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報告書&レポート

2005年12月22日 金属資源開発調査企画グループ 西川 信康 e-mail:nishikawa-nobuyasu@jogmec.go.jp
2005年96号

中国の最近のベースメタル及びレアアース需給動向-第17回日中レア アース交流会議報告より-

 2004年の中国経済成長率は、行き過ぎた経済過熱を憂慮した中国政府による銀行貸し出し条件の引き上げ等の景気過熱抑制策にもかかわらず、最終的には9.5%と依然高い経済成長を維持し、2005年もほぼ同様の伸び率が予想されている。このような好調な経済情勢を背景に、中国の非鉄金属生産は引き続き急速な過熱成長を維持している。2004年における銅、アルミ、鉛、亜鉛、ニッケル、錫、アンチモン、マグネシウム、チタン、水銀の非鉄金属10種類の全生産量は前年比16%増の1,369万tに達した。特に、銅(18%増の216万t)、アルミ(21%増の667万t)、亜鉛(10%増の252万t)が大きく伸びた。2005年に入っても、成長の勢いは依然止まらず、1~9月期の非鉄金属10種類の生産量は1,140万tに達し、前年比15.2%増となっている。
 ここでは、11月15、16日に札幌市で開催された第17回日中レアアース交流会議(*)で、中国側より公表されたベースメタル及びレアアースの最新の需給データの一部を紹介する。
 
 (*)日中レアアース交流会議は、日中間のレアアース分野における交流と協力を強化するため、1988年5月、資源エネルギー庁長官と中国国家計画委員会副主任の合意に基づき設立された会議。日中両国のレアアース・主要非鉄金属の生産・販売・貿易動向、関連政策に関する情報・意見交換が主なテーマ。

1. ベースメタル需給動向

(1) 2004年の生産量及び貿易状況
 2004年の銅、アルミ、鉛、亜鉛の四大非鉄金属の生産量はそれぞれ216万t、667万t、181万t、252万tに達し、それぞれ前年比で18%、21%、8%、10%といずれも大幅に増加した。アルミ、鉛、亜鉛は世界第1位、銅はチリに次ぐ世界第2位の生産国になっている。
 また、2004年の中国の非鉄金属輸出入貿易総額は、362億USドルに達し、前年比55.5%増と高い伸びとなった。特に、国際市場における金属価格の上昇が、輸出を刺激し、輸出額は131.5億ドルと63.5%の伸びを示した。
 
(2) 2005年の需給
 2005年に入り、銅やアルミニウムといった主要非鉄金属の価格が高騰しているが、中国経済が高度成長を続けているため、需要面ではさほど大きな影響はなく、ベースメタル全般の消費が増え続けている。年間消費予測は銅が350万tで前年比6.1%増、電解アルミニウム650万t、同比9.2%増、鉛165万t、同比15.4%増、亜鉛281万t、同比7%増が見込まれている。
 このような力強い需要に支えられ、中国における主要非鉄金属の生産量も大幅に拡大している。2005年の年間生産量予測は、銅250万tで同比15.7%増、電解アルミニウム750万tで同比12.4%増、鉛205万tで同比13.3%増、亜鉛260万tで同比3.2%増と予想されている。
 一方、中国の非鉄金属輸出入の貿易規模もまた引き続き拡大している。2005年の非鉄金属製品の輸出入貿易額は450億ドルで前年比24%増が見込まれている。うち輸出額は150億ドル超で同比14%増、輸入額は約300億ドルで同比30%増という予測がなされている。なお、今後の方向としては、アルミニウムの輸出が減少し、銅およびアルミニウム原料の輸入が一層増加していくものと見られる。

図1 中国のベースメタル生産量の推移
注)その他はニッケル、錫、アンチモン、マグネシウム、チタン、水銀の合計

(3) 2006年の展望
 2006年においても、中国経済の持続的な発展に伴い、概して非鉄金属の需要はさらに増加することが見込まれる。中国国家発展改革委員会の予測では、2006年の銅消費量は、7%増の380万tに、鉛消費量は10%増の180万t、アルミニウム消費量は9%増の710万といずれも高い伸びを示すが、亜鉛については、3%増の291万tに留まる見通しである。

表 中国のベースメタルの需給見通し
2004年(実績)
2005年
2006年
生産量
消費量
生産量
消費量
消費量
2,160(+18%)
3,300(+ 7.5%)
2,500(+15.7%)
3,500(+ 6.1%)
3,800(+ 7%)
1,810(+ 8%)
1,511(+29.1%)
2,050(+13.3%)
1,650(+ 9.2%)
1,800(+10%)
亜鉛
2,520(+10%)
2,435(+23.0%)
2,600(+ 3.2%)
2,810(+15.4%)
2,910(+ 3%)
アルミニウム
6,670(+18%)
5,952(+14.7%)
7,500(+12.4%)
6,500(+ 9.2%)
7,100(+ 9%)
注)単位:千t、括弧内の数字は前年比

(4) 中国のベースメタル産業に係る問題点
 中国のアルミ産業については、ここ数年間で供給能力が急成長し(2004年で年産900万tと中国市場の約1.5倍のレベル)、電力不足・環境汚染・経営悪化などの問題が顕在化している。
 中国政府はこのようなアルミ生産への過剰な投資を抑制するために以下の政策を実施。
 ・(環境規制の運用強化、新規案件への銀行融資停止などを通じた)新規投資の抑制
 ・アルミ精錬工場向け電気料金の引き上げ
 ・アルミ地金に5%の輸出税を賦課
 また、中国国内のアルミ資源は不足状態(自給率約50%)であり、環境対策上からも、今後リサイクル技術開発が緊急かつ重要な課題(現状のリサイクル率は約25%)として、日本等のアルミリサイクルメーカーとの技術協力を期待している。
 一方、銅については、銅地金生産量が2桁台の成長が続いており、国内外からの安定的な銅原料確保が緊急の課題となっている。中国政府は安定的な銅鉱石を確保するために、従来から国内(西部地域が中心)及び海外(チリ、ペルー、インドネシア等)への積極投資を奨励し、現在のスポット買いから長期契約での調達を目指しているが、大きな進展がないというのが実状である。
 なお、日本企業が中国の鉱山開発に投資した際、当該鉱山からの日本への銅、亜鉛等の鉱石持ち出しの可能性について、国家発展改革委員会の担当者は、国内需要に供給が追いつかない状態の中、中国国内の需要を満たすことが優先するため、鉱石輸出を前提とした投資プロジェクトは奨励されない方向にあると言及した。
 

2. レアアースの需給動向

(1) 2004年の需給
 2004年の希土類鉱産物及び精錬分離製品の生産量は、引き続き増加傾向にあり、希土類鉱産物生産量は前年比6.84%増の9.83万t(REOで集計、以下同じ)、(その内訳は、包頭鉱山が4.66万t、四川鉱山が2.17万t、イオン型希土鉱山が3.0万t)、希土類精錬分離製品生産量は前年比11.1%増の8.67万tであった。
 また、2004年は希土新素材の成長がめざましく、希土磁石の生産量は前年同期比79.3%増の26,890tに達した(その内訳は、焼結NdFeB磁石の生産量は前年同期比82.5%増の25,000t、NdFeBボンド磁石の生産量は前年同期比15.3%増の1,500t、サマリウムコバルト磁石の生産量は前年同期比95%増の390t)。また、希土蛍光粉の生産量は前年同期比16.5%増の4,270t(その内訳は電灯用蛍光粉の生産量約1,900t、カラーテレビ用蛍光粉の生産量約1,650t、発光粉の生産量が約690t)となった。
 一方、2004年における希土類応用分野の消費量は前年同期比13.22%増の約3.34万tとなった。中でも新素材分野での伸び率が大きく、希土磁石、水素貯蔵用材料、発光材と触媒材における希土類消費量はすでに1.6万tに達し、希土類総消費量の47.6%を占めるに至った。また、冶金設備、石油化学工業、ガラス陶磁器などの分野における希土類消費量はそれぞれ5,000t、4,000t、6,200tで、いずれも安定成長で推移している。

図2 中国のレアアースの需給推移

(2) レアアースの輸出状況
 2004年、中国の希土製品は74か国へ輸出され、累計輸出総量は5.33万tで、輸出額は前年比23%増の4.95億ドルであった。そのうち希土精錬分離製品の輸出量は2003年比3.65%減の5.02万tで、外貨獲得額は前年同期比16.6%増の2.81億ドルであった。一方、希土磁石の輸出量は前年同期比37.2%増の7,709tで、外貨獲得額は前年同期比33.0%増の2.14億ドルとなった。
 また、中国の希土製錬分離製品は2004年も主に日本、欧米、韓国などの国に輸出されたが、そのうち日本への輸出量が2.27万tで、輸出総量の32.64%を占め、第1位となっている。

(3) 中国のレアアース産業の問題点
 中国のレアアース産業はこのように着実な成長を遂げているが、いくつかの問題点や課題が顕在化している。中国政府及び産業界は、現在、レアアース産業の正常化・立て直しに取り込んでおり、日本のレアアース関連業界にも少なからず影響を及ぼしている。具体的な問題点や取り組みは以下のとおりである。

・中国では、多数の中小精製・分離業者が存在することによる過剰な設備能力と低収益性、加工・応用分野を拡充することの重要性、環境問題への対応の必要性等があり、政府としては、南北希土2大集団化等マクロコントロール化を進めているとともに、新政策の一環として2005年5月1日から希土精製分離製品の輸出税還付制度を廃止し、5月19日から希土原鉱を含む希土製品を加工貿易禁止類に組み入れることを決定。
 
・中国政府はレアアース総生産量をコントロールするためにレアアース輸出E/L(Export License)を発給しているが、運用面の問題から輸出の時期等が遅れ、日中間のレアアース貿易の阻害要因となっている。日本側は中国側に対し、E/L制度の運用改善、廃止を求めているが、中国側は鋭意運用改善に取り組んでおり、WTOに加入した現在でも、E/L制度の廃止はないと言明。

・レアアース分野での外国企業の投資については、中国国内での外国企業のレアアース鉱山開発企業設立の禁止、また、レアアース精製分離プロジェクトは、国務院の許可が必要な許可業種となっている。一方、外国企業のレアアース高度加工、レアアース新素材と応用製品への投資を奨励しており、日本等の加工技術、応用技術、リサイクル技術等の先進技術導入を期待している。

 以上のように、中国政府のレアアースに関する戦略は、国内のレアアース鉱石、中間製品の生産量をコントロールするとともに、中国国内のレアアース産業界に対し外資を積極的に受け入れつつ付加価値製品分野へシフトしていくというものであり、今後、日本のレアアース業界との競争激化が一層進んでいくものと見られる。

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