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カザフスタンにおけるウランの生産動向-戦略的な発展を遂げる国営原子力企業Kazatomprom社-
| ウラン価格は、2004年8月に約20年ぶりに1ポンド当たり20USドル台の高値を付け、2005年10月17日には33.0USドルまで上昇した。世界的に逆風が吹いていた原子力発電は、ここにきてCO2排出削減などから関心が高まり、見直す機運が台頭。年間70千tのウラン需要は民間在庫の減少や中国の需要増大などから、早ければ数年以内にも供給不足になると予想されている。このような状況下で、世界2位のウラン埋蔵量を誇るカザフスタンでは国営原子力企業Kazatomprom社が積極的な鉱山開発を進めている。同国のビジネス界を代表するニュー・リーダーの一人、Dzhakishev社長から聴取した同社の活動状況と戦略に基づき、カザフスタンにおけるウランの生産動向を報告する。 |
1. 概況
(1) CIS諸国のウラン鉱石生産者(2004年生産量)
以下の各生産者は、いずれも国営企業であり、独占的にウラン鉱石生産を行っている。
| (単位:t、U含有分) |
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| 出典: | ※1 World Metal Statistics, March 2005(国別生産量) ※2 Turkistan Press紙情報 ※3 Kazatomprom社情報(J/V生産量を含まず) ※4 World Metal Statistics, March 2005 |
(2) カザフスタンのウラン鉱石生産者
| 企業名: | Kazatomprom社(1997年設立) |
| 所在地: | アルマティ(Almaty) |
| 権益: | カザフスタン政府100% ※ 1999年、財務省の国営資産管理委員会からエネルギー鉱物資源省に移譲されており、首相府、財務省、エネルギー鉱物資源省及び環境保護省の各代表と同社々長がDirectory Boardのメンバーを構成 |
| 事業内容: | 傘下にウラン生産関連の事業体を抱えるホールディング会社で、ウラン鉱石の生産、濃縮ウランの再転換、ペレット加工、ベリリウム、ニオブ、タンタルを生産 |
| 決算: | 2004年売上高;前年比45%増の426.6億テンゲ(約316百万USドル) 2004年純利益;26.5億テンゲ(約19.6百万USドル) |
| 事業体: | (1) Volkovgeology(ウラン鉱床の地質調査)-90%権益 (2) Mining Group(ISL法による採掘、ウラン鉱石(天然ウランU3O8)の生産) -Stepnoye(Uvanas, Eastern Mynkuduk)、Centralnoye (Kanzhugan, Southern Moinkum, Akdala)、Mining Group No.6 (Northern ・ Southern Karamurun) (3) Ulba Metallurgical Plant(濃縮ウランの再転換(UO2)、ペレット加工)-90%権益 -ベリリウム、ニオブ、タンタルについても生産 (4) Stepnogorsk Mining & Chemical Complex(2004年から管理下に編入) -Stepnogorsk mine No.1での従来法による採掘・鉱石生産のほか、モリブデンを生産 |
| 海外J/V: | (1) INKAI(鉱山の開発・生産) -Inkai鉱区を対象とし、Cameco社(加)が権益60%を所有 (2) KATCO(鉱山の開発・生産) -Moinkum、Tortkuduk鉱区を対象とし、AREVA/Cogema社(仏)が51%所有 (3) Zarechnoye(鉱山の開発・生産) -Zarechnoye鉱区を対象とするAtomredmedzoloto社(露)及びKara-Balta Ore Processing Combine(キルギス)との合弁 (4)UKR TVS(ウクライナ原子炉向けの燃料加工役務) -TVEL社(露)及びウクライナとの合弁 |
2. ウラン鉱石の生産動向
カザフスタンで主にウラン鉱床が胚胎するのは、Shu-Sarysu、Syrdarya、North Kazakhstanの3つのProvinceであり、全体のウラン埋蔵量(Reserves and Resources)1,565千t-Uのうち、9割を占める。Kazatomprom社はここに生産拠点を置いてウラン鉱石の生産を行っている。次表に、埋蔵量、生産鉱区と2005年の計画生産量を示す。Shu-SarysuとSyrdaryaは南カザフスタン地域に位置し、前者は同地域にある鉱床群(Group of Deposits)の北部と東部に、後者は同じく西部と南部にさらに区分されている。
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| ※ 2005年9月、伊藤忠商事が増産される天然ウランを10年で計3千t購入する長期契約を締結。増産事業に対してみずほコーポレート銀行が6千万USドルを融資し、日本貿易保険が保険を付保する融資買鉱のスキームが採用された。 |
3. 鉱山開発プロジェクトの概要
Kazatomprom社は、南カザフスタン地域の7つのウラン鉱床を新たに開発する計画を進めており、6プロジェクトは2007~2008年の生産開始を目指して外資企業と交渉中とされる。下表にプロジェクトの概要を示す。
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| ※1 | 各鉱区の計画生産能力(t-U)
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| ※2 | AREVA/Cogema社とのKATCO J/Vの一つ | ||||||
| ※3 | 表は、Kazatomprom社資料などを基に筆者が作成(そのため一部N.D.(No Data)あり) |
4. Kazatomprom社の発展戦略と他生産者の動き
世界のウラン鉱石は、Cameco社(加)、Cogema社(仏)及びRio Tinto社(英)の大手3社で生産シェア約5割を占めるが、Kazatomprom社は政府が定めた発展計画を5年早める「2010年までにウラン年産15,000tを達成し、カザフスタンを世界一にする」戦略プログラムを策定、世界トップ企業を目指す方針を明らかにしている。Dzhakishev社長は、ウラン需給見通しから天然ウラン(ウラン鉱石)が完全に売り手市場になっている事実を指摘し、この部門を最重要視して事業展開を図っていると明言、J/Vプロジェクトの協力をさらに発展させてCameco社などパートナーの株式を取得することで連携強化を図る可能性があることにも言及するなど、寡占化によって高収益を得ることに自信をのぞかせる。
2005年6月、世界最大のウラン鉱山Olympic Damを所有するWMC Resources社(豪)がBHP Billiton社(豪)によって買収された。BHP Billiton社が新興国を中心に拡大する需要を見込んでウラン鉱山事業に本格的に進出したことで、今後、世界的な資源開発の再編・寡占化が加速する可能性もある。Rio Tinto社は2005年10月、ウランのマーケティング部門を統合して一元的に行うRio Tinto Uranium社(本社:ロンドン、海外事務所:米、豪、日)を設立すると発表した。
5. その他の注目点
2004年9月、カザフスタンは韓国との間でウラン鉱山開発などエネルギー分野の協力協定に調印、年間1千tの天然ウランを韓国側に供給することに合意した。Budenovskoye鉱区のJ/V開発プロジェクトの背景にはこのような動きがあり、韓国KORESはウラン資源開発を推進するためにアルマティに事務所開設を準備中。
2004年11月、カザフスタンと中国との間で調印された原子力分野における共同作業協定の枠組みに基づき、Kazatomprom社が中国CNNCとの間でKharasan鉱区の開発を行うためのJ/V設立を決定したとの報道がなされているが、中国側が事業立ち上げに失敗したとの情報もある。さらに、Kazatomprom社は、ロシア原子力エネルギー連邦庁との間で、両国間のウラン産業における互恵的な協力を行うための戦略的パートナー関係に基づく長期共同プログラムに合意しているとされる。


