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国際非鉄金属3研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)特別会合及び国際銅研究会 第13回総会 概要報告

国際非鉄金属3研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の特別会合及び国際銅研究会の第13回総会の2つの会合が2005年11月14日~16日の期間、同時期にポルトガル、リスボンの国際銅研究会事務局会議場において開催された。 今回、銅研究会総会に先立って開催された3研究会の特別会合の目的は、2005年3月に同じくリスボンにおいて開催された3研究会の統合に係る意思決定委員会の決定に基づき、3研究会統合化プロセスの最終段階である統一事務局長の選出を行うことである。なお、3月の意思決定委員会において、3研究会の統合の時期は2006年1月1日、統合事務局の所在地はポルトガル・リスボンとすることが、既に正式決定されている。 次いで開催された国際銅研究会の第13回総会には、日本をはじめとする加盟国21カ国(EUを含む)の政府等の関係者が参加し、銅の需給の予測、研究会の活動状況、研究会の財務・運営等が報告、議論された。各会合の概要は以下のとおり。 |
1. 国際非鉄金属3研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)特別会合
前述のとおり、本特別会合の目的は、2006年1月1日から統合される3研究会の統一事務局長の選出を行うことである。
これまでの選出のプロセスについては、本年6月の公募開始以降、立候補者について、合同選定委員会による段階的な選考過程を経て、本会合の前までに3名の候補に絞られてきた。最終的に選考された3名の候補者は、日本、オーストラリア、メキシコの候補者となった。
本特別会合は、11月14日と15日午前の期間において、3研究会特別会合が個別に開催され、上記3候補者について、各研究会の1位指名者を選挙により選出することとなった。各国代表による投票は14日の会合において行われ、その結果、オーストラリアの候補者で、現国際鉛亜鉛研究会事務局長であるDon Smale氏が各研究会の1位に指名され、統合後の統一事務局長として選出された。この結果は、各研究会の15日午前の会合において報告が行われ、承認された。
2. 国際銅研究会第13回総会
国際非鉄金属3研究会特別会合の後、11月15日午後~16日の期間、国際銅研究会第13回総会が開催された。各委員会において、個別の議事により進められ、最後に総会をもって締めくくられた。概要は以下のとおり。
(1)統計委員会
本委員会において、今後の銅の需給予測、活動状況等の報告がなされた。特に一般的に注目されているのが、本研究会が発表する銅の需給予測であり、各国から提出されたデータをベースに事務局が取りまとめ、定期的に発表されている。今回発表された2005年、2006年の需給見通しについては、本年3月に発表された当初の予測に比べ、生産量、消費量ともに下方修正がなされたものの、今後の需給バランスの予測は緩和されていく方向のものとなり、2006年においては銅地金30万t程度の供給超過の見通しとなった。また、暫定的ながら2007年の予測もなされ、2006年に続き同程度の供給超過の見込みとなっている。なお、この2005年、2006年の予測については11月16日に本研究会からプレス発表されている。
予測内訳の概要は以下のとおり。
◆ 銅鉱山生産予測
・2005年:1498万t(前年比46万t増、+3.1%)、施設稼働率89.8%
・2006年:1574万t(前年比76万t増、+5.1%)、施設稼働率92.4%
・2007年の暫定予測では16百万tを超える見込み
・2005年の見込みについては、チリ、米国等におけるストライキや地震等予期せぬ生産障害により前回予測(1568万t)よりも下回った。
◆ 銅地金(1次+2次)生産予測
・2005年:1633万t(前年比48万t増、+3.1%)、施設稼働率79.3%
・2006年:1765万t(前年比132万t増、+8.1%)、施設稼働率84.3%
・2007年の暫定予測では18百万t強の見込み
◆ 銅地金消費予測
・2005年:1645万t(前年比24万t減、-1.4%)
・2006年:1736万t(前年比90万t増、+5.5%)
・2007年の暫定予測では18百万tを僅かに超える見込み
・2005年において、中国、インドの強い需要はあったものの、北米、欧州地域の消費減少により前年比減との見込み。
◆ 銅地金需給バランス予測
・2005年の需給バランスは、2004年の供給不足84万tから減少したものの、引き続きマイナスで、12万tの供給不足と見込まれる。
・2006年は、需要よりも供給の伸びが上回ることが予想され、4年ぶりに需給バランスはプラスとなり、約30万tの生産余剰が生じる。2007年も同程度の余剰となる予測である。
この他、本委員会の活動報告としては、まず、定期的に刊行されている統計関係刊行物等の発行状況の報告がなされた。1つ目が「Copper Bulletin」であり、国単位のみならず、企業毎のデータを収集・解析することによって、国全体の統計を評価する上で、質の向上が図られたとしており、2005年7月に発行され、次回は2006年6月に刊行する予定である。また、本年9月に発行され、75か国の計画中のものから現存するものまで1200を超える銅の一次製造工場が掲載されている「銅・銅合金製造工場要覧」の説明がなされた。次回発行は2006年第2四半期を予定としている。
また、現在研究中であり、今後刊行予定となっている「中国の銅市場に関する研究」、「スクラップ貿易フロー」の各進捗状況・今後の発行予定の報告があり、「中国の銅市場に関する研究」に関しては、日本メタル経済研究所とチリ銅委員会(Cochilco)の資金提供により、本年8月に開始され、7ヶ月以内に最終結果がまとめられる予定となっている。「スクラップ貿易フロー」については、1985年から2003年までを対象に、スクラップ貿易に関する研究が進められており、次回委員会で新たな分析結果についての報告がなされる予定であるとした。
(2)環境経済委員会
本委員会では、環境・経済に関する活動・プロジェクトに関する2005年上期実績、今後の事業計画の説明とともに、規制関係事項についてテーマとして取り上げた。
事業活動に関し、今回議題となった事項は、「銅流通モデル」、「規制による影響のケーススタディ(廃自動車)」、「一次産品共通基金(UN-CFC)プロジェクト」の3つである。「銅流通モデル」は、廃棄物からの銅リサイクルの効率を決定するための重要なツールとして、研究会事務局が開発したものであり、はじめに西欧地域で適用され、現在はアメリカへの適用を検討している。西欧地域のモデルのレポートは要約版が公開されており、アメリカへの適用については、研究会が作成した技術的ペーパーが関係業界の専門家に配布されており、現在検討中である。
「規制による影響のケーススタディ(廃自動車)」は、「EU廃自動車指令(EU End-of-Life Vehicles Directive)」が廃自動車からの銅及び銅合金のリサイクル、並びに銅スクラップの利用可能性に与える影響を評価することである。報告書ドラフト(Draft Status Report)がヨーロッパの銅・金属業界団体の専門家に配布済みとなっており、12月初めに本件についての協力可能分野を探るための研究会と業界団体とのミーティングが開催される予定であるとしている。
「一次産品共通基金(UN-CFC)プロジェクト」に関し、研究会は、一次産品共通基金の国際商品団体(International Commodity Body (ICB))に、銅に関連したプロジェクトのスーパーバイザー機関として認定されており、現在、以下の4つのCFCプロジェクトに取り組んでいる。
・Community Based Arrangements(承認済み)
・Energy Efficiency(承認済み)
・High Pressure Copper Die Casting Technology Transfer (承認済み)
・Copper Antimicrobial Project(準備中)
また、規制関連の議題として、銅研究会は銅の使用に影響を与える国際的な環境規制動向のモニタリングを実施しており、今回の規制関連の議題として、欧州REACHの最新動向等の報告があった。REACHの競争力理事会における政治的合意のタイミングはドイツ新政権発足に伴い、11月の競争力理事会ではなく12月中での合意となる模様であると報告された。
(3)常任委員会
本委員会では、研究会の運営・財政(予算等)に関する報告、議論がなされた。
まず、メンバーシップに関し、ポーランドの再加盟について承認され、次いで、次回会合において、Libimbashi-Ndola-Walvis Bay Copper Forum(コンゴ民主共和国、ザンビア、ナミビア3カ国政府関係組織)のオブザーバー参加の申込みを承認することとした。
財政関係では、2004年決算、2005年予算執行状況、2006年予算案及び加盟国分担金等について報告・議論がなされ、特に、2006年予算、加盟国分担金案に関しては、3研究会統合に伴う経費合理化により、支出予算が約20%減、分担金については16%~58%減となることから、加盟国の賛意とともに承認された。
研究会統合後の組織運営については、銅研究会から新事務局長に対する今後の当研究会業務を遂行するためのガイドランが策定され、また、現在欠員となっている主任統計官をはじめとする新職員の採用について、積極的に進めるよう新事務局長に提案することとなった。
(4)総会
まず、研究会統合関係の議題として、前日の特別会合において選出された統合後の新事務局長について、選挙結果等の報告があり、改めて追認が行われた。また、統合後の本部の設置に関し、3研究会とポルトガル政府との間で本年12月までに取り交わす新本部協定(Headquarters Agreement)について、ポルトガル政府が用意した最終案について報告があり、承認された。
最後に、各国声明(インド、チリ、日本、米国が提出)、各委員会等の次期議長・副議長が選任された後、次期会合の日程については、他の研究会定例会合と同時期に開催することが各国から歓迎され、5月15日及び10月2日の週にリスボンで開催される運びとなり、今回の第13回総会の幕は閉じた。

