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報告書&レポート

2005年11月24日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年84号

LMEセミナー2005参加報告

 LME主催のセミナー(LME Metals Seminar 2005)が、2005年10月31日、“The Non-Ferrous Metals Market:A Changing Landscape”と題して、例年通りロンドンで開催された。以下にその概要を報告する。

(1) Introduction and Annual Overview(Simon Heale, LME Chief Executive)

 LMEでは2005年5月よりプラスティック取引を開始。準備は短期間であったが、取引は順調で、指標としてLME価格使用が拡大。2004年のLME全体の取引量は72百万ロットで、前年より若干減少したものの、2年連続で70百万ロット超、2005年も堅調と予測。2005年1月よりアルミ合金契約に新形状を導入する等引き続き取引を増進、新たなカテゴリーからの会員も獲得、透明化のため取引データ出版も実施。2005年11月14日に会員のオーダー発送を促進する新機能を導入、電子取引で知られている‘LME Select’の活用強化を行い、2006年には取引時間延長、更なる機能向上等を計画。ニューオリンズでは、ワラントが一時停止でレビュー中。倉庫毎に一時停止措置を解除するために合意基準に達する必要あり。LME監査が11月7日に予定、市場には情報のアップデートを十分行う予定。
 銅は興味深い年となっている。銅需給逼迫が継続、銅の供給不足は大きな課題であるが、鉱山生産者が増産に努めている。LMEの役割は、価格形成のための秩序だった透明性のある環境を提供することで、現在も健全なメカニズムは機能している。
 2006年へ向けたイニシアチブとしては、鉄鋼の取引(2005年5月より鉄鋼先物取引の実行可能性等を検討するSteel Group設置)、MCX-Multi Commodity Exchange of Indiaとのライセンス合意(2005年10月サイン済)、更なるプラスティック契約についての検討、プロンプト・デートや可能な延長のレビューが挙げられる。

(2) Global Economic Outlook(Professor Douglas McWilliams, Centre for Economics and Business Research)

 アジア諸国の経済戦略は本質的に輸出主導型で、特に1998年以降、アジア諸国は、その為替レートをあるべき水準より低く抑え、前例にない規模で資産蓄積している。一方、米国や英国は、幸せな赤字蓄積でこれに喜んで適応しているように見える。2006年には、米国の経常収支は8,000億USドルの赤字に達する。2005年貿易シェアは、米国で輸出入シェア差-5.9%、英国で-0.9%、OECD諸国全体では-5.1%で、一方、非OECDアジア諸国の輸出入シェア差は+1.9%と資産蓄積が進行、中国のみならず、香港やシンガポールでその傾向が強い。インバランスの影響としては、通貨に対しては通常考えられているより小さい。資産保有者の投資は、今までは債券市場へ偏っていたが、今後はそのポートフォリオを広げ、買いたいものが買えるかどうかの問題あり。資産保持者が散らばることが予想され、物理的な資産購入(1980年代の日本におけるゴルフ場の購入)等へと投資パターンに変化が現れるだろう。中国や他の低労働コスト国は、GDPに比べて原油等の一次産品への偏った強い需要があり、原油も高価なものとなっている。2006年はハリケーン・カトリーナの影響が次第になくなるだろう。原油や他の鉱産物、農産物の貿易額は、2003年に比べて2005年は8,250億USドル増加し、先進西側諸国の物価は3%上昇する。米連銀等の中央銀行は、インフレ抑制のためGDP減速を受け入れざるを得ない。2006~2007年にかけて経済成長は低迷が継続、欧米諸国から中国、OPEC諸国等の倹約家に富が移転し貯蓄投資バランスが変化、現在より利回りが低下する見込み。貯蓄過剰からさらに平均利回りが低下、アジア投資家のポートフォリオは、債券から株式その他の資産へ移行する。
 米国経済の成長は、2006年はカトリーナ被害の再建効果で高めだが、その後3%前後で推移、一次産品価格上昇によるインフレ懸念から連銀は金利をニュートラルに保つ、負債と一次産品価格上昇により経済は自然に減速する見込み。日本経済は、近隣アジア・太平洋諸国の需要増大による輸出成長だけでなく、国内消費支出が増加、投資も再び増加。円は対ドルレートが上がるべき。中国経済は、今後2年間は成長率7%前後まで減速、インフラ支出や消費は増加継続。10月に新経済政策が発表され、持続的成長と収入格差拡大の防止を主眼とし、2000~2010年まで平均GDP成長率7%を目標に設定。インドのGDP成長率は、中国の周期と同様に2006年は5.3%まで低下、2007年以降は安定化し7%台に戻る見込み。インドは競争力のある為替レートのため介入を継続。欧州経済は、2006年は2005年よりやや高いが、緩やかなGDP成長に留まる見込み。欧州内ではドイツは更に成長、イタリアには問題あり。ユーロの為替レートは、弱い経済を反映して低く保持される。ロシア経済は、原油価格上昇等により膨大な恩恵を得たが、中央銀行は為替レートを低く保持。2006年GDP成長率は6.4%の見込み。南米は成長を継続、平均4%程度。中東やアフリカは、原油・一次産品ブームによる利益を享受し続け、中東5~6%、アフリカ4~5%の見込み。
 殆どの一次産品市場は原油と同様に需給逼迫しているが、いくつかの産品は供給により弾力性あり。1970年代中旬から25年間において原油以外の一次産品は実質価格が80%まで低下していた。世界経済は複数の需要先を有し、インバランスの問題はあるが、多くの懸念と比べて大きな問題ではない。短期的インフレ・リスクがあるが、長期的には減速された成長となる見込み。これは今後2年間の金属価格に影響を与えるが、中期的には需要が力強く上昇し続けることが期待され、価格への影響は供給弾力性に依存することになる。

(3) ‘REACH’and its impact on the EU metals market (Sandra Carey, Director of the UK Non-Ferrous Alliance)

 REACHとは、提案中の欧州の化学規制で2007年までに法案導入予定。導入の主目的は、人の健康、環境、消費者へのよりよい保護と改善で、現存のアセスメント・システムで1994~2002年にアセスされた化学品が、3万のうち僅か約140に留まり、このシステムの進展が遅すぎること、人の健康や環境のアセス・スピードを上げるためにデータの強制的準備が必要なためである。生産量や輸入量が非常に多い金属の場合、2007年にREACHが導入されたとすると、3年以内(2010年まで)に産業界は、データ集やCSR(化学品安全報告書:リスク・アセスメントとリスク・マネージメントの書類)を提出する義務が生じ、大きなコスト負担が発生。REACH法案は、これまでで最も野心的な規制で、いままでのEU指令と異なり、EU諸国が規制をどう導入するかの自由度はないことから、産業界はロビー活動を活発に実施。金属産業界は、原則としてREACH法案の基本的な目的を支持するが、釣り合った適切な対象を目的としたアプローチになっているか(大量の産業物質が存在、既存の規制との重複、懸念が大きい化学品は除外)、効果的になっているか(金属には効果が僅少で負担が大)、中小企業(人的・資金的能力の不足、多種の金属トレーダーには負担大)、EU競争力(原材料供給の不安定性)、EU労働市場(EU以外への金属産業の移転)、非EU諸国への影響(EU市場参入への障壁、輸出収入の減少)という点で疑問を有する。有機化学品を対象としたアプローチが金属、ガラス、セラミックス等の無機品に適用され、有機化学品と比べて、産業規模が10倍で、リサイクルしやすいという持続可能性があり、原材料が複雑な天然鉱石で、合金やリサイクル・システムという複雑さもある。こうした複雑さは金属や合金に大きな負担となり、競争市場を歪める効果がある。また金属には重複する規制が多数存在し、効果は少ない割には国際競争という点で大きなコストとなる。また、プラスティックの原料である石炭、原油、天然ガスやポリマーは規制対象外としていることから、金属のような天然材料よりプラスティックのような有機化学品の使用促進効果がある等大変差別的な規制となっている。主要な修正要求項目としては、REACH法案対象からの鉱物、鉱石及び精鉱の除外、塊状の金属類の除外、リサイクルや処理に使用される廃棄物の除外、合金の明確な定義、金属の代替物に対する適切なアプローチがある。これまで、EU無機13業界のアライアンス、EU加盟国(フィンランド、仏、英等)の産業界、金属フォーラム(Eurometau、Eurofer等)、非EU産業界(ICMM,豪州産業等)、非EU諸国の外交使節団等により、EU委員会や議会に対しロビー活動を実施。その結果、修正案投票で得られた主な成果として、現在EU議長国の英政府提案で、鉱石及び精鉱を登録義務対象から除外(認可や対象からは除外しない)、EU指令の定義に基づくリサイクルや処理に使用される廃棄物も対象から除外することが決定される見通しであり、合金の定義にも進展が見られる。塊状金属類の除外と鉱石及び精鉱の認可除外は認められない状況。
 11月15日にEU議会で投票予定。関係者は自国の欧州議会議員にアプローチをすべき。2006年の第1四半期には最終政治的合意、2007~2008年に加盟国の導入期間となる予定。

(4) The Mining Industry:Challenges and Opportunities(Kalidas V. Madhavpeddi, Senior Vice President, Phelps Dodge Corporation)

 現在の高い銅価格は、他の金属価格を上回るレベルで推移、USドルとのリンクがなくなり原油価格に追随する形。この高価格により、他社と同様にPhelps Dodge社はキャッシュフロー増加、市場価値が大きく引き上げられた。一方でエネルギー価格の上昇は、銅の上昇を上回り、コスト上昇とインフレ・リスクの懸念あり。欧米環境規制や技術進歩等による銅需要減少の恐れに加え、高価格によりプラスティックという低材料・低設置コスト材料への代替が進行、コストが高い限界的な鉱山生産が可能となるという厄介な側面も現出。
 市場における成長可能性という需要面では、中国・インドの工業生産の伸びは大きく、これらアジア諸国の成長が鍵。中国、インド、旧ソ連などの発展途上国の需要は、非常にポテンシャルが高い。また、トヨタやフォード、ホンダ等が生産しているハイブリッド自動車には銅が多く使用されており、需要増大の可能性を期待。
 一方、ビジネスをどう成長させられるかという供給面でも、やはり中国や他の途上国にアップサイド・シナリオあり。2010年までに開発可能性があるプロジェクトは、量的に生産ギャップを埋めるほど大きくなく、銅の埋蔵量や品位でも減退傾向が見られる。高品位で埋蔵量の多い鉱床を見つけるため、探査にもっと力を入れるべき。いい銅鉱床が期待される地域は、中央アフリカ、モンゴル、東南アジア及び中央アジア、ロシアの極東地域である。例えば、Phleps Dodge社は、大規模・高品位・未開発の銅コバルト・プロジェクトTenke Fungurume(Phelps Dodge 57.75%、 Tanke Mining Corp 24.75%、 Gecamines 17.50%)を実施。初期生産レートは、銅年産5~10万t、コバルト年産0.4~0.8万t、生産開始は2008年を予定。コンゴ民主共和国(DRC)政府、米国政府、世銀からの支援を受けており、就労場所の開拓やDRCのGDP成長・経済安定に寄与するものと期待されている。製錬プロセスを省く銅採掘の革新的技術で、冶金処理と比べて資本的競争力もある精鉱リーチング技術も開発、BagdadとArizonaで実施中。コスト削減として、歴史的な産業慣行について改めて見直す活動も行う必要あり。高価格環境で消費成長を維持し、成長機会の基盤を再定義する必要あり。コスト・マネージメントが見直され、更なる統合が起きる可能性あり。

(5) The Outlook for LME Metals:

1. Aluminium(Adam Rowley, Base Metals Analyst, Macquarie Bank Ltd.)
 2005年のアルミ市場は、基本的には需給がバランス、価格は1,800~1,900ドル/tで取引。市場在庫は幾分タイトであるが危機的ではない。2005年市場在庫の変化はこれまで市場が概ねバランスしていることを示す。取引所在庫は僅かに減少しているが、生産者在庫の小さい増加で相殺。在庫変動は、これまで価格の主要変動要因であったが、2005年は在庫増加にもかかわらず価格が上昇、この関係が崩れている。2005年については、在庫の変化でなく、そのレベルを重視、コスト上昇が更なるコスト上昇を予測、製錬所生産削減見通し、中国アルミ輸出減速の予測、銅価格の強さから相対的にアルミが安いとの認識、投資ファンドによる購入、等が変動要因となっている。在庫は西側世界の消費の6.5週分と非常にタイトな状態に近い低レベルに留まり、2006年に更なる在庫減少が予測されると更なる価格上昇が起きる。過去3年間でアルミのキャッシュ・コストは急速に上昇しており、価格上昇にもかかわらず、マージンが殆ど不変。アルミ製錬コストは、主にアルミナ価格の上昇により、2004年に平均155ドル/tまで増加。さらに高まるエネルギー・コストも影響してきており、今後2~3年はエネルギー・コスト上昇の影響が続く見込み。アルミは、銅に比べて過去3年間の上昇率にかなりの開きがあり、アルミは安いという感覚あり。最近は日々の価格変動で連動する傾向があり、銅価格の強さがアルミ価格を押し上げる要因ともなっている。
 2006年の価格を動かす主要因は、経済及び需要の成長、新規製錬能力の可能性と製錬所の閉鎖、中国の純貿易量、アルミナ価格とその供給可能性である。まず、2005年前期の経済成長率は2004年のブームから大きく減速、アジアの工業生産成長はまだ強いものの、各地域の経済成長は減速。先行指標では2006年前期の工業成長は加速、2005年の世界のアルミ需要は中国を除いて目覚しいものではないが5.1%増、2006年は5.7%増を予測。2000年以降、世界のアルミ生産成長の半分以上は中国のもので、2006年もそのペースは減退するものの増加を予測。中国以外では、中東とインドの拡張を見込む。上昇する電力コストが大幅な製錬能力の削減(閉鎖発表及び閉鎖の危険がある製錬所の能力合計は年産49万t)に影響。中国のアルミナ及びスクラップ輸入は大きく上昇し、これらの市場では中国は強気の要因となっているが、アルミとアルミ半製品の純輸出国として中国は成長しており、これらの市場では弱気の要因。中国のアルミ生産は急速に成長し、更なる拡張計画も2006年に予定されているが、電力、アルミナ、輸出税等の問題が製錬の経済性を損なう可能性があり、最近の純輸出量に減速が見られることから、この点が中国のアルミ生産・輸出予測を困難にしている。いくらか下流製品への転換が避けられない状況。スポット・アルミナ価格は、500ドル/t以上、中国の製錬所はこの価格に影響を受ける。他国の製錬所は長期契約でアルミナを調達。中国の製錬所が輸出するためには、より高いアルミ価格が必要で、輸入アルミナコストに転換コスト、輸出税5%を加えた損得なしベース・ケースで1,917ドル/t。中国のアルミ需給予測では、2006年の生産は、引き続き力強く成長するものの、その生産能力1,000万tを下回る860万t、見かけ消費は813.6万tで純輸出量は36.4万tと予測。生産は成長し続けるものの、成長率は減速し、長期では世界の他の国へのアルミ供給者とは見ることはできない。中国のアルミ輸出は減速し、アルミ半製品輸出が増加する。
 2005年需給はバランスしていたが、2006年は、中国の輸出減少と強い需要により供給不足(-22.6万t)になる見込み。世界経済の深刻な後退がなければ、価格は、今後12か月間で更なる上昇が見込まれる。LMEキャッシュ・プライスで1,984ドル/tを予測。

2. Copper(Alan Williamson, Head of Commodities Research, HSBC)
 2005年の状況を総括すると、銅価格は、4,000USドル/tの記録的水準にある。見えている在庫は危機的な低い水準にあり、需要は期待したレベルより弱く、供給は増産することができなかった。ファンドの活動が価格上昇圧力を加え続けている。直近ではまた在庫が減少し始め、更に価格を押し上げている。キャッシュ・プライスと3か月先物価格の差は広がり、米ドル効果は小さくなっている。半導体販売やアジアの輸出額に周期的な減速が見られてきているのに銅価格は上昇している。銅需要や世界の工業生産に動きからも減速が見られ、プレミアムに低下も表れている。中国の需要は強いが世界の他の国々は弱く、中国に製造拠点の移転が進行、銅半製品の在庫減、高価格による代替、スクラップ使用の増加等を理由に需要が弱い。中国の工業成長がいいことかどうか、工業の中国への移転に過ぎないという意味では議論あり。世界的な工業生産は安定的に成長する見通しから、銅消費も再び伸びてくる見込み。需要について楽観的な理由として、いくつかの先行指標が改善、中国の需要も堅調、価格が下がりエンド・ユーザーの在庫積み増しが促進される等が挙げられる。2005年の銅鉱山生産は期待を下回る生産に低下。労働争議、前年に行った高品位部分採掘の終了、装置不足、事故、製錬所在庫の再構築等により供給不足となっているが、今後徐々に供給は増加する見込み。銅地金市場のバランスは供給超過へと向かい、2006年は当面価格は高止まるが、需要は最近の不振の状況から回復、供給もついに超過となり、在庫増が徐々に価格への圧力となっていく。供給超過がState Reserves Bureau(SRB)在庫によって吸収されるかどうかによるが、銅価格は下落し、不安定な状況は継続。HSBCの価格予測としては、2006年は1.40USドル/lb、3,086USドル/tを予測。

3. Nickel, tin, zinc and lead(Peter Kettle, Research Director-Non-Ferrous Metals, CRU)
 2004年のLME等世界の市場における先物取引量を金属ごとに比較すると、アルミや銅と比較して、亜鉛、鉛、ニッケル、錫といった金属は取引量が少なく、その取引の殆どはLMEとなっている。殆どの金属の殆どの生産者は、世界の需要は中国の需要がその増加速度を上げることで成長、新規鉱山への十分な投資がないか、更に乃至あるいは、新規供給に質の問題がある、自分のプロジェクトにファイナンス可能なだけ価格は上昇する必要がある、という同じストーリーを語る。こうしたストーリーは、鉛、亜鉛、ニッケル、錫にも当てはまるもので、4金属のうちの一つ(亜鉛)は、過去10年間のうちの1年で最も大きな価格上昇を示した。2006年はどの金属の番となるのだろうか。過去1年間の価格上昇は、亜鉛が最大で、銅、アルミ、鉛、ニッケル、錫という順番。長期の消費拡大という点では、4金属中ニッケルが最もいい結果を示し、錫は最近改善したものの最低の結果となっている。亜鉛は、他の金属価格の取引活性化に遅れたことで、過去1年間の価格上昇が最大となったが、以前として最も高いレベルの在庫を有する。2005年は全ての金属で需要が減速したが、2005年末の在庫予想では、一番在庫レベルが高い亜鉛も含めて、全ての金属の在庫は過去15年間の平均を下回る見込み。
 鉛は、中国のバッテリー向け鉛需要増加の殆どが、他の地域からのバッテリー生産の置き換えであり、高効率の鉛リサイクル・システムは、需要の70%を満たす状況。しかし、供給すべき適切な量の1次鉛が存在するのかどうか。現在、過去10年で最も大きな鉱山生産増加が見られる一方、1次精錬の鉛は1999~2004年で60万tも生産量が減少。
 亜鉛は、構造的な理由で、板状の亜鉛超過在庫が片付くのが大変遅かった。しかし2005年、亜鉛在庫は減少し続け、2006年を通じて在庫減少は続く見込み。中国は亜鉛需要を急増させるが、供給も急増させる。消費と計画された鉱山供給の間の供給ギャップは、長い間継続し続け、一部が中国と新規参入者により満たされるだけであろう。
 ニッケルは、ステンレス需要の長期的成長が、2005年第3四半期に突然停止した。生産過剰と在庫増加により、ステンレス生産は第3四半期に大幅削減され、報告されたステンレス減産で1次ニッケル需要は約3.5万t減少、市場は供給超過となる見込み。2006年もこの状態が継続、中期的には最終需要は成長、むしろ適切な鉱山供給という点で疑問が残る。
 錫は、2004年の世界鉱山生産の半分が小規模鉱山であり、2005年はさらにその割合が増加する見込み。インドネシアでは錫鉱山生産が年産12万t超まで急速に増加したものの、世界的には、錫価格の低迷と燃料コスト高騰が原因となり、供給が抑制される見込み。2005年の錫需要は在庫払い出しの影響を受けたが、鉛フリーのはんだ付けが2006年前期需要を刺激する見込み。
 2005年は、錫とニッケルが明らかに供給過剰で、亜鉛の供給不足が見込まれ、他の非鉄金属(銅、アルミ、鉛)はほぼバランスする。2006年は、鉛とニッケルが供給過剰となり、引き続き亜鉛の供給不足が見込まれ、錫はほぼバランスすると見込む。2006年の価格見通しとしては、鉛は下落し790USドル/t、亜鉛は上昇し1,600USドル/t、ニッケルは下落し9,000USドル/t、そして錫はほぼ変化なく7,500USドル/tと予測。

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