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ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年7月)
1. 国際市場
7月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が2か月連続で上昇し2.6%増の3,614.21USドル/t、ニッケルは2か月連続で下落し9.8%減の14,580.71USドル/t、亜鉛は2か月ぶりに下落し6.4%減の1,194.43USドル/tとなった。市場の不透明感が増す中で、特に銅の価格上昇が目立ってきている。銅は、継続する歴史的に低い在庫レベルと自然災害やスト等による供給不安から投機資金が大量に流入し価格の上昇が継続、史上最高値を更新したものの、直近では取引所在庫の大幅増等をきっかけに下落しており、今後更なる下落の可能性も指摘されている。ニッケルは、LME在庫が依然低いレベルを継続しているものの、欧州に続き日本や韓国のステンレスメーカーの生産削減見通し等により市場の弱気が継続している。亜鉛は、メッキ需要の鈍化が継続していることで価格は低迷しているものの、LME在庫が再び減少し、市場の供給不足も継続していることから、価格の回復も見込まれる。今後も基本的にタイトな金属市場の需給を背景に、ファンド資金の動きや中国の動向等によって市場が急変する可能性を秘めており、引き続き不安定な動きが続くと考えられる。
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2. 需給動向
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2・1 銅
【需要】
国別の2005年1~5月の消費量は、最大消費国中国が前年同期比8.8%増となる一方、その他主要国では2位米国11.7%減、3位日本10.0%減、4位ドイツ8.9%減、5位韓国8.6%減となり、世界計では2.9%減の6,842.6千tであった。世界の消費を月別に見ると、2005年1~4月期は125~140万tの幅で増減、平均1,356.7千tとなっていたが、5月は1,415.7千tと今年の最大消費量に増加した。注目の中国の消費動向は、2005年1月~4月期が256~322千tの幅で増減し、平均298.8千tであったが、これも5月は326.6千tと今年最大に上昇した。国際銅研究会は世界の銅地金消費を2005年5.3%増の17,370千t、2006年4.6%増の18,167千tと予測している。
【供給】
2005年1~5月の鉱山生産は前年同期比5.8%増の6,013.2千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2004年最高値を記録した12月以降、2005年1月1,204.7千t、2月1,089.6千tと一旦減少したが、3月に1,246.2千tと回復、4月に1,202.8千tと減少、5月は1,269.9千tと上昇している。鉱山の設備稼働率も2004年後半は90%を大幅に超える高レベルで推移した後、2005年に入り80%後半に下落、5月は89.7%であった。2005年1~5月の国別生産量は、3位ペルーが前年同期比1.1%減となった以外の主要国は、最大生産国チリが0.1%増、2位米国12.8%増、先月まで5位であったインドネシアがGrasberg鉱山の事故からの回復により53.7%増と大幅に増加した結果、4位に浮上した。次いで、5位の豪州は10.9増となった。国際銅研究会は世界の銅鉱山生産を2005年8.0%増の15,678千t、2006年1.0%増の15,840千tと予測している。
2005年1~5月の地金生産は前年同期比4.8%増の6,677.4千tであった。月別の地金生産は2004年末までの増加傾向から2005年1月1,363.3千t、2月1,240.2千tと減少、3月は1,365.7千tと回復、4月は1,329.2千tと若干減少、5月は1,379.0千tと増加し、2005年最大値となった。2004年11月まで精錬所稼働率は上昇傾向にあったが、2004年12月以降伸び悩み80~81%で低迷、2005年5月は80.3%となっている。2005年1~5月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が2.9%増、2位中国21.6%増、5位ロシア7.2%増となる一方、3位日本1.3%減、4位米国1.2%減、6位ドイツ2.8%減となったが、全体では増加した。国際銅研究会は世界の銅地金生産を2005年8.5%増の17,110千t、2006年5.6%増の18,074千tと予測している。
【需給バランス】
2005年1~5月は165.1千tの供給不足(季節調整後は4千tの供給不足)であった。2004年12月に供給超過となった以降、2005年1月39千t、2月12千t、3月29千t、4月48千t、5月37千tと供給不足が継続している。季節調整後の需給バランスでは、2005年1月31千tの供給不足の後、2月17千t、3月19千tと供給超過となり、4月7千t、5月2千tの供給不足となっている。国際銅研究会は世界の銅地金需給を2005年259千tの供給不足、2006年93千tの供給不足と予測している。
【価格】
3,510.50USドル/tからスタートした7月のLME銅価格は、強い上昇基調が継続した。7月4日、5日と一旦3,400USドル台に後退したものの、その後上昇し、7月6日に再び3,500USドル台を記録、7月11日には3,600USドル台に突入、7月14、15日には一旦3,500USドル台に後退したものの、その後すぐまた上昇し、7月21日にそれまでの史上最高値3,670USドルを上回る3,692USドル記録した後も上昇、7月25日には3,700USドル台に突入、7月29日に史上最高値である3,775USドルを記録して終了した。
2・2 ニッケル
【需要】
2005年1~5月の消費量は前年同期比4.0%増の540.7千tであった。最大消費国の日本が1.7%減となった以外は、2位中国が31.6%増と大幅増、3位米国7.5%増、4位韓国4.7%増、5位ドイツ1.2%増、6位台湾8.3%増と多くの主要国で増加となり、全体でも消費量が増加した。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル地金消費を4.1%増の1,304.2千tと予測している。
【供給】 2005年1~5月の鉱山生産は前年同期比0.9%増の538.2千tであった。最大生産国ロシアは増減なし、2位カナダ1.5%減、5位ニューカレドニア17.0%減となったものの、3位豪州9.3%増、4位インドネシア10.0%増となり、全体としては微増となった。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル鉱山生産を6.2%増の1,377.6千tと予測している。
2005年1~5月の一次地金生産は前年同期比3.0%増の539.5千tであった。2位日本が8.3%減、3位カナダ0.5%減となったものの、最大生産国のロシアが0.5%増、4位豪州が10.1%増、5位中国6.4%増、6位ノルウェー19.9%増となり、全体としては増加となった。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル地金生産を4.4%増の1,309.9千tと予測している。
【需給バランス】
2005年1~5月の需給は1,200tの供給不足となった。LMEの在庫量は、7月29日現在6,990tと前月末からさらに若干減少し、依然低水準である。国際ニッケル研究会は世界のニッケル地金需給を2005年6,300tの供給超過(日本の備蓄売却分600tを含む)と予測している。
【価格】
USドル14,680/tでスタートした7月のLMEニッケル価格は安定した動きとなった。7月11日に15,030USドル、7月12日に15,200USドルと2日連続で15,000USドル台を記録した以外は14,000USドル台で推移し、7月29日には14,460USドルで終了した。
2・3 亜鉛
【需要】
2005年1~5月の消費量は前年同期比1.3%増の4,391千tであった。2位米国が10.7%減、3位日本0.8%減、4位ドイツが4.1%減となったが、最大消費国の中国が8.7%増、5位韓国が9.7%増となり、全体としては増加した。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金消費を2.4%増の10,692千tと予測している。
【供給】
2005年1~5月の鉱山生産は、3位ペルーが前年同期比1.9%減、4位カナダ10.3%減、6位メキシコ3.6%減となる一方、最大生産国の中国が3.0%増、2位豪州2.1%増、5位米国が3.0%増、その他生産国での増産もあり、世界合計では1.8%増の4,005千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛鉱山生産を5.2%増の10,147千tと予測している。
2005年1~5月の地金生産は、最大生産国の中国が前年同期比6.9%増、2位カナダ4.6%増、3位韓国5.7%増、4位日本7.6%増となり、5位スペインが1.4%減、6位豪州が6.1%減となったものの、全体では4.8%増の4,339千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金生産を3.3%増の10,486千tと予測している。
【需給バランス】
2005年1~5月の需給バランスは52千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、7月29日現在582.5千tとなり、前月末から2.9万t減少している。国際鉛亜鉛研究会は2005年の亜鉛地金需給を西側世界で193千tの供給不足、世界全体で206千tの供給不足と予測している。
【価格】
1,205USドル/tでスタートした7月のLME亜鉛価格は、7月4日には1,100USドル台に下落、7月11~12日、7月21日に1,200USドル台を記録した以外は1,100USドル台後半の安定した値動きで推移し、7月27日に1,200USドル台を回復した後、若干上昇し、7月29日には1,243USドルで終了した。