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報告書&レポート

2005年10月20日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年69号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年9月)

1. 国際市場

 9月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が4か月連続で上昇し1.6%増の3,857.84USドル/t、ニッケルは2か月ぶりに下落し4.5%減の14,228.18USドル/t、亜鉛は2か月連続で上昇し7.6%増の1,397.52USドル/tとなった。銅は、引き続きLME在庫が増加したものの、歴史的な低在庫レベルには変わりなく、加えて自然災害やスト等による供給不安などの影響も継続していることから、3か月先物価格で記録を更新し続ける等、投機資金流入による価格上昇が継続、最近ではこの高価格がもう暫く継続するとの見方が強まっている。ニッケルは、主要ステンレスメーカーの生産削減が第4四半期まで継続する見通しにあり、需要が当面伸びないことで価格下落の圧力が続いている。亜鉛は、中国等の強い需要を背景に、LME在庫減少や亜鉛精鉱市場の逼迫状況も継続していることから、暫く市場は強気に推移すると見られている。非鉄金属市場全般としては、高値圏を維持しつつも金属ごとの市場の動きに分化が見られ始め、引き続きいくつかの金属では、ファンド資金の動きや中国の動向等により急変するといった読みにくい展開が継続するものと考えられる。

LME平均価格と在庫
平均価格(cash settlement,US$/t)
在庫(t)
2005年8月
2005年9月
前月比
2005.8.31
2005.9.30
増減
Cu
3,797.75
3,857.84
+1.60%
65,675
83,250
+17,575
Ni
14,892.73
14,228.18
-4.50%
9,522
13,206
+3,684
Zn
1,298.39
1,397.52
+7.60%
560,150
531,325
-28,825

LME月平均価格の推移

2. 需給動向

2005年1~7月の需給状況
(出典:国際銅・ニッケル・鉛亜鉛研究会)
鉱山生産
地金生産
地金消費
需給バランス
(t)
1~7月(t)
前年同期比
1~7月(t)
前年同期比
1~7月(t)
前年同期比
Cu
8,411,200
+3.40%
9,419,700
+4.80%
9,655,200
-1.20%
-235,500
Ni
784,000
+3.60%
748,900
+3.80%
725,400
-1.00%
+23,500
Zn
5,646,000
+1.60%
6,060,000
+3.60%
6,162,000
+1.30%
-102,000

2・1 銅
【需要】
 国別の2005年1~7月の消費量は、最大消費国中国が前年同期比15.1%増となる一方、その他主要国では2位米国8.6%減、3位日本6.9%減、4位ドイツ5.2%減、5位韓国10.3%減となり、世界計では1.2%減の9,655.2千tであった。世界の消費を月別に見ると、2005年4~6月は増加傾向で、6月は1,426.4千tと2005年の最大消費量となったが、7月は1,391.7千tと減少した。注目の中国の消費動向も同様に、2005年4~6月は増加傾向で、6月は341.6千tと2005年最大となったものの、7月は299.0千tと減少している。

【供給】
 2005年1~7月の鉱山生産は前年同期比3.4%増の8,411.2千tであった。月別の鉱山生産を見ると、120万tのレベルを挟んで増減を繰り返しており、2005年4月1,197.9千t、5月1,262.9千t、6月1,191.2千tで、7月は1,204.8千tとなっている。鉱山の設備稼働率は、2004年後半の90%超から2005年に入り80%後半に下落、その後も下落傾向で7月は84.5%であった。2005年1~7月の国別生産量は、最大生産国チリが前年同期比3.2%減、3位ペルーが3.3%減となる一方、2位米国が7.6%増、4位豪州が11.2%増、5位インドネシアがGrasberg鉱山の事故からの回復により39.1%増と大幅に増加した。
 2005年1~7月の地金生産は前年同期比4.8%増の9,419.7千tであった。月別の地金生産は2005年4月以降増減を繰り返しており、4月1,331.4千t、5月1,376.3千t、6月1,356.2千tで、7月は1,376.8千tとなっている。精錬所稼働率は、2004年12月以降伸び悩み80~81%で低迷していたが、7月は79.5%とさらに下落している。2005年1~7月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が0.4%増、2位中国が21.8%増と大幅増、5位ロシア6.5%増となる一方、3位日本0.9%減、4位米国2.2%減、6位ドイツ1.6%減となったが、全体では増加した。

【需給バランス】
 2005年1~7月は235千tの供給不足(季節調整後は60千tの供給不足)であった。2005年1月以降供給不足が継続しており、4月30千t、5月41千t、6月70千t、7月15千tの供給不足であった。季節調整後の需給バランスでも、2005年4月12千tの供給超過となった後、5月6千t、6月27千t、7月45千tの供給不足となった。

【価格】
 前月末の史上最高値から少し下がった3,893.50USドル/tからスタートした9月のLME銅価格は、引き続き乱高下を伴いながら最終的には上昇基調が継続した。9月当初は、9月2日に一旦3,952USドルの史上最高値を記録した後、3,800USドル台に戻るという展開で、9月9日以降は3,700USドル台まで下落、9月19日には一旦3,675USドルまで下落した後に急反発し、9月23日に3,978USドルの史上最高値を更新する等、9月22日以降は3,900USドル台で推移、9月30日は3,949USドルで終了した。

2・2 ニッケル
【需要】
 2005年1~7月の消費量は前年同期比1.0%減の725.4千tであった。最大消費国の日本が7.2%減、4位韓国3.7%減、5位ドイツ2.8%減、6位台湾13.5%減となり、2位中国が32.1%増と大幅増、3位米国が1.5%増となったものの、全体では消費量が若干減少した。

【供給】
 2005年1~7月の鉱山生産は前年同期比3.6%増の784.0千tであった。2位カナダが3.4%減、4位インドネシアも4.7%減となったものの、最大生産国ロシアが2.3%増、3位豪州が22.3%増と大幅増、5位ニューカレドニアが0.5%増となり、全体としては増加した。
 2005年1~7月の一次地金生産は前年同期比3.8%増の748.9千tであった。2位日本が5.0%減、3位カナダ2.9%減となったものの、最大生産国のロシアが0.5%増、4位豪州が13.0%増、5位中国12.6%増、6位ノルウェー24.2%増となり、全体としては増加となった。

【需給バランス】
 2005年1~7月の需給は23,500tの供給超過となった。LMEの在庫量は、9月30日現在13,206tと前月末から約3,700t増加している。

【価格】
 15,125USドル/tでスタートした9月のLMEニッケル価格は、需給緩和を反映して下落傾向となった。月初は15,000USドル台を記録していたが、9月8日に14,000USドル台に下落した後、9月15日に13,000USドル台まで下落、その後は13,000USドル台後半を中心とした動きとなり、9月30日には13,600USドルで終了した。

2・3 亜鉛
【需要】
 2005年1~7月の消費量は前年同期比1.3%増の6,162千tであった。2位米国が10.6%減、3位日本が1.4%減、4位ドイツが3.3%減となったが、最大消費国の中国が9.1%増、5位韓国が8.0%増となり、全体としては増加した。

【供給】
 2005年1~7月の鉱山生産は、4位カナダが前年同期比12.1%減、5位米国が0.5%減、6位メキシコ10.4%減となる一方、最大生産国の中国が2.3%増、2位豪州2.9%増、3位ペルーが1.8%増で、さらにその他生産国での増産もあり、世界合計では1.6%増の5,646千tとなった。
2005年1~7月の地金生産は、最大生産国の中国が前年同期比4.7%増、2位カナダ5.0%増、3位韓国5.6%増、4位日本5.2%増となり、5位スペインが1.3%減、6位豪州が1.9%減となったものの、全体では3.6%増の6,060千tとなった。
【需給バランス】
 2005年1~7月の需給バランスは102千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、9月30日現在531.3千tとなり、前月末から更に約2.9万t減少している。

【価格】
 1,385USドル/tでスタートした9月のLME亜鉛価格は、需給逼迫を反映して前月よりやや高いレベルでの安定した価格推移となった。月前半9月14日までは1,300USドル台後半と1,400USドル台前半を行き来する展開となった後、9月15~20日には1,300USドル台で推移、その後9月29日に一度1,300USドル台となった以外は、9月21日以降、1,400USドル台前半の安定した値動きで推移し、9月30日には1,411USドルで終了した。

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