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金属資源の探鉱開発の現状:北米地域のモリブデン資源
| 2005年5月のキロ当たりモリブデン平均価格は80.7ドルと(酸化モリブデン純金属分、メタルズウィーク調べ)、2001年の同平均価格5.2ドルに比べ、実に15倍強の水準に達するなど依然として記録的な高値更新は継続しているところ(図)。これを受け、主たる供給地である北米地域では、モリブデン鉱山の増産や再開、休眠状態であった案件の始動、鉱量獲得のための探鉱が加速している。本稿では、カナダ、米国の主要生産州におけるこうした動きを中心にモリブデン資源をめぐる現状について報告したい。 |

1. モリブデン資源の供給
2004年の世界モリブデン生産量の国別割合は、米国(26%)、中国(24%)、チリ(23%)、ペルー(7%)、カナダ(6.5%)の順に大きい。産地別では、南北アメリカ地域のロッキー~アンデス山脈からおよそ3/4が生産される構造となっており、地理的な偏りが大きい。南北アメリカ地域のモリブデンは、CODELCOおよびPhelps Dodgeの二大生産者により主に供給されるが、両者のモリブデン生産の合計は、世界生産の過半に達するなど、現在のところ半寡占的な供給構造を呈している。
2. 市況見通し
過去、1979年にも供給不足からキロ当たりモリブデン価格は60ドル超と高騰したが、81年には11ドルに急落、短期の内に市場は崩壊した履歴がある。82年以後の景気後退や新規銅鉱山からのバイプロダクトとしての生産増により、その後も長らく市況は低迷した。 今回の市況について、長期継続する見通しを持つ専門家はほとんどいないもの、他方、80年代初頭ほどの市況下落は生じにくいとする見方もある。需要面では、原油価格上昇に伴いモリブデンを添加する高級鋼材を多用する大規模パイプライン建設計画が多数存在すること、また肥料・触媒など新用途の出現など、堅調な需要は引き続き継続すると見通される。一方供給面では、中国の生産縮小と輸出減、銅鉱山における湿式回収の広がりなど、モリブデン供給の拡大を阻む要因が存在している。このことから、先々いったん市況は冷却するにせよ、キロ当たり22ドル以上の水準で安定的に推移するという見通しも専門家の間には存在する(Northern Miner)。
3. 北米地域のモリブデン鉱山の生産および探鉱開発状況
表には南北アメリカ地域における主要な単体のモリブデン鉱床の規模と品位を示す。このうち、とりわけ優良鉱床が数多く分布するカナダ・ブリティッシュコロンビア州および米国・コロラド州の主要なモリブデン鉱山および開発準備中のプロジェクトについて最近の動向を取りまとめた。
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3-1 カナダ・ブリティッシュコロンビア州
- ・Endako鉱山
- Thompson Creek Mining社(75%)、双日現地子会社(25%)が権益保有するモリブデン鉱山。金属換算でモリブデン5,000トンを年産。2004年からマインライフ延長のための投資(ピット拡張)に着手。露天採掘の対象となる残存鉱量は80.4百万t(MoS2:0.063%)とされ、これは少なくとも2011年までの採掘を賄う量とされる。1965年よりPlacer Domeにより生産開始、97年に現オーナーに権益が移転された。
- ・Davidson鉱床
- 同鉱床の100%の権益を保有するBlue Pearl Mining社は、2005年4月よりFS調査、環境調査、各種許認可の取得準備に着手、2007年央の出鉱を目指す。鉱量75百万t、0.295%MoS2(カットオフ0.2%)。生産規模は粗鉱処理量2,000t/日、年産モリブデン10,500tで、硫化物精鉱はEndako鉱山のプラントで酸化処理する計画。Davidson鉱床は同州中北部の拠点Smithersの西部10kmに位置。1944年に発見され、60~70年代にClimaxおよびAmax両社により集中的に探鉱され鉱量が確認された。97年には当時の権益ホルダー(Verdstone社)により、いったん開発計画が作成されたもの、市況の低迷から開発は棚上げされていた。Blue Pearl Mining社は開発判断に向けての資金を確保するため、2005年6月下旬に市場から10.3百万ドルを調達したところ。
- ・Adanac鉱床
- Moly社が100%権益を保有する開発待機案件。ユーコンとの州境に近いAtlinの北東25kmに位置。埋蔵鉱量205百万t、MoS2:0.062%。同社は2004年からRuby Creek Projectとして再評価(プレFS)に着手、選鉱試験、追加鉱量獲得の探鉱を加速している。2005年5月にはBC州政府に対して環境評価など開発計画のレビューを申請した。2005年6月末にプレFSを完成、また同年秋を目途に最終的なFSを完成させる計画。開発規模は粗鉱処理量2万t/日で20年間の生産を行う。同鉱床では、1969年よりPlacer社ほか数社による3万メートルを超える試錐が行われ、79年には最終FSも作成されたもの、直後の市況の急落からプロジェクトは塩漬けとなっていた。
- ・Max鉱床
- Roca Mines社が100%の権益を保有するアドバンスステージの案件。75年から82年にかけてNewmontとEssoのJVにより14百ドル42.9百万t、MoS2:0.12%(カットオフ0.06%)が獲得された。このうち26万tは1.17%に達する高品位鉱に相当。同社ではこの高品位部の優先開発を念頭にFS作成が急ぎ進められている。同社は2005年夏に許認可申請に着手、年内に最終的な開発判断を行いたいとする。
3-2 米国・コロラド州
- ・Henderson鉱山
- Phelps Dodge社の子会社Climax Molybdenum社が生産にあたるコロラド州Empireに位置する坑内採掘鉱山。2005年5月にはモリブデン生産量を2006年半ばまでに年間18,100t(4千万ポンド)に増大する計画を明らかにした。Climax Molybdenum社は、市況の上昇と共に同鉱山生産を増大させつつあり、2001年の年間生産量は8,400tであったところ、2004年には12,500t、2005年は14,600tを生産を見込む。
- ・Climax鉱山
- Climax Molybdenum社が権益を有し、1995年から生産休止中の露天採掘鉱山。同社は現在Climax鉱山の再開を検討しており、仮に再開すれば年間4500トンから9000トンが新たに生産されることになる。
- ・Mt. Emmons鉱床
- Phelps Dodge社が100%の権益を保有する未開発高品位モリブデン案件。Amax社は70年頃に小規模多金属鉱脈鉱山(Crested Butte)の下部にモリブデン鉱徴を発見、鉱脈鉱山のオーナーであるUS Energy社と探鉱契約の上、81年までに総額250百万ドル超を投じて探鉱した。この結果、鉱量146百万t、MoS2:0.438%を確認、最終許認可まで取得したが、直後の市況急落から計画は中断、以後長年にわたり開発はペンディングとなっている。最近の市況高騰にも関わらず現オーナーのPhelps Dodgeは開発に対して積極的でないことから、ロイヤルティ保有者であるUS Energyは権益の買い戻しと開発オペレータとしての意欲を見せているところ。
4. Phelps Dodge社の動向
Phelps Dodgeの動向は、北米におけるモリブデン供給、更には市況を握る大きな鍵である。北米の主要なモリブデン権益の多くは、かつてCyprus-Amaxが握っていたが、1999年のPhelps Dodgeとの合併により、同社に渡った。Phelps Dodgeは、現在のところ既存鉱山の生産拡大に着手するのみで、コロラド州のMt.Emmons鉱床、BC州のKitsault鉱床など、モリブデン単身の開発待機案件に対しては、依然具体的な動きを起こしていない。これは既存鉱山および休止鉱山の依然として大きな増産余地に関係しているのであろう。
国別最大シェアの米国はモリブデン生産に関してチリの大規模銅鉱山のバイプロダクト・モリブデンとのコスト競争に押され、次第に生産規模を縮小、世界シェアを低下させてきた経緯がある。しかしここへ来て増産傾向は再び鮮明となり、2004年の国内鉱山のモリブデン生産量は39,900tと2004年比18%増加した。しかし、いまだ鉱山生産能力の53%しか稼働していないとされており(USGS)、増産余地は依然大きいとされる。
本稿では、活発化する北米地域モリブデン資源の探鉱開発の現状を探ったが、その担い手は、現状ジュニア企業と言えそうである。


