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報告書&レポート

2005年10月13日 シドニー事務所 永井正博、久保田博志、研究スタッフ Joy A. Albert e-mail:(永井)masahiro-nagai@jogmec.go.jp
2005年67号

オーストラリアの2005/2006年鉱物資源属需給見通し-オーストラリア農業資源経済局の2005~2006年鉱物資源需給予想の概要報告-

 オーストラリア農業資源経済局(ABARE ; Australia Bureau of Agricultural and Resources Economics)は、9月19日、2006年には消費は減速するなどを内容とする四半期鉱物資源予想(Quarterly Commodity Outlook)を発表した。
 本稿は、この四半期鉱物資源予想の概要を報告する。

1. 全体需給予測

 前四半期同様、堅調な世界的な鉱物資源・エネルギー資源需要に対応して輸出量は増加を続けている。特に、今期の予想では、石油、アルミニウム、銅、亜鉛の価格上昇が見込まれるなか、需要を上方修正している。
 ABAREは、仕入価格の高騰が供給サイドに影響を与えていることを指摘、アルミニウム、銅、亜鉛の生産予測を見直して、 2005年の鉱石生産の伸びを、前回6月の予測7.8%から下方修正して5.2%としている。
  ABAREは、さらに、中国需要に他国の鉱山会社の生産が追いつき始めており、世界需要の伸び及びその結果としての鉱物資源価格は下がると警告している。

2. 各鉱種の需給予想

 2006年の鉱物資源の需要の伸びは鈍化し、多くの鉱種で価格が下がるとの見方がされているが、米国メキシコ湾岸のハリケーン・カトリーナによる、労働力・インフラ障害などによって幾つかの鉱種で品不足が生じる可能性がある。
 各鉱種については以下のとおり。

1)
 2006年は世界の銅生産が消費を上回り、世界の銅生産は7%増加する。
 オーストラリアでは、2004/2005年に、Tritton Resources社が新たにTritton銅鉱山を、Newcrest社はTelfer鉱山を再開発し、Straits Resources社は新たにWhim Creek鉱山の操業を開始したことにより、2005/2006年の生産は3%増加して942,000tに達する見込み。

2) 亜鉛
 世界の亜鉛市場は、2006年は、供給サイドの伸びが不十分であることが、価格を支えると見られる。
 オーストラリアの2005/2006年は、Xstrata社がMt.IsaでBlack Star鉱山の露天掘を開始するなど亜鉛生産は6%増加すると見られる。
 また、Xstrata社のMcArthur River鉱山の露天掘化(生産能力は16万t/年)などが発表されている。

3) ニッケル
 2005年の世界のニッケル価格は、供給サイドが弱く比較的高い水準で推移したが、2006年は生産が消費を上回ると見られ、価格は押し下げられる方向に動くと見られる。2005年の世界のニッケル生産量は3.5%増加して129万t、2006年は135万tに達する見込み。
 2005/2006年のオーストラリアのニッケル鉱石生産は、Lion Ore社とWestern Areas社のMaggie Hay鉱山、Flying Fox鉱山の操業開始(2005年)やNorth Mittel鉱山、Mariners鉱山、Black Swan鉱山などの操業開始などにより7%増加の21.2万tと予想されている。また、地金生産量は、Minara Resource社のMurrin Murrin鉱山、BHP Billiton社のYabulu及びKwinana精錬所からの生産を受けて6%増加の13.5万tに達すると考えられる。

4)
 2005年の世界の金生産量は、2%増加と予測。
 2004/2005年のオーストラリアの金生産量は、Newcrest社のTelfer鉱山(能力8万oz/年)の操業開始などがあったものの、その他小規模鉱山の閉山や生産減などが影響して、全体では2%減少の265tであった。しかし、2005/2006年のオーストラリアの生産量は、Telfer鉱山の操業が軌道に乗ることから4%増加の275tとなる見込み。輸出は2%増加の315t程度と見られている。
 2005年から2006年にかけて操業を開始あるいは操業開始予定の鉱山は、Perseverance Corporation社のFosterville鉱山(生産能力11万oz/年)、NuStar Mining社のPaulsens鉱山(同8万oz/年)、その他にもBallarat鉱山(同20万oz/年)、Warrior鉱山(同4万oz/年)、Cowal鉱山(同23万oz/年)などがある。

5) アルミニウム
 2006年の世界のアルミニウム需要は軟化し、生産が消費を上回るとの見方から、アルミニウム価格は下がると予想されている。
 2005/2006年のオーストラリアの輸出額は1%増加して37.5億豪ドルに達すると見られている。

6) アルミナ
 2006年の世界のアルミナ生産量は、4%増加すると見られるが、中国需要が旺盛で供給不足となると思われる。
 オーストラリアの2005/2006年の輸出額の伸びは1%以下の44億豪ドル程度(2004/2005年は16%増加の44億豪ドル)。しかし、新CAR1精錬所(Gladston、生産能力60万t/年)とPinjarra精錬所及びWorsley精錬所の拡張が行われることで増加が見込まれる。

7) ウラン
 ウランの市場価格は、供給源が限定されていること、需要が拡大していることなどから短期的には上昇する。ウランの世界需要は2005年は3%増加、2006年は更に1%増加すると見られる。生産は、Rio Tinto社のRossing鉱山やParadin Resources社のLanger Heinrich鉱山(ともにナミビア)などの生産増加により2005年は5%増加する見込み。
 2005~2006年のオーストラリアのウラン生産は、Olympic Dam鉱山の生産拡大を主たる要因として4%以上の増加し、11,400t以上となる見込み。輸出額は30%増加し、616百万豪ドルに上る見込み。

8) 鉄鉱石
 新たな鉄鉱山開発と港湾施設の能力向上とブラジルに比べ中国を中心としたアジア向け船舶フレートが安いことから、オーストラリアの鉄鉱石輸出のシェアは拡大する。
 2005年半期のオーストラリアの鉄鉱石輸出は、BHP Billiton社のMining Area Cの拡張や積出港Port Headland港の西貯鉱場の新設などがあり前年同期比19%増の117百万tとなった。
 また、2005年末までには、Hamersley鉄鉱山(Rio Tinto社系)のParker Point港の拡張が完了する予定で輸出能力は更に高まる見込み(現在は能力一杯で操業)。

9) 石炭
 2005/2006年は、世界の経済成長の鈍化が、電力用一般炭の需要の低下を招くと考えられる。また、日本を含むアジア諸国では、地球温暖化ガスの発生しない発電を志向する環境政策がとられるなど、一般炭の需要の伸びは頭打ちとの見方もされている。
 一方、2005年のオーストラリアの原料炭の生産は、6.5%増加の122.9百万t、2006年は更に8.7%増加の133.6百万tに達する見込みで、全世界の石炭海上輸送の6割はオーストラリア産が占めることになる。

出典: 2005年9月20日付け地元紙The Australian Financial Review
2005年9月20日付け地元紙The Australian
ABARE;Commodity Outlook September 2005
ABARE;Commodities website:

     http://www.abareconomics.com/AC_Mini_Site/AC_Mini_Site_05.asp

銅(千t) 亜鉛(千t)
ニッケル(千t) 金(t)
アルミニウム・アルミナ(百万t) 鉄鉱石・原料炭(百万t)

図)2005~2006年の各鉱種生産・輸出量予測

 注:鉱石生産量(鉄鉱石以外)は金属含有量(metal content)。
    鉄鉱石は生産がore and concentratesで輸出がore and pellet。
    輸出鉱石量は鉱石および精鉱量(ore and concentrates)。

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