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中国政府、資源の節約型社会構築への転換へ向けて新たな調整策奨励・ 抑制・淘汰の3種に分類
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中国国家発展改革委員会は2005年12月21日付けで産業構造調整目録を公布した。これは、中国政府が資源の無駄使いを強く認識し、持続可能な資源節約型社会構築へ大きく構造転換し、包括的な産業構造の調整策を打ち出すことによって、国内の産業構造を見直すことが狙い。同目録は3つの産業分野別に区分し、今後の展開を明確に示唆したものとなっている。すなわち、各プロジェクトや製品、設備についてエネルギー消費効率、需給、環境への負荷などに基づき「奨励」、「抑制」、「淘汰(廃止)」の3つに分類し、今後の方向性を厳格に示しており、奨励対象は539種、規制対象は190種、淘汰対象は399種となっている。中国政府は、生産設備過剰がデフレ圧力を高めることを警戒しており、内需の拡大策と併せ、設備過剰分野の新規プロジェクトの制限、旧式設備の淘汰(とうた)などに取り組む方針を打ち出している。 なお、この調整策は国務院の批准を受け、今後数年の産業政策の基準となる。以下に、非鉄金属分野に関する3つの分類分けを示す。 |
1. 「奨励」に分類されたもの
石油・天然ガスの探査や通信網の整備、省エネタイプの小型自動車、大規模な農産品生産基地の建設や品種改良プロジェクト、自動車軽量化、デジタル通信網などの539項目。非鉄金属関連項目は次のとおり。
第1種 奨励類
(非鉄金属)
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1.
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非鉄金属鉱山の代替資源の探査及び関連する探査技術開発 |
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2.
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銅、アルミ、鉛、亜鉛、ニッケルの大・中規模鉱山の建設 |
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3.
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不足する資源に対する深部及び難採掘鉱床の採掘 |
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4.
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硫化鉱物に対する無汚染強化熔錬プロセスの開発及び実用 |
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5.
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高能率抽出設備及びプロセスの技術開発 |
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6.
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高精度銅板、帯、箔、チューブ材料の生産及び技術開発 |
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7.
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高精度アルミ板、帯、箔及び高速薄板圧延の生産技術開発及び設備製造 |
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8.
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軌道交通用高性能金属材料の製造 |
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9.
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非鉄金属の複合材料の技術開発及び実用 |
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10.
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高性能、高精度の超硬合金及び高度加工製品とセラミック材料の生産 |
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11.
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レアメタル、レアアース金属の高度加工及び実用 |
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12.
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錫化合物、アンチモン化合物(酸化第二アンチモンを含まず)の生産 |
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13.
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高性能の磁性材料の製造 |
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14.
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超細粉体材料、電子パルプ及びその製品生産 |
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15.
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非結晶合金薄板の製造 |
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16.
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新型ブレーキ材料の製造 |
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17.
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高品質のマグネシウム合金鋳造及び板、チューブ、型材の加工技術の開発 |
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18.
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非鉄金属生産中の測定及び制御技術の開発 |
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19.
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焙焼プロセス、高温加圧型予備酸化及び金の酸化パクテリアリーチングプロセスの開発及び実用 |
| (環境保護及び節約による資源の総合利用) | |
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40.
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低品位、複雑、難処理鉱石の開発及び総合利用 |
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41.
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尾鉱、スラグなどの資源の総合利用 |
2. 「抑制」に分類されたもの
大規模な農産品生産基地の建設や品種改良プロジェクト、石油・天然ガス探査、自動車軽量化、デジタル通信網など。大幅な設備過剰となっている鉄鋼関連では小規模な高炉や老朽設備を廃棄する方針。その他別荘、ゴルフ場、競馬場など。非鉄金属関連項目は次のとおり。
第2種 抑制類
(非鉄金属)
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1.
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タングステン、モリブデン、錫、アンチモン及びレアアース鉱床の採掘、製錬プロジェクト及び酸化第2アンチモン、鉛錫ハンダの生産プロジェクト(改善プロジェクトを除く) |
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2.
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一次系統規模10万t/年以下のアノード製錬プロジェクト |
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3.
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電解アルミプロジェクト(自焼性電解槽の廃棄プロジェクト及び環境改善プロジェクトを除く) |
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4.
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一次系統規模5万t/年以下の鉛製錬プロジェクト |
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5.
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一次系統規模10万t/年以下の亜鉛製錬プロジェク |
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6.
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マグネシウム製錬プロジェクト(総合利用プロジェクトを除く) |
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7.
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4t以下の再生アルミ反射炉トプロジェクト |
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8.
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再生非鉄金属の生産過程で直接燃料炭を用いる反射炉プロジェクト |
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9.
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アルミ用湿式弗化塩プロジェクト |
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10. |
10万t/年以下の独立アルミ用炭素プロジェクト |
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11. |
イオン型レアアース鉱石の浸出プロセス |
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12. |
1万t/年以下の再生アルミプロジェクト |
| (金) | |
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1.
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処理量50t/日以下の青化法による金精鉱処理プロジェクト |
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2.
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鉱石処理量100t/日以下で、金の採掘系統を持たない選鉱場設置プロジェクト |
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3.
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金精鉱鉱石処理量50t以下/日の乾式製錬プロジェクト |
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4.
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鉱石処理量5万t/年以下の堆積場プロジェクト(青蔵高原を除く) |
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5.
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金鉱石処理量50t以下の採掘・選別プロジェクト |
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6.
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砂金処理量20万m3/年以下の採掘プロジェクト |
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7.
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森林区、農地、河川での金採掘プロジェクト |
3. 「淘汰(廃止)」に分類されたもの
大幅な設備過剰となっている鉄鋼関連では小規模な高炉や老朽設備を廃棄する方針。非鉄金属関連項目は次のとおり。
第3種 淘汰類
(非鉄金属)
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1.
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国務院主管部門により承認されず、採鉱許可証を持たない場合、国家が定めたタングステン、錫、アンチモン、イオン型レアアースなど保護性採掘鉱種の採掘・選別プロジェクト |
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2.
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国務院主管部門により承認されていないタングステン、錫、アンチモン、イオン型レアアース製錬プロジェクト及びタングステン加工(超硬合金を含む)プロジェクト |
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3.
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マッフル(muffle roaster)炉、横缶、小型縦缶などによる焙焼、簡易凝縮設備による集じん等立ち遅れた方式による亜鉛製錬または酸化亜鉛製品の生産 |
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4.
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鉄なべ炉と旧式オーブン炉、蒸留缶、坩堝炉及び簡易凝縮集じん設備等立ち遅れた方式による水銀製錬 |
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5.
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旧式炉または坩堝炉による焙焼、簡易凝縮設備による集じん等立ち遅れた方式による酸化砒素或いは砒素金属製品の製錬 |
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6.
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アルミ自焼性電解槽(Sodeberg) |
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7.
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炉床面積が1.5平米以下の密閉熔鉱炉による銅製錬プロセス及び設備 |
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8.
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炉床面積が1.5~10平米の密閉熔鉱炉による銅製錬プロセス及び設備(2006年までに淘汰する) |
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9.
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10平米以上の密閉熔鉱炉による銅製錬プロセス及び設備(2007年までに淘汰する) |
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10.
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電気炉、反射炉による銅製錬プロセス及び設備 (2006年までに淘汰する) |
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11.
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ガスによる酸製造に用いる乾式清浄と高温高濃度酸の洗浄技術 |
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12.
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二人式の非鉄金属圧延機(2006年までに淘汰する) |
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13.
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地下炉、坩堝炉、ヘロルド炉など立ち遅れた方式によるアンチモン製錬 |
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14.
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焼結なべ炉、焼結皿炉、簡易高炉など立ち遅れた方式による鉛製錬プロセス及び設備 |
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15.
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坩堝炉による再生アルミ合金製錬、再生鉛製錬プロセス(2005年までに淘汰する) |
| (金) | |
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1.
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混合水銀(アマルガム)による金抽出プロセス |
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2.
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小型池、小型堆積場、小型製錬プロセス |
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3.
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国務院主管部門により承認されず、金採掘批准書、採鉱許可証を持たずに実施する採掘・選別プロジェクト |
まとめ
本産業構造調整目録の公布により、中国の工業分野における生産設備過剰の問題が大きく指摘され、ようやく中国政府が政策に反映させたことになるが、これは実は既に多くの企業幹部、政府、地方政府、官僚は認識していたものの、手がつけられなかったと考えた方が理解しやすい。経済重視の発展を尊しとした政策が重宝されてきた経緯から、ここまで問題意識として高められるまでに時間を要したと言うことになる。ある情報機関の話しによると、政策として実施に向けられた経緯は、中国マクロ経済研究会等の政策シンクタンクが指摘してきたからであるという。同研究会は、自動車など11分野がこの問題に直面しているとし、在庫増、価格下落、企業収益の低下などの問題が顕在化している事を強く指摘してきており、警鐘をならしてきた。具体的に設備過剰が指摘されているのは、鉄鋼、自動車、繊維、セメント、電力、電解アルミ、石炭、鉄合金、カーバイト、銅、コークスの11産業である。これまでの中国政府が実施している経済政策一辺倒の政策から、いよいよ効率性、環境保護、循環型社会構築等に目を向けた経済政策の大きな分岐点になるものとして捉えられよう。


