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カザフスタンにおける亜鉛・鉛の生産動向-外資系企業Kazzinc社の活動状況-
| 需要が堅調なものの銅など他の金属に比べて鉱山開発が遅れ、需給のひっぱく感がぬぐえない亜鉛。LME在庫の増加が一服して、需給の先行き不透明感が依然として残る鉛。カザフスタンは、これら金属についてCIS諸国で最大の埋蔵量・生産量を誇っている。本稿では、同国の亜鉛・鉛の生産動向と、世界的な亜鉛鉱石生産企業Glencore International社が最大シェアを有する外資系企業Kazzinc社の活動状況について現地での収集情報などに基づき報告する。 |
1. 主な亜鉛・鉛生産者と2004年生産量
下表に示すとおり、主な生産者は精鉱:亜鉛4社・鉛3社、地金:亜鉛2社・鉛2社となっており、Yuzhpolimetall社は主にスクラップを原料として鉛地金を生産している。
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出典:Bitimbaevレポート2005.04
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| ※1 Glencore International社(スイス)の子会社 ※2 カザフスタン最大の銅生産者。 |
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2. 亜鉛・鉛の生産動向
2004年に生産された亜鉛・鉛地金のほとんどは輸出されており、前者は中国向け141,027t、後者はオランダ向け45,929tがそれぞれ最大の輸出先であった。精鉱に関しては、2003年データによれば、輸出された亜鉛252.7千t(精鉱Gross Wt)はロシアとウズベキスタン向けが大半を占めており、鉛についてはロシア、豪州やペルーなどからの輸入超過(57千t(精鉱Gross Wt))の状態にある(2004年の生産量、輸出量、2005年の上半期生産量を下表に示す)。2005年上半期生産量で亜鉛地金が大きく増えたのは、2003年10月に竣工したKazakhmys社の亜鉛製錬所(能力:100千t/年)が本格操業を開始して28,600tを生産したためである。なお、Kazzinc社の生産する亜鉛地金99.99%はLME Gradeに未登録な一方、輸入鉱石や二次原料(スクラップや廃棄物など)を使用して生産されている鉛地金99.99%についてはLME Gradeに登録済みである。
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(単位:t)
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出典:カザフスタン国家統計庁(生産量)
Bitimbaevレポート2005.04(輸出量) |
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3. Kazzinc社の活動状況
3-1. 基礎データ
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所在地:
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東カザフスタン州Ust-Kamenogorsk(ウスチカメノゴルスク) |
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権益比率:
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2005年8月、カザフスタン政府は上表(2004年12月末現在)に示した政 府保有株のうち5.0%を売却(購入者は不明) |
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社 員:
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約25,000名 |
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生 産 物:
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亜鉛、鉛、粗銅、金、銀、カドミウム、インジウム、タリウム、テルル、 セレン、二次アルミニウム |
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収益構造:
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鉛41%、銅25%、金16%、銀9%、鉛9%(以上、2004年収益ベース) |
3-2. 生産部門の概要
Zyryanovsk GOK(2,600人)、Leninogorsk(Ridder)GMK、Ust-Kamenogorsk Metallurgical Complex(2,000人)及びTekeli GOK(Almaty州中部)の4つの生産拠点を持つ。同社は、2003年央に閉山したTekeli鉛・亜鉛鉱山の選鉱場を再建し、2004年からはTekeli GOKでも銅鉱の処理を開始した。
Zyryanovsk GOK(東カザフスタン州北東部)
銅精鉱の85%を産するMaleevsky鉱山(生産能力2.25百万t/年)と、鉱量枯渇で2009年に終掘が予定されているGrekhovsky鉱山(品位Zn-Pb3.8%、生産能力400千t/年)からの鉱石を1954年に建設されたZyryanovsk選鉱場(370人)で浮選処理している。2004年にはCu品位18-28%の銅精鉱50.4千t(前年比15.0%減)、Zn品位55-56%の亜鉛精鉱178.7千t(同7.1%減)、Pb品位40-45%の鉛精鉱21.0千t(同7.1%減)などを生産した。銅精鉱は、ロシアと中国向けに輸出されるほか、一部はKazakhmys社のBalkhash銅製錬所に売鉱されている。亜鉛・鉛精鉱については200kmの距離があるUst-Kamenogorsk Metallurgical Complexまで鉄道輸送される。
Maleevsky多金属鉱山(東Kazakhstan州)
2000年6月に本格操業(1.5百万t/年)を開始したトラックレス方式で坑内採掘を行うKazzinc社の主力鉱山(650人)。2001年末に生産能力が現在のレベルまで引き上げられたが、埋蔵鉱量は53百万t(品位:Zn 8.3%・Cu 2.6%・Pb 1.18%・Au 0.57g/t・Ag 78g/t)であり、鉱山ライフは18年以上ある。黄鉄鉱型多金属鉱の鉱体は約30度の傾斜をなし、地表から約700m下部まで開坑された東・西の立坑で鉱石(平均粗鉱品位:Zn 7.5%・Cu 2.3%・Pb 1.3%・Au 0.75g/t・Ag 75g/t)が運搬される。鉱石にはBa多金属鉱とCu-Zn鉱の2つのタイプがあり、現在、カット&フィルにより地表下500~700mのエリアで2つの鉱種を分けて採掘を行っている。鉱石は30km離れたZyryanovsk選鉱場までトラック輸送され、鉱種別に選鉱条件を変える日程で選鉱処理を行っている。充填材には選鉱廃さいとKaraganda製鉄所のスラグが利用されている。
Ridder GMK(東カザフスタン州北部)
1.25百万t/年のTishinsky鉱山(粗鉱品位:Zn 5.3%・Cu-Pb 1.0%)と、金品位が2.5g/tのRidder-Sokolny鉱山(年産2百万t)の多金属鉱がRidder選鉱場で処理され、亜鉛精鉱はRidder製錬所(105千t/年)で亜鉛地金にされている。2004年には銅精鉱9.6千t(前年比18.5%増)、亜鉛精鉱91.4千t(同19.2%増)、鉛精鉱10.9千t(同39.7%増)、亜鉛地金110.1千t(同7.2%減)などを生産した。
Ust-Kamenogorsk Metallurgical Complex(東カザフスタン州Ust-Kamenogorsk)
Zyryanovskの亜鉛精鉱を処理する亜鉛製錬所(162千t/年)、レアメタル回収工程も付設されている鉛製錬所(140千t/年)のほか、粗銅を生産する溶錬工程(7千t/年)、二次アルミニウム生産工程などからなる。2004年には亜鉛地金175.7千t(前年比0.3%減)の他、粗銅0.6千t、鉛地金99.2千t、セレン3t、インジウム0.4t、テルル1t、タリウム2tなどを生産した。亜鉛は通常の湿式法(焙焼-浸出-浄液-電解)によって、鉛の溶錬工程は焼結炉とKIVCET炉の2系統があるが、前者によって(後工程は通常の乾式精製による)、それぞれ操業が行われている。同ComplexではSO2の大気中排出量を23,000t/年まで削減する目標値(2004年実績:44,000t)を設定して37百万USドルを投じて設備化を行った排煙脱硫装置(Haldor Topsoe社(デンマーク)技術)が2005年上半期に竣工しており、先頃、ナザルバエフ大統領が同社の環境対策への取り組み状況を現地視察したばかり。
3-3. 投資の動向
2004年4月にShaimerden鉱床(コスタナイ州)を買収して開発中。同6月には東カザフスタン州の2つの亜鉛鉱床(Dolonnoye、Obruchevskoye)の探鉱開発ライセンスを入札で取得するなど、2004年の投資額は70百万USドルに上った。このほか、Zyryanovsk地域では”Kazzinc Geo”として経済的鉱床の賦存が期待される有望地域を抽出する探鉱プロジェクトを計画中。さらに、投資の重点対象として、選鉱廃さいからの有価金属の回収や二次原料からの地金生産などを掲げている。Shaimerden亜鉛鉱床(Koatanay州)開発プロジェクト埋蔵鉱量8百万t、品位:Zn 21.3%・Ag 15.3g/t。精鉱をUst-KamenogorskとRidderの両製錬所で処理し、亜鉛地金60千t/年を生産する計画。現在、剥土作業が続けられており、2006年第3四半期の出鉱開始を目指して開発準備中。開発費総額は60百万USドルと見込まれる。
4. 亜鉛・鉛産業をとりまく環境
旧ソ連時代、ロシア、カザフスタンやウズベキスタンといった金属鉱物資源に恵まれた国々は相互に連携して生産体制を維持していたが、その空間が消失したことでバランスは大きく崩れ、特にロシアの亜鉛・鉛産業は生産激減に陥った。カザフスタンは比較的影響が少なかったものの、それでも鉛の鉱山生産は当時の水準を回復するには至っていない。地金生産に余力のある亜鉛鉱石をCIS諸国に輸出し、賄えない鉛鉱石は主にCIS諸国外から調達して地金を生産する。これが現在のカザフスタンの亜鉛・鉛産業の原料部門の姿となっている。
国際鉛亜鉛研究会は、2005年1~5月の中国の亜鉛地金消費量が前年同期比で8.7%増えたのに対し、生産量はこれを大きく下回っており、亜鉛地金の輸入量は年間で100千tを超えると予測。Interfax-Kazakhstan紙は、中国が2005年1月にカザフスタンから24.1千tの亜鉛地金を輸入したと税関統計に基づいて報じ、この傾向は今後も続くと予想する。先頃、中国とカザフスタンは、戦略的関係の強化に関する共同宣言に調印し、地質・地下資源利用分野における協定などを締結した。資源調達の多様化を掲げる中国は、新たな供給地域としてカザフスタンに大きな関心を示している。
最近、カザフスタンの石油権益獲得に向けて行われた中国とインドの国有会社による買収合戦は、台頭著しい中国とインドが高成長維持のために繰り広げた資源獲得競争として注目を集め、中国石油天然ガス(CNPC)がカナダ資本のペトロカザフスタン社を41.8億USドルで買収することで決着を見た。米国では「中国の資源戦略 脅威」論も高まっている。全方位外交を標榜するカザフスタンは、CIS諸国、特にロシアとの関係をベースにしつつ中国との関係を重視しており、この枠組みに沿った資源安全保障の重要性は一層高まっていくものと見られている。
2006年1月のナザルバエフ大統領の任期満了に伴って、2005年12月に次期大統領選挙が行われることになったが、カザフスタン経済にとって、キルギスやウズベキスタンなど中央アジア諸国でも起こった民主化ドミノの動きが今後の懸念材料となる 。


