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ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年8月)
1. 国際市場
8月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が3か月連続で上昇し5.1%増の3,797.75USドル/t、ニッケルは3か月ぶりに上昇し2.1%増の14,892.73USドル/t、亜鉛は2か月ぶりに上昇し8.7%増の1,298.39USドル/tとなった。銅は、LME在庫が倍増したものの低い在庫レベルには変わりなく、加えて自然災害やスト等による供給不安も継続していることから、投機資金流入が継続し価格上昇も継続、依然この価格上昇の継続には懐疑的な意見もある一方、強気の予想も出始めている。ニッケルは、主要ステンレスメーカーの第3四半期の生産削減見通し等から需要が当面伸びないことで、他の金属と比べて全般的に取引の動きが少なく、月後半にファンドの動きで若干の上昇が見られたものの安定した動きが継続している。亜鉛は、中国の強い需要等に加えて2005年後半に西側世界の需要が回復の見通しとなり、LME在庫減少や市場の供給不足も継続していることから、市場は強気に転じている。非鉄金属市場全般としては、今後も基本的にタイトな需給を背景に、ファンド資金の動きや中国の動向等によって引き続き市場が急変する可能性があり、不安定な動きが継続するものと考えられる。
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LME月平均価格の推移 |
2. 需給動向
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2・1 銅
【需要】 国別の2005年1~6月の消費量は、最大消費国中国が前年同期比12.7%増となる一方、その他主要国では2位米国9.7%減、3位日本7.5%減、4位ドイツ5.5%減、5位韓国12.1%減となり、世界計では2.1%減の8,266.0千tであった。世界の消費を月別に見ると、2005年4月以降増加傾向で、4月の1,364.6千tから5月は1,421.4千tに大幅に増加した後、6月は1,423.4千tと微増で2005年の最大消費量となった。注目の中国の消費動向も、2005年4月以降増加傾向で4月の295.6千tから5月は326.6千tに急回復し、6月はさらに341.6千tと増加し、2005年最大となった。国際銅研究会は世界の銅地金消費を2005年5.3%増の17,370千t、2006年4.6%増の18,167千tと予測している。
【供給】 2005年1~6月の鉱山生産は前年同期比4.5%増の7,211.5千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2005年1~2月の低迷後、3月に1,256.7千tと回復したが、4月には1,198.8千tと減少、5月は再び1,264.4千tと上昇した後、6月はまた1,194.0千tと減少している。鉱山の設備稼働率は、2004年後半の90%超から2005年に入り80%後半に下落、6月は86.7%であった。2005年1~6月の国別生産量は、最大生産国チリが前年同期比1.6%減、3位ペルーが4.4%減となる一方、2位米国が10.9%増、4位豪州が11.1%増、5位インドネシアがGrasberg鉱山の事故からの回復により46.7%増と大幅に増加し、2005年1~6月までの生産量では豪州を越えペルーに迫る生産量となった。国際銅研究会は世界の銅鉱山生産を2005年8.0%増の15,678千t、2006年1.0%増の15,840千tと予測している。
2005年1~6月の地金生産は前年同期比5.1%増の8,046.7千tであった。月別の地金生産は2004年末までの増加傾向から2005年1~2月に減少、3月は1,368.5千tと回復した後、4月1,332.1千t、5月1,379.6千t、6月1,357.9千tと増減を繰り返している。精錬所稼働率は、2004年12月以降伸び悩み80~81%で低迷、2005年6月は81.4%と前月より若干上昇している。2005年1~6月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が1.8%増、2位中国21.4%増、5位ロシア7.4%増となる一方、3位日本1.4%減、4位米国2.8%減、6位ドイツ1.7%減となったが、全体では増加した。国際銅研究会は世界の銅地金生産を2005年8.5%増の17,110千t、2006年5.6%増の18,074千tと予測している。
【需給バランス】 2005年1~6月は219.3千tの供給不足(季節調整後は13千tの供給不足)であった。2005年1月以降供給不足が継続しており、3月29千t、4月32千t、5月42千t、6月65千tの供給不足で、不足量が拡大傾向にある。季節調整後の需給バランスでも、2005年3月20千t、4月9千tの供給超過となった後、5月7千t、6月22千tの供給不足となっている。国際銅研究会は世界の銅地金需給を2005年259千tの供給不足、2006年93千tの供給不足と予測している。
【価格】 史上最高値から少し下がった3,757.50USドル/tからスタートした8月のLME銅価格は、乱高下を伴いながら上昇基調が継続した。8月2日、5日と一旦3,800USドル台の史上最高値を記録した後、一旦3,600USドル台に戻る動きも見られたが、上昇基調は止まらず、8月22日以降は最高値を塗り替えつつ3,800USドル台で推移、8月30日には3,900USドル台に達し、8月31日に史上最高値である3,915USドルを記録して終了した。
2・2 ニッケル
【需要】 2005年1~6月の消費量は前年同期比1.0%増の633.9千tであった。最大消費国の日本が2.7%減、4位韓国0.2%減、5位ドイツ0.6%減、6位台湾11.8%減となったものの、2位中国が31.4%増と大幅増、3位米国が4.4%増となり、全体では消費量が若干増加した。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル地金消費を4.1%増の1,304.2千tと予測している。
【供給】 2005年1~6月の鉱山生産は前年同期比2.4%増の666.4千tであった。2位カナダ9.6%減、5位ニューカレドニア13.8%減となったものの、最大生産国ロシアが2.3%増、3位豪州が22.9%増と大幅増、4位インドネシアも10.2%増となり、全体としては増加した。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル鉱山生産を6.2%増の1,377.6千tと予測している。
2005年1~6月の一次地金生産は前年同期比3.7%増の647.5千tであった。2位日本が4.7%減、3位カナダ7.5%減となったものの、最大生産国のロシアが0.5%増、4位豪州が13.6%増、5位中国7.6%増、6位ノルウェー21.8%増となり、全体としては増加となった。国際ニッケル研究会は2005年の世界のニッケル地金生産を4.4%増の1,309.9千tと予測している。
【需給バランス】 2005年1~6月の需給は13,600tの供給超過となった。LMEの在庫量は、8月31日現在9,522tと前月末から約2,500t増加している。国際ニッケル研究会は世界のニッケル地金需給を2005年6,300tの供給超過(日本の備蓄売却分600tを含む)と予測している。
【価格】 14,110USドル/tでスタートした8月のLMEニッケル価格は、先月に続き比較的安定した動きとなった。月初から14,000USドル台を記録していたが、8月12~25日に1日を除き15,000USドル台を記録した後、8月26日に14,000USドル台に戻り、8月31日には14,950USドルで終了した。
2・3 亜鉛
【需要】 2005年1~6月の消費量は前年同期比1.4%増の5,281千tであった。2位米国が11.4%減、3位日本が1.3%減、4位ドイツが3.8%減となったが、最大消費国の中国が9.3%増、5位韓国が8.0%増となり、全体としては増加した。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金消費を2.4%増の10,692千tと予測している。
【供給】 2005年1~6月の鉱山生産は、4位カナダが前年同期比10.6%減、6位メキシコ9.1%減となる一方、最大生産国の中国が2.0%増、2位豪州2.5%増、3位ペルーが1.8%増、5位米国が3.1%増、その他生産国での増産もあり、世界合計では1.9%増の4,819千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛鉱山生産を5.2%増の10,147千tと予測している。
2005年1~6月の地金生産は、最大生産国の中国が前年同期比5.1%増、2位カナダ3.5%増、3位韓国5.7%増、4位日本6.3%増となり、5位スペインが1.5%減、6位豪州が4.3%減となったものの、全体では4.2%増の5,221千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は2005年の世界の亜鉛地金生産を3.3%増の10,486千tと予測している。
【需給バランス】 2005年1~6月の需給バランスは60千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、8月31日現在560.2千tとなり、前月末から更に2.2万t減少している。国際鉛亜鉛研究会は2005年の亜鉛地金需給を西側世界で193千tの供給不足、世界全体で206千tの供給不足と予測している。
【価格】 1,243USドル/tでスタートした8月のLME亜鉛価格も比較的安定した動きとなった。月前半8月16日までは1,200USドル台後半で推移した後、8月17日に1,300USドル台に上昇、そのまま1,300USドル台前半の安定した値動きで推移し、8月31日には1,360USドルで終了した。