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報告書&レポート

2005年7月21日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年48号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年6月)


1. 国際市場

 6月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が2か月ぶりに上昇し8.5%増の3,524.07USドル/t、ニッケルは2か月ぶりに下落し4.6%減の16,159.55USドル/t、亜鉛は3か月ぶりに上昇し2.6%増の1,275.73USドル/tとなった。銅、ニッケル、亜鉛ともに依然高いレベルを維持し、市場の不透明感が増す中で価格の乱高下が激しくなってきている。銅は、歴史的に低い在庫レベルと地震、事故、スト等による供給不安から投機資金が大量に流入し価格が急上昇、2005年後半から需給緩和すると言われる中、史上最高値を記録したが、今後の急落の可能性も指摘されている。ニッケルは、LME在庫が依然低いレベルを継続しているが、ステンレス需要の減退予測から足元の市場が弱気になってきている。亜鉛は、需要の鈍化やLME在庫が増加に転じていることで価格は落ち着いているが、精鉱不足が顕在化してきており、中国の需給両面での動きによっては今後の動きが大きく変化すると見られている。各金属とも今後も基本的にタイトな需給を背景に、ファンド資金の動き等によって市場が急変する可能性を秘めており、不安定な動きが続くと考えられる。

LME平均価格と在庫
  平均価格(cash settlement, USドル/t) 在庫(t)
2005年5月 2005年6月 前月比 2005. 5.31 2004. 6.30 増減
Cu 3,249.10 3,524.07 +8.5% 45,225 429525 -15,700
Ni 16,931.50 16,159.55 -4.6% 7,878 7,248 -630
Zn 1,243.63 1,275.73 +2.6% 524,825 611,550 +86,725
LEM 月平均価格の推移

2. 需給動向

2004年1~10月の需給状況 (出典:銅、ニッケル、鉛亜鉛国際研究会)
  鉱山生産 地金生産 地金消費 需給バランス
(t)
1~4月(t) 前年同期比 1~4月(t) 前年同期比 1~4月(t) 前年同期比
Cu 4,758,500 +6.3% 5,296,200 +3.9% 5,444,900 -4.4% -148,700
Ni 428,100 +0.3% 432,300 +2.9% 430,400 +3.1% +1,900
Zn 3,158,000 +0.8% 3,467,000 +5.9% 3,511,000 +2.2% -44,000

2・1 銅
  【需要】 国別の2005年1~4月の消費量は、最大消費国中国が2004年同期比3.1%増となる一方、その他主要国では2位米国11.5%減、3位日本10.3%減、4位ドイツ10.7%減、5位韓国8.6%減となり、世界計では4.4%減の5,444.9千tであった。世界の消費を月別に見ると、2005年1月1,399.6千t、2月1,254.7千t、3月1,398.1千tと増減を繰り返していたが、4月は1,392.5千tと前月とほぼ同じレベルとなった。注目の中国の消費動向は、2005年1月318.3千t、2月256.5千t、3月321.7千tと増減を繰り返し、4月は294.9千tと前月から若干減少した。国際銅研究会は世界の銅地金消費を2005年5.3%増の17,370千t、2006年4.6%増の18,167千tと予測している。
  【供給】 2005年1~4月の鉱山生産は2004年同期比6.3%増の4,758.5千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2004年最高値を記録した12月以降、2005年1月1,204.6千t、2月1.089.0千tと一旦減少したが、3月に1,250.1千tと回復、4月は1,214.8千tと減少したものの120万t超えるレベルを維持している。鉱山の設備稼働率も2004年後半は90%を大幅に超える高レベルで推移した後、2005年に入り80%後半に下落、4月は89.1%であった。2005年1~4月の国別生産量は、3位ペルーが2004年同期比3.1%減となった以外の主要国は、最大生産国チリが0.2%増、2位米国11.7%増、4位豪州12.3%増、5位インドネシアがGrasberg鉱山の事故からの回復により70.3%増と大幅に増加した。国際銅研究会は世界の銅鉱山生産を2005年8.0%増の15,678千t、2006年1.0%増の15,840千tと予測している。
 2005年1~4月の地金生産は2004年同期比3.9%増の5,296.2千tであった。月別の地金生産は2004年末までの増加傾向から2005年1月1,365.8千t、2月1,241.0千tと減少、3月は1,364.6千tと回復、4月は1,324.8千tと若干減少した。2004年11月まで精錬所稼働率は上昇傾向にあったが、2004年12月以降伸び悩み80~81%で低迷、2005年4月80.0%となっている。2005年1~4月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が1.4%増、2位中国20.4%増、5位ロシア7.7%増となる一方、3位日本0.5%減、4位米国1.5%減、6位ドイツ1.2%減となったが、全体では増加した。国際銅研究会は世界の銅地金生産を2005年8.5%増の17,110千t、2006年5.6%増の18,074千tと予測している。
  【需給バランス】 2005年1~4月は148.7千tの供給不足(季節調整後は22千tの供給不足)であった。2004年12月に供給超過となった以降、2005年1月34千t、2月14千t、3月34千t、4月68千tと供給不足が継続している。季節調整後の需給バランスでは、2005年1月26千tの供給不足の後、2005年2月15千t、3月15千tと供給超過となり、4月は26千tの供給不足となっている。国際銅研究会は世界の銅地金需給を2005年259千tの供給不足、2006年93千tの供給不足と予測している。
  【価格】 3,202USドル/tからスタートした6月のLME銅価格は急上昇し、6月6日、7日と3,500USドル台を超えた後、一旦僅かに3,400USドル台まで下落したものの、6月10日に再び3,500USドル台を記録した後も上昇し、6月17日に史上最高値3,670USドルを記録、6月24日にも同じ3,670ドルを記録するなど高いレベルを維持し、6月30日には3,597ドルで終了した。

2・2 ニッケル
  【需要】 2005年1~4月の消費量は2004年同期比3.1%増の430.4千tであった。最大消費国の日本が6.6%減となった以外は、2位中国が32.7%増と大幅増、3位米国7.3%増、4位韓国4.7%増、5位ドイツ0.9%増、6位台湾8.3%増と多くの主要国で増加となり、全体でも消費量が増加した。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル地金消費を4.1%増の1,304.2千tと予測している。
 2005年1~4月の一次地金生産は2004年同期比2.9%増の432.3千tであった。2位日本が3.8%減、3位カナダ1.6%減となったものの、最大生産国のロシアが0.5%増、4位豪州が16.6%増、5位中国5.8%増、6位ノルウェー13.1%増となり、全体としては増加となった。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル地金生産を4.4%増の1,309.9千tと予測している。
  【需給バランス】 2005年1~4月の需給は1,900tの供給超過となった。一方LMEの在庫量は、6月30日現在7,248tと前月末から若干減少し、依然低水準である。国際ニッケル研究会は世界のニッケル地金需給を2005年6,300tの供給超過(日本の備蓄売却分600tを含む)と予測している。
  【価格】 16,825USドル/tでスタートした6月のLMEニッケル価格は大きな変動を記録した。6月3日に17,295USドルと17,000USドル台まで上昇した後は下落傾向となり、6月8日に16,000USドル台となり、しばらくは16,000USドル台を維持していたが、6月22日に15,000USドル台に下落した後下げ足を早め、6月24日には14,000USドル台に下落、6月30日には14,700USドルで終了した。

2・3 亜鉛
  【需要】 2005年1~4月の消費量は2004年同期比2.2%増の3,511千tであった。2位米国が10.1%減、3位日本2.5%減、4位ドイツが0.6%減となったが、最大消費国の中国が8.7%増、5位韓国が14.1%増となり、全体としては増加した。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金消費を2.4%増の10,692千tと予測している。
  【供給】 2005年1~4月の鉱山生産は、最大生産国の中国が2004年同期比1.1%減、2位豪州0.7%減、4位カナダ13.9%減、6位メキシコ2.6%減となる一方、3位ペルーが2.2%増、5位米国が0.8%増、その他生産国での増産もあり、世界合計では0.8%増と微増の3,158千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛鉱山生産を5.2%増の10,147千tと予測している。
 2005年1~4月の地金生産は、最大生産国の中国が2004年同期比6.0%増、2位カナダ7.0%増、3位韓国5.8%増、4位日本10.4%増となり、5位スペインが1.1%減、6位豪州が0.6%減となったものの、全体では5.9%増の3,467千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金生産を3.3%増の10,486千tと予測している。
  【需給バランス】 2005年1~4月の需給バランスは44千tの供給不足となった。一方LMEの在庫量は、6月30日現在611.6千tとなり、前月末から8.7万tも増加している。国際鉛亜鉛研究会は2005年の亜鉛地金需給を西側世界で193千tの供給不足、世界全体で206千tの供給不足と予測している。
  【価格】 1,271USドル/tでスタートした6月のLME亜鉛価格は、6月6~8日には1,300USドル台を記録した後、6月27日までは1,200USドル台後半の安定した値動きで推移した。その後若干下落し、6月30日には1,223USドルで終了した。

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