山の事故からの回復により94.5%増と大幅に増加し、各国とも増産となった。国際銅研究会は世界の銅鉱山生産を2005年8.0%増の15,678千t、2006年1.0%増の15,840千tと予測している。
 2005年1~2月の地金生産は前年同月比4.6%増の2,618.9千tであった。月別の地金生産は2004年末まで増加傾向で11月1,364.6千t、12月1,385.5千tと増加したが、2005年1月1,352.6千t、2月1,266.3千tと減少した。2004年11月まで精錬所稼働率は上昇傾向にあったが、2004年11月83.6%、12月81.8%、2005年1月79.5%と減少、2月は82.1%と上昇した。2005年1~2月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が4.3%増、2位中国23.0%増、4位米国0.5%増、5位ロシア4.6%増となる一方、3位日本1.8%減、6位ドイツ3.4%減となったが、全体では増加した。国際銅研究会は世界の銅地金生産を2005年8.5%増の17,110千t、2006年5.6%増の18,074千tと予測している。

【需給バランス】
 2005年1~2月は24.4千tの供給超過であった。2004年12月に101千tの供給超過となった以降、2005年1月6千t、2月19千tの供給超過となっている。季節調整後の需給バランスでは、2004年12月25千tの供給不足であったが、2005年1月13千t、2月47千tの供給超過となっている。国際銅研究会は世界の銅地金需給を2005年259千tの供給不足、2006年93千tの供給不足と予測している。

【価格】
 3,409USドル/tからスタートした 4月のLME銅価格は、一旦3,300USドル台に下落したものの、4月7日に3,400USドル台に回復、12日には3,497USドルを記録した後3,300USドル台まで下落した。その後20日に3,466USドルを記録した後3,300USドル台と3,400USドル台の間で下降上昇を繰り返し、29日には3,348.5USドルで終了した。

2・2 ニッケル

【需要】
 2005年1~2月の消費量は前年同月比3.7%増の210.9千tであった。最大消費国の日本が1.6%減となったものの、2位中国が33.3%増と大幅増、3位米国5.7%増、4位韓国4.7%増、5位ドイツ2.4%増、6位台湾5.6%増となり、全体では消費量が増加した。

【供給】
 2005年1~2月の鉱山生産は前年同月比1.9%増の214.6千tであった。最大生産国ロシアは増減なし、3位豪州0.3%減、5位ニューカレドニア16.1%減となったものの、2位カナダ4.1%増、4位インドネシア7.9%増となり、全体としては微増となった。
 2005年1~2月の一次地金生産は前年同月比0.3%増の212.5千tであった。最大生産国のロシアが増減なし、2位日本が18.3%減と大幅減となったものの、3位カナダ10.2%増、4位豪州4.4%増、5位中国1.4%増、6位ノルウェー6.3%増となり、全体としては微増となった。

【需給バランス】
 2005年1~2月の需給は1,600tの供給超過となった。一方LMEの在庫量は、4月29日現在6,240tとなり、前月末から3,762t減少している。

【価格】
 LMEニッケル価格は、4月4日と13~18日に15,000USドル/t台を記録した以外、4月28日まで16,000USドル台の前半を維持し、29日には16,660USドルで終了した。

2・3 亜鉛

【需要】
 2005年1~2月の消費量は前年同月比6.4%増の1,761千tであった。2位米国が0.5%減となったが、最大消費国の中国が11.3%増、3位日本5.1%増、4位ドイツ7.2%増、5位韓国19.1%増となり、全体としては増加した。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金消費を2.4%増の10,692千tと予測している。

【供給】
 2005年1~2月の鉱山生産は、4位カナダが前年同月比12.1%減となったが、最大生産国の中国が14.5%増、2位豪州9.8%増、3位ペルー6.3%増、5位米国16.0%増、6位メキシコ6.2%増となり、世界合計では8.3%増の1,646千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛鉱山生産を5.2%増の10,147千tと予測している。
 2005年1~2月の地金生産は、最大生産国の中国が前年同月比3.4%増、2位カナダ12.4%増、3位韓国3.6%増、4位日本2.8%増、6位豪州2.7%増となり、5位スペインが2.3%減となった以外は増加し、全体で5.8%増の1,703千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金生産を3.3%増の10,486千tと予測している。

【需給バランス】
 2005年1~2月の需給バランスは58千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、4月29日現在545.0千tとなり、前月末から2.9万t減少している。国際鉛亜鉛研究会は2005年の亜鉛地金需給を西側世界で193千tの供給不足、世界全体で206千tの供給不足と予測している。

【価格】
 1,300USドル/t台前半でスタートした4月のLME亜鉛価格は、4月14日に1,200USドル台前半まで急落した後1,200USドル台後半まで上昇したが伸び悩み、29日には1,283USドルで終了した。

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